27

黒子のバスケ

「……終わったっスね…」

「いい試合だったね」

「うん……凄かった……」

両者決して譲らない好試合。こんな試合はなかなか見れないだろう。あ、でも青峰と黄瀬の試合も凄かったとちらりと黄瀬を見ながら茉穂は思った。
視線に気づいたのか黄瀬は笑っている。モデルだけあってやはり顔は良い。

「なんスか? 俺に見惚れちゃったんスか? まぁ、見惚れるのも分かるっスけど」

「……きーちゃん」

「……ちょっと、残念だね」

「ちょっ、冗談っスよ!冗談!」

呆れた風に桃井と茉穂が見ていると黄瀬は慌てていた。それを見た二人は顔を見合わせて笑うと「なんスかもう!」と騒いでいた。
すると茉穂の持つ携帯が震えた。

「あ、」

「電話?」

「メールみたい。とりあえず友達に連絡してくるね」

二人から離れる様に通路へと出ようとすると、背後から声を掛けられた。

「茉穂ちゃん、後でミドリンに会いに行こうね!」

「そうっスよ」

ニヤニヤと笑う二人に「はは」と苦笑いをしながら、茉穂は通路側へと出る。
壁に身を寄せて、友人に電話をした。

「もしもし?」

『あ、茉穂ー?』

「うん。どこにいるの?」

『今? とりあえず外に出ちゃったけど。茉穂は?』

「は?早くない?!」

『だってアンタ何処にいるか分からんないし。あ、それとさー、親から連絡来て帰んなきゃなんないのよー』

「え、マジで?」

『うん、ごめんねー。あ、そうだ。茉穂、高尾くんに会う?会ったら試合凄かったって伝えといて!感動したって!』

「自分で伝えなよ」

『勿論、メールは送っといたよ。本当は直接言いたかったけど!あ、ごめん、バスに乗るからまた明日ね』

「あ、うん。また明日」

じゃねー。と軽い言葉とともに通話は切られてしまった。慌ただしいな、と思いながらも先程の試合を思い出した。
ずっと見ていたい試合だったのは確かだ。
不意に翡翠色が頭に過るが、茉穂は目を閉じた。
茉穂は頑張ったね、と称えるべきは幼馴染みであり、誠凛高校バスケ部である。
控え室まで行ってみようか、とも考えた。無論、友人からの伝言も伝えなくてはならないが……。

「……あー、どうしよ…」

まだ緑間に会うには茉穂は答えが出ていない。多分、出てはいない、出してない、はずだ。
今はまだ言わない方がいい気がする。
誠凛と秀徳の試合が終わってもまだ試合が残っている。それを邪魔してはいけない。
誠凛の方へ挨拶に行こうかと、考えていると後ろから声を掛けられた。

「茉穂ちゃん」

「白川っち」

「ね、せっかくだからミドリンのトコに行こう」

「緑間っちにお疲れ様言いに行こうっス!」

「ミドリンの事だからきっと自販機に来るはずだよ、行こう茉穂ちゃん」

ぐいっ、と腕を掴まれて引っ張られる。
「ちょっと待って!」と声を出しても「テツくんにはいつでも会えるんだから、今はミドリン」とニコニコと笑っている。
だから、と思いながらも茉穂は桃井が情報収集のプロフェッショナルなのだと理解している。
きっと、茉穂に関しても『知っている』のだろう。どう考えているか、どう行動するか、を。
友人ながら、ちょっと恐いと思ってしまう。
流石、『キセキの世代』のサポートをしていただけである。寧ろ、その一員に近い彼女だ。

「わ、わかったよ……」

答えれば、強く掴まれていた腕が少し和らいだ。
じゃあ、と彼女は隣に並ぶと腕を組んできた。腕に感じる柔らかい感触はとりあえず置いておく事にした。
通路を歩き、自販機が設置されている場所へと向かうと、そこには橙色のジャージを着た長身の男性がいた。それが誰かは直ぐに分かってしまう。
桃井が「はっけーん」と組んできた腕をするりと解いて、静かに彼に近づいていった。
チャリンとお金を入れた音と共に「えいっ!」と声がする。ガコンと飲み物が落ちたらしい。

「コレでしょ?」

驚いているのか、緑間が桃井を見た。そんな彼を気にする事もなく彼女はにこやかに笑っている。

「ひさしぶり、ミドリン」

「まぁ、悪くない試合だったんじゃないスか?」

「桃井に……白川っ?!」

「ちょっ、俺の事は無視っスか?!」

振り向いた時に視界に入ったのか桃井の姿を認めた後で、緑間は振り返って茉穂を見ていた。
無論、黄瀬の姿も視認したが彼女がここにいる事に驚いていた。

「あ、あの……試合お疲れ様。凄く……凄くいい試合だったよ」

「……あぁ」

「うん…」

何となく、互いに顔を逸らしてしまう。
どうしよう何を話そうなどと思いながら、緑間は取り出し口から購入したおしるこの缶を取り出した。
どうしよう、と思っていると携帯が震えた。見るとメールが届いたようで、確認してみると「えっ」と声が洩れた。

「どうかしたんスか? 白川っち」

「…………っち?」

「ごめん、ちょっと誠凛のトコに行ってくるね」

「えっ? 茉穂ちゃん?!」

呼び止めるのを両手を合わせて、茉穂は通路を走っていった。

「あーぁ、いーんスか? せっかく白川っち連れてきたのに」

「ところで黄瀬」

「なんスか?」

茉穂が小走りで行ったのを見てから、緑間に顔を向けると彼は眼鏡を押し上げながら睨んでいた。

「ど、どうしたんスか……」

「どうしたもこうしたもないのだよ、何故、彼女に『っち』を付けて呼んでいる」

「へ? あぁ、いやぁ〜黒子っちも桃っちも青峰っちも白川さんと仲良いじゃないっスか。じゃあ俺も仲良くなりたいから呼ばせて貰ってるっス」

「発想が違うよね、きーちゃんて」

「それに〜」

ニヤニヤと笑ってくる黄瀬に緑間が「なんなのだよ」と睨むと

「あの恋愛に程遠い緑間っちのお相手っスよ!仲良く「煩いのだよっ!」」

ゴスッと掌底を食わされた黄瀬は「そ、それは黒子っちの技ッス……」とよろめいていた。
「ふん」と緑間は一瞥した後、歩き出したので桃井と黄瀬は後を付いていった。



To be Continued

act.27
2015/09/20


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