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黒子のバスケ

12月も間近の月末、すっかりクリスマス仕様のなった街中だが茉穂は友人に付き合っていた。
なにやら高尾くんにクリスマスプレゼントを渡したいらしく、あちこち探していたのだ。

「あ〜、何をあげたら喜ぶかな〜?」

「……さぁ」

「やっぱり好きなもの? それとも寒いしマフラーとか手袋?」

「……さぁ」

「やっぱりバスケしてるしスポーツ用品とか?」

「……さぁ」

「……ちょっと、茉穂! さっきから何よ!」

「いや、だって高尾くんの事よく知らないし」

知らないから答えようがないと言えば、友人はジト目でこちらを一瞥してきた。

「それでも答え方が薄情よ!」

プンっと頬を膨らませる彼女がなんだか、可愛らしく思えたがこれ以上怒らせるのは面倒だと思い、頭を捻らせた。

「そうだなぁ……高尾くんが好きなものとかもいいんだけど、ウインターカップもあるしクリスマスとか浮かれていられないんじゃない?」

「う…」

「バスケしてるし、無難にタオルとかでもいいと思うんだけど」

「なんか色気ない」

「何よ、色気って」

「プレゼントするのに味気ないっていうか、こうもうちょっとロマンチックさを出したい」

だってクリスマスだし、華やかにしたい。という友人に意見に茉穂も分からなくはない。
どうせなら印象に残るような物をプレゼントしたいという乙女心だ。
まぁ、茉穂はこれまでもプレゼントを渡していたのは幼馴染みと両親くらいで、それもまた実用品ばかりだった。
だからこそ、クリスマスの時期特有のどこか華やかさがあるプレゼントを贈りたいという気持ちは分からなくはないのだ。

「高尾くんの好きなものってなんなの?」

「うーん……。なんかトレーディングカードが好きなんだって……」

「トレーディングカード……」

はっきりいって良く分からない。
あれか、小学生の時、男子がやっていた遊び?
あの頃は毎日クラブに通っていたから、知らない事が多い。まして黒子も友達とバスケばかりしていたような気がするし。
あれ、あの友達はどこへいったんだっけ?
記憶の中に公園で黒子と一緒にボールを追いかけていた少年を思い出す。
自分もクラブで忙しかったから1回会った程度だった。車から何度か練習をしているのは見たけれど。

「ごめん、よく分からない」

「うん、私もよく分からなかったから。あと好きなのはキムチらしいんだよね」

「辛いの好きなんだ。んー、激辛のお菓子とかは?」

「お菓子をあげるのに激辛ってなんかバツゲームみたいじゃない……」

確かにお菓子なのに激辛っていうのはちょっと……という気になる。でもそれでは答えが出ない。

「茉穂〜、緑間くんにさりげなく高尾くんが欲しいのを聞いてみて〜」

「えっ?!」

「お〜ね〜が〜い〜」

しがみついて来る友人に茉穂は「無理だよ〜」としか言えない。
今はウインターカップ目前だ。
そんなことで連絡をして、邪魔するのさえ憚れる。

「今はダメ。ウインターカップまでもう時間がないから邪魔出来ない」

「でもでもクリスマスだよー」

「ダメ」

キッパリと告げれば、友人はぶぅと口を尖らせていた。
彼は、彼らはそんな浮わついたイベントも何もかも放り投げ、真っ直ぐに前しか見ていない。
だからこそ些細なことで邪魔はしたくない、と思ってしまう。

「今は大事な時期だから、ちょっとしたことで煩わせたくないの」

「…………そっか…」

しょぼんとする友人に「うん」と答えれば、「じゃあ本人に訊いてみる」と携帯を取り出しあっという間にメールをしていた。
なんか違う……と思いながら、高尾くんがいいならいっか、と思う茉穂だった。

(あれ? というか彼らの関係ってどうなってるの?)

ちょっとした事が気になって小首を傾げた。
「今日、返事来るかな〜」と呟く友人に訊いてみると、曰く、付き合ってはいないという。片思いである。という事らしい。

「高尾くんも今はバスケでいっぱいなんだよね」

遠回しに「付き合うつもりはない」と告げられていた様で、でもそれで簡単に諦める訳でもないらしい。
「そっか」と口にすれば「そうなんだ」と答えが返ってきた。
「だから茉穂がちょっと妬ましい」とまで言われてしまったのは、自分が緑間くんへの返答を保留しているからだろう。
そう言われて口篭ってしまったのだった。


◇◇◇◇◇


ウインターカップまでの間、火神くんは短期留学とかでアメリカに行っているらしい。
黒子に用事があった茉穂が火神の姿が見えない事に首を傾げれば、傍らの幼馴染みにそう教えられた。

「そうなんだ。うちにそんな制度あったんだね」

「はい。僕もビックリしました」

「火神くんがアメリカかぁ。テツ、寂しくない?」

「なんですか、それ」

高校に入ってから、二人一緒なのをよく見ていたせいか、そんな風に思えてしまった。
黒子がムスッとしているのを見て、茉穂は口元に手を持ってきてふふっと笑っている。
その所作に黒子は彼女らしさを見る。

「だって火神くんがいないと教室が広く見えない?」

「確かに黒板をノートに写しやすいです」

「ふふふ」

なんとなく綺麗に見える彼女に黒子はすがるような眸を向けた。それに気づいたのか、茉穂は黒子を見た。

「どうかした?」

「…………りまくんとは…」

「ん?」

「いえ。なんでもないです」

「そう? あ、温泉どうだった?」

「気持ち良かったですよ」

「いいなぁ」

「茉穂も来れば良かったじゃないですか。誘われたんですよね、カントクに」

「そうだけど……やっぱり部外者だしいいよ」

肩を竦める彼女にそのまま合宿になったこと、カントクのお父さん──カゲトラさんに練習を見てもらったことを伝えた。
「大変だったね」と笑う彼女に、そういえばと口を開いた。

「青峰くんに会いました」

「青峰くん?」

「はい。たまたま同じ温泉宿で会いました」

「へぇ」

「宣戦布告しました」

「宣戦布告?」

「はい」

滅多に見せない笑みを浮かべる幼馴染みに茉穂は「そっか」とだけ告げた。

「ウインターカップ、頑張ってね」

「はい。差し入れ楽しみにしてます」

思いがけない要望に茉穂は笑いなしがらも、彼の言葉に応えたのだった。



To be Continued

act.31
2015/10/07


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