07

黒子のバスケ

「よーし、全員いるな? じゃあ、行くぞ!」

「「「「ありがとうございました!」」」」

日向先輩の掛け声と共に宿に礼を言って、駅へと歩き出した。

「しゃー! 生きてる、オレっっ!」

「何度も死ぬかと思ったよ」

「早く家のフトンで寝てー」

先輩たちがわいわい話してるのを耳にしながら、茉穂はメールを見て昨夜の事を思い出した。
今朝は、朝食の準備、後片付けなど立て込んでいたため、ロクに携帯を弄る暇がなかった。
チラッとだけ見た内容に驚いたのだ。

(……本気で送ってくるとは思わなかった…)

びっくりしながらも慌ただしさから、緑間くんに会うこともなく、宿を出た。
一応、お礼の返信はしたのだが。
携帯を片手に「う〜ん…」と唸っていると、後ろを歩いていた火神くんに「危ねぇぞ」と注意され、謝った。

「そういや、白川。昨日はどこに行ってたんだよ」

「へ?」

「昨日の夜、カントクが知らないかって言ってたから」

火神くんに言われて、昨夜の事をまた考え出した。
緑間くんに呼び出された、のだが、なんだか世間話だけで終わってしまった感がある。
結局の所、彼の用事は何だったんだろうか?

「えー、と、呼び出しされて…」

「呼び出し? 誰にだよ」

「火神くん、すみませんが2号を抱っこしてて下さい」

訊いてくる火神くんに言おうとしたが、テツが2号を火神くんに渡そうとしたが、彼は「止めろ!黒子」と言いながら、前の方へと足早に去ってしまった。2号も足早に火神くを追いかけていったようだ。

「……」

「どうしました、茉穂?」

「ん──…」

多分、今のはテツなりに配慮してくれたんだろう。
別に大したことはないのだから、いいのに。むしろ、誰かに教えてもらいたい。

「ねぇ、テツ…」

「なんですか?」

「緑間くんって、結局、何がしたかったのかな?」

「は?」

隣を歩いていたテツがこちらをまっすぐ見ている。珍しく、何かに驚いているみたいだ。

「何か話がある。みたいなこと言われた割には大した話でもなかったし…なんだったのかなーって?」

「…………やっぱり、緑間くんって頭いいのにたまにアホなんですね」

「は?」

「いえ、こっちの話です。そうですね、久しぶりに級友に会ったので何か話したかっただけなんでは?」

「旧友って、テツと違って、元ただのクラスメイトじゃん。親しかった訳でもないのに変なの」

「そっちの旧友じゃないですよ」

そんな会話をしていたから気づかなかったが、火神を抜かした他の部員たちは「緑間…」と少し不憫に思えた。
旧友である筈の黒子もフォローしないのも何だか切なくなる。

「ちょっと、どこに行くのよ?」

「へ…? いや駅…だけど」

駅へと向かう道へ曲がろうとした時、リコの声が響いた。

「何のために此処で合宿したと思ってるの? 今年は此処で開催でしょうが!」

「?」

茉穂は彼らのやり取りが分からず、首を傾げていると、隣にいた黒子が教えてくれた。

「茉穂、今年はここでインターハイが行われているんですよ」

「インターハイ…」

伊月先輩が携帯を開き、準々決勝の組合わせを見せてくれた。

準々決勝 第二試合
海常高校(神奈川)vs 桐皇学園高校(東京)

その学校名に聞き覚えがある。
桐皇はさつきちゃんが行った学校──即ち、青峰くんが行った所。海常は……

「黄瀬くんと青峰くんの学校です」

「黄瀬くんと、青峰くんの……『キセキの世代』同士の試合…?」

「そうなります」

詳しくは知らない。
中学の時、テツがレギュラーになった時、数回試合を観に行った。
青峰くんの圧倒的なスコアラーに驚いたものがある。
たまたまテツといて、青峰くんとさつきちゃんと知り合いになり、そして黄瀬くんが混ざった。
青峰くんに憧れてバスケを始めたと言った黄瀬くんの姿が印象的だった。

「……それは、見物だね」


   ◇◇◇◇◇


「会場までどんくらい?」

「バスで20分くらいだと」


バスに乗り込み、会場までの時間を聞きながら、茉穂は車窓を眺めていた。

「つーか、こーゆーのは最初に言ってよ、カントク」

「言ったら合宿中、気が散るからよ! けど、見る価値大でしょ。海常対桐皇。『キセキの世代』擁するチーム同士の試合だからね」

「でも白川さんまで巻き込んで」

「…あー、ごめんね、茉穂ちゃん」

「いえ、大丈夫です。…それに、少しだけ興味ありますから」

「へ? そーなの?」

「えっと、黄瀬くんと青峰くんとは中学の時に話していた方なので……二人の試合見たことないし…」

「あ、茉穂ちゃんも同じ帝光なんだっけね」

「はい」

(同じ『キセキの世代』でも緑間よりは親密な感じ?)

(黄瀬&青峰は友人、緑間はただの同級生……)

(……なんか、哀しいな…)

(…なんとなく、緑間、ガンバレ…)

いらぬ所で憐れまれているなんて緑間も知らないだろう。
ちなみに黒子は火神に緑間からの伝言を伝えながら、ちょっとだけ笑いをこらえていた。
バスに揺られ、中央体育館に到着した。
ザワザワと何処か浮き足立つ騒がしい感じは大会独特の物だ。

「すっげー!! これがインターハイ!!」

「カントク、お目当ての試合は?」

「この試合のアト…ちょうどもうすぐよ。あと15分ぐらいね」

リコ先輩たちの会話を耳にしながら、会場を眺めた。
全国大会ともなるとやはり動員数が違う。辺りを見ながら、熱気に圧倒される。
辺りを見ていたからか、少しだけよろけてしまったが、転ぶことはなかった。

「っと、大丈夫か茉穂ちゃん」

「あ、すみません。木吉先輩」

「いいって。だけど軽いな、ちゃんと食べてるのか」

「へ? きゃあ!?」

気づいたら持ち上げられていた。
悲鳴に気づいたのか、皆がこっちを向いた。

「なにしてんだぁ、木吉!?このダァホ!」

「ちょっと、鉄平!?」

「何って、高い高い」

「や、止めてください! 木吉先輩」

「え〜」

「えー、じゃねーよ! 早く降ろせ、ダァホ!」

日向先輩にド突かれて、ようやく降ろして貰えた。びっくりする。

「いや〜、つい、やっちまった」

悪気なく謝ってくるので、怒る気が失せてしまう。むしろ、日向先輩が怒っているし……。

「茉穂、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫。ただ抱っこされただけだし」

なんとなく利き足に負担がないように降ろしてくれた。気のせいかも知れないけど。

「なら良かったです」

「うん」

「そろそろ席に着きましょう」

「うん」

テツが手を取ってくれた。慣れない段差に転ばないようにだろうけど。
席について、試合を待つことにする、テツの鞄に入っていた2号を頭だけ出してあげた。
つくづく思うけど、本当に大人しい犬だ。なんだか色々弁えている感じがする。テツに似てるからかな?
そんなことを考えながら、2号の頭を撫でると気持ち良さそうに目を細めた。

「黒子…どっちが勝つと思う?」

テツの隣に座っていた火神くんが訊いてきた。皆が耳を傾けた。

「わかりません…『キセキの世代』のスタメン同士が戦うのは初めてです。…ただ、」

テツが2号を撫でながら言葉を続けた。

「黄瀬くんは青峰くんに憧れてバスケを始めました」

「!」

「そしてよく二人で1対1をしていました…が、黄瀬くんが勝ったことは一度もありません」

何回か見たことがある。と言ってもそれはストバスのところでだ。
目を輝かせながら、青峰くんにかかっていく黄瀬くんの姿を。
時間になり、選手が入ってくることで、辺りがざわめき始めた。

『それでは準々決勝 第二試合 海常高校対桐皇学園高校の試合を始めます』

アナウンスが流れ、試合が始まった。








To be Continued



試合なんて書けないよ!
緑間の気持ちなんて、伝わらないよ(笑)
ヒロイン、鈍感というか伝わる方がおかしいよね。


2012/12/13


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