02

黒子のバスケ

高校に入学してから半年以上過ぎた。夏服を経て、まだ新しいともいえる冬服を身に纏っている。
3月まで同級生だった男は卒業式後、アメリカに渡って以来音信不通である。
アメリカでは使えない携帯だったのだろうか、と思ってみたが、久保田くんが「使えるヤツだったぜ」と言っていたのを思い出す。
ならば、連絡くらいくれたっていいのに、と寂しくなるのは仲が良いと自分でも思っていたからで、そんなに薄情なヤツだったのかとふてくされてしまいそうになる。

「お前にも連絡ないのか?」

聞いてくるのは、アイツと同じ部活で副キャプテンを務めていた関口くんだ。もう1人は久保田くん。
虹村と比較的仲が良かった友人だ。
久々に会った彼らとマジバで会話をしている。

「二人にも、やっぱりまだないの?」

「ったく、何してるんだろうなぁ」

「……まさか、親父さんに何かあったのかな…」

「え……」

「「…………………」」

あまりよろしくない予想をしてしまい、三人揃って黙り込んでしまった。

「いや、ほら、虹村の事だからさ、携帯壊してたりしてんじゃね? 」

少し暗くなった雰囲気を一掃するように関口くんが口を開けば、久保田くんもうんうんと頷いた。

「ありえるな、アイツ、ガサツだし、壊してみんなと連絡取れなくなってんだよ」

「そ、そうだよね。絶対紙にメモとかしてなさそうだし……」

確かにその方がありえる。虹村的に。

「虹村くんの事だから、アメリカでもなんかやってそうだよね」

「……そりゃ、」

「やるだろうな……」

「どうする? 一人でギャングとか壊滅させてたりしたら」

「いやいやいや、流石にそれは……アメリカだぞ?」

「あぁ……ないだろ…」

アイスコーヒーの氷をストローで突っきながら話すと、二人は首を横に振った。
冗談で言ったのに、そんな本気で返さなくても。

「でも、まぁ、アイツが中一の時を思えば ありえなくはない気がする」

「だな。帝光に入学して虹村を初めて見たとき、アイツ 金髪だったよな」

「めちゃくちゃだったよなぁ、アイツ」

「それがいきなり髪が黒くなった時、私 何度もガン見しちゃった!」

「それな!」

「バスケ部に入った時の方がビビったぜ、俺」

「ビビったの?」

「そりゃ、あの虹村がバスケ部に入るなんて思わねぇだろ」

「白金監督が勧誘したんだろ」

久保田と関口の話に、へぇ、と香織は相槌をうった。流石にバスケ部ではなかったからそんな話は知らない。

「まぁ、白金監督もアレだったしな…」

「俺らマジで生きれたよな…」

「バスケ部は練習凄かったもんね…」

頼まれて合宿に参加したことを思い出し、香織は苦笑いをするしかない。

「そういえば、帝光バスケ部、三連覇だったよね」

「あぁ………」

高校の生活にも慣れ、夏休みの全中を観に行ったのはもう先月の事だった。後輩の彼らの心配はしていなかったが、気になっていたのだ。確かに『仲良しこよし』の部活は強豪ではやっていけない。
ただ、それでも、彼ら『キセキの世代』と称されている彼らは互いに高め合い、それなりに楽しげに部活をしていた気がする。
部外者である香織には内側の事は分からない。しかし、虹村たちと仲が良かったからか、彼らの事は知っていたし、見識もあった。
帝光中の理念は勝つことであり、百戦百勝を掲げていた。勝って当たり前であった。
しかし、試合はあまりにもなんとも言いようがないものだった。
圧倒的といえば圧倒的であり、パフォーマンスは申し分ないだろう。
しかし、あまりにも実力差がありすぎて、試合にならず、しかも彼ら『キセキの世代』と称される彼らが酷かった、スポーツマンとして、きっとあるまじき姿であった。
バスケとはこんなものだったのか、そんな殺伐とした雰囲気で、面白がって点を揃えていたのだ。
久保田くんも、関口くんも声は掛けられず、畏怖したのが正直な気持ちだった。
虹村がいたらきっと怒鳴り付けて、ブッ飛ばしていたに違いない。スポーツマンシップに誰も則っていなかったのだから。

「………桃井さんがね、去年相談しにきたのはああいう事だったんだな、って思ったよ」

「桃井に相談されてたのか?」

「うーん、というより虹村がね。ただ、虹村が先輩がしゃしゃり出る事はないだろって……」

「あぁ、まぁ、赤司中心だったとはいえ引退した三年が口出す訳にはいかねーからな」

「でも、あんな風になってるなんて…ちゃんと聞いてあげれば良かったかも…」

呟けば、関口くんが頭に手を乗せてきた。

「俺らは受験生で、まして、八色はバスケ部じゃなかったんだから、仕方ねぇよ」

バスケ部三年だった彼らは毎日キツい練習をし、まして全国大会まで出ていたのだ。夏休みを丸々練習で使い、他の生徒より本腰を入れるのが遅れていたのだ。
あれから一年、秋の気配は街中に溢れている。

「アイツらは、五人ともスカウトだろうな…」

「だろうな」

「誰がどこに行くんだろうね。もしかして、五人とも同じ学校だったりして」

「それはねぇだろうな。どこも勝てないだろ」

「そうだね…」

ズズッと残ったコーヒーを吸った。
そういえば、自分が通う秀徳もバスケ部は強かったし、インターハイもウインターカップも出場していた位だ。
それを二人に伝えれば、揃って「「秀徳こそ東京の三大王者だろうが」」と呆れたように言われてしまった。
ふと、同じクラスの宮地くんを思い出した。物騒な物言いをする彼と、やたら灰崎くんをボコっていたアイツが同じ学校にいたら大変だったろうな、と変な想像をしてしまう。


季節はもう秋。
未だ、悪友というべきアイツからの連絡はない。





To be Continued
act.2


-4-

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