見上げれば足元不用心

テニスの王子様

「チョタくん、ひよくん見なかった?」

同じクラスの鳳 長太郎くんに、幼なじみのひよくんこと、日吉 若の事を訊ねると、すまなそうな顔をして謝られた。

「ごめん、見てないよ。日吉探しているの?」

「うん。ひよくん、お弁当忘れたらしくて、おばさんに頼まれたんだ」

「そっか…じゃあ、一緒に探してあげるよ」

「本当?ありがとう!」

「携帯には掛けたの?」

「それがね、ひよくん電源切ってるみたいなんだ」

背の高い鳳の隣を見上げながら歩く姿は、すれ違う生徒たちには親鳥と雛鳥に見えて、微笑ましく見えていた。

「そっか…じゃあ先ずは行きそうな所を探してみようか。えーと」

「階段にはいなかったよ」

日吉がよくいく場所を二人で思いながら、歩いていく。
チョタくんこと、鳳 長太郎くんはとてもいい人。背も大きくて、とても穏やかで優しい。
ひよくんとは全然違う。ひよくんなんて、いっつもいーっつも私のことバカだバカだとそればーっか。チビだともバカにする。
逸れに引き替えするのチョタくんは私が迷惑かけても「気にしないでいいよ」って笑ってくれる。
その笑顔がまた素敵なんだよね。
じーっと彼の横顔を見ていたら、視線に気づいたのか、チョタくんがこっちを向いた。

「えーと、どうかした? さっきから見てるみたいだけど…」

「うん。チョタくんって格好いいなって眺めてた」

「えっ?」

「うん?」

率直に思った事を言ったら、チョタくんがなんかあわあわし始めた。
照れたのか、鼻の頭を少しかきながらそっぽ向いた。

「か、格好いいって……そ、そんなことないよ!」

「そんなことあるよ〜。だって私、チョタくん好きだもん!」

むん、と力説するかのように私は両拳を握りいい放った。
驚いたのかチョタくんが勢いよくこちらを振り返った。

「えっ!?」

チョタくんがそう言った時、見上げてばっかだった私は、何かに躓いた。
「うあ?」と身体が前のめりに倒れる。
衝撃に備えるためが条件反射のように眸をギュッと瞑る。が痛くない。
いつまでも痛みが来ないことに恐る恐る眸を開けるとプラーンと宙に浮いている。
お腹辺りを見ると腕が巻きついているように見えた。
上を見上げると、いつもより高い目線と、チョタくんの顔。

「あれ?」

「大丈夫? 陽菜ちゃん!」

「う、うん」

様は長太郎くんに抱き上げられていたのだ。
騒がしかったのか、周りに人が集まってきた。抱えられたままでいると、見覚えのある人が視界に入る。

「あー、ひよくん見ーっけ!」

「あぁ、日吉」

「…………陽菜、鳳、何してるんだ」

どこか嫌そうな顔をしながら、ひよくんが近づいてきた。

「ひよくんを探してたんだよー」

「ひよくんと呼ぶな。そういうことじゃない。なんで鳳に抱っこされてんだ?」

いつもと逆で見上げてくるひよくんの言葉に、陽菜は首を傾げた。

「えと、あれ? 転びそうになったら……こうなった?」

未だに抱っこされたままで言うと、ひよくんがため息を吐いた。

「大方、陽菜が転びそうになったのを鳳が咄嗟に手を出したんだろうが…………いつも言ってるだろ、足元には注意しろ!と」

怒鳴る日吉に陽菜は涙目になりながら謝ると、長太郎はにこやかに言った。

「気にしないで、俺が傍にいる時はいつも助けてあげるから」

その言葉に陽菜は「ありがとう」と喜び、日吉はまた深いため息を吐いたのだった。



2012/07/09


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