ぶかぶかの上着は彼そのもの
今日は球技大会。
中間考査が終わったせいか、鬱憤を晴らすように、やたらと盛り上がっている。
グラウンドでは、一際大きな声援が上がり、何事かと見れば三年の跡部先輩がいた。
なるほど…と思いながら、陽菜は友人と一緒にバレーの試合の為に体育館へと向かった。
「……なんで私がバレーなの…?」
言いたくないが、私は背が低い。
でもじゃんけんで負けて、バレーになってしまったのだ。
友人は、大丈夫!と言ってくれた。多分、とも言っていたけど。本音は、まぁ、なんでだよ!と言いたいだろう。
F組のひよくんなんて「C組は負けたも同然だな」と鼻で笑った。悔しい!
むぅ、と何となく面白くなくてブスッとしていたら、ポンポンと肩を叩かれた。
振り返ると壁がありました。
「陽菜ちゃん?」
「あ、チョタくんか」
見上げるとチョタがこちらをニコニコしながら見ていた。
「これからバレーの試合だよね。頑張ろうね」
チョタくんは優しい。ひよくんもチョタくんみたいに優しかったらいいのに……と思う。
だけど、想像したら、気色悪い。あの優しーく「頑張ろうね」とか、うん別人過ぎる。
「陽菜ちゃん?」
「ううん、なんでもないよ。ありがとう、チョタくん」
「気にしないでいいよ」
にっこり笑うチョタくんに、笑顔を返してコートに入った。
試合が始まり、私はサーブだけでも!と意気込むが入らない。ネットに引っ掛かる。
そこにチョタくんが横から打ってみたら、とアドバイスをくれた。
え?横から?と考えながらも、腕を横に振ればネットギリギリで相手コートに落ちた。
おぉ!と感激をして、もう一回打つとまたギリギリで入った。だけど、ボールはダイレクトで返ってきた。
「「「陽菜!」」」
レシーブをしようとしたが、サーブを打ったばかりで体勢が戻ってなかった陽菜は、返球されたボールを掴んでしまった。恥ずかしい!
チームメイトや相手チーム、しまいには見ていたギャラリーが笑ってしまった。チームメイトには本当にごめんなさい。
試合は残念ながら負けてしまった。
教室に向かうべき歩いていると、ボールを掴んでしまった事をみんな笑う。
お願いだから、もう忘れて欲しい。
隣を歩いていたチョタくんを壁にしていたけど、穴があったら入りたい気分だ。とボソリと呟いたら、聞こえてしまったらしい。
「穴に入ったら、出るの大変だよ」
「だって、恥ずかしいんだもん!」
必死で訴えると、チョタくんはうーん…と唸りながら横を歩いている。
暫く歩いていると、そうだ!と言ってジャージを脱ぎだした。
「陽菜ちゃん、これに隠れるといいよ」
脱いだジャージを頭に被せた。
これじゃ、何か逮捕された犯人だよ、と思いつつ、大きなジャージに腕を通してみた。
もうぶっかぶかの超ぶかぶか。だって袖から指先すら出ないし、裾なんて膝まで隠してる。
「……やっぱり、陽菜ちゃんには大きかったね」
「チョタくんがどれだけ大きいか分かったよ」
互いにニコニコしながら、彼らは廊下を歩いていた。
それを見かけた日吉は、一瞬顔をひきつらせて見なかったことにしようと、踵を返したのだった。
(……なんか、いー匂いする)