大きな荷物が歩いて来たら

テニスの王子様

俺は、鳳 長太郎。中二、男子テニス部所属。尊敬する人は宍戸さん。
今日の昼食は跡部さんの声がけにより、カフェテリアに集まっていた。
ミーティングを兼ねての食事も終わり、カフェテリアから出た俺たちは前から歩いてくるコントラバスのケースが目に入る。

「な、なんだ? あれ?」

「コントラバスが歩いてる…?」

よたよたとふらつきながら、歩いてくるコントラバス(のケース)。
後ろにいた、日吉がため息と一緒に「陽菜だな…」と呟いた。
よくよく見れば、微かに見え隠れする髪色は陽菜ちゃんだし、コントラバスに身体が隠れるのは陽菜ちゃんくらいだ。
俺は慌てて、彼女へと足を向けた。

「陽菜ちゃん!」

「ん? その声はチョタくん?」

ケースの横からひょこ、と顔を出した陽菜ちゃん。大きな荷物にも関わらず、何ともない顔をしている。

「あ、やっぱりチョタくんだ。どうしたの?」

「手伝うよ!」

「え? 大丈夫だよ?」

「だってフラフラしてたよ」

「そんなことないよ〜」

荷物渡して、と手を出すが、彼女はキョトンとしている。
そこに日吉がまたため息を吐いた。

「そんなことあるだろ、ばか」

「あー、ばかって言った方がばかなんだよー、ひよくん」

「ひよくんって呼ぶな! 向日さんや忍足さんが「プ。ひよくんだってよ」」

「ひよくん、可愛ええ呼び名やなぁ」

いつの間にか先輩たちまで陽菜ちゃんの周りにいた。
先輩たちは陽菜ちゃんをじろじろ見ている。

「すっげぇ、チビだな〜」

「岳人、そんなこと言うもんやない。小さくてもバランス取れてて可愛ええやろ。特に真っ白い足ぐぁは!」

「忍足さん、陽菜の前で変なこと言わないで下さい。通報しますよ」

「そうですよ、忍足さん。陽菜ちゃんに近付かないで下さい」

忍足さんから隠すように俺と日吉は陽菜ちゃんの前に立った。ついでに樺地も。
向日さんや宍戸さん、跡部さんも、忍足さんの発言には引いているらしく、軽蔑するかのような視線を送っている。

「な、なんやねん。まるで悪者扱いやないか」

「忍足、別にてめぇの嗜好には文句は言わねぇが、他人の前ではよしとけ」

「な、なんや? 跡部まで」

「激ダサだな、忍足」

忍足さんを見えないようにして、陽菜ちゃんから荷物を取り上げた。

「手伝うよ、陽菜ちゃん」

「え、でも……」

「いいから、手伝ってもらえ」

「気にしなくていいから」

「う、うん……」

先に歩き出すと、陽菜ちゃんが訳が分からないって顔をしながら、ちょこちょこと隣に駆け寄ってきた。
それを見たのか、「可愛ええなぁ」と忍足さんの声が聞こえたが、日吉と樺地が壁を作ってくれた。

とりあえず、これからは陽菜ちゃんの傍にいようと本気で思った。
忍足さんの目がおかしいから。

(チョタくん、ありがとうね)

(いつでも手伝うからね)



2012/07/19


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