親友でもなく恋人でもなく…?

テニスの王子様

入学式も滞りなく終わり、教室に戻る際に見かけた蓮二は髪の長い可愛らしい女の子と一緒にいた。
クスクスと声が聞こえるような微笑を見せた女の子に蓮二は頭に手を乗せ、静かに微笑していた。

「…………」

「室生さん? どうかした?」

「え、なんでもないよ。入学式緊張したなぁって思っちゃって」

「そうなんだ。早く教室に戻ろう」

「うん」

チラリともう一度蓮二がいたところを見たが、もうそこにはいなかった。
蓮二のあんな優しげに笑う顔を見たのはいつぶりだろう。
前は何度か見たけど、今は違う子に向けられている。それがなんだか悲しかった。
幼なじみなんて、こんなもんなんだろうけど……3年間ロクに会ったりしてなかったし。
少し痛む胸を押さえながら、私は教室へと向かった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「では改めて、入学おめでとう。皆さんは──」

担任が挨拶するのを聞きながら、さっきの蓮二の事を考えた。

(さっきの、彼女なのかな〜)

考えてみたら、蓮二が好きで立海を受けたが、彼に彼女がいるかもなんて考えてなかった。
今更ながら自分の抜けた所に頭を叩きたくなる。
ボーッとしていたせいか、いつの間にか先生の話は終わり、自己紹介へと移っていた。
内部と外部の割合が2対1ぐらいだったようだ。なんだかハーフの人がいたが、さっき三浦さんが話していた桑原くんとかいう人だ。
その前に沢渡さんも自己紹介していたけど、綺麗な人だと思う。
自分の列になり、丸井くんと幸村くんが自己紹介した時はクラスの女子が色めきたった。
幸村くんを見れば苦笑いを浮かべ、肩を竦めている。

「じゃあ、とりあえず今日はここまで。明日は各クラス委員を決め、委員長を中心にオリエンテーションの話をするからな〜。では今日は出席番号一番、号令を」

きりーつ、と一番の人が声を上げて今日は解散となった。
同時にざわざわとクラスがうるさくなる。どうしようかと考えていると、前の三浦さんと目が合った。

「室生さんはもう帰るの?」

「えっと、考え中」

「そう、なら一緒に帰らない?」

「いいの?」

「うん。仲良くしたいし、良かったら私の事は実奈って呼んで」

「あ、じゃあ私も椿姫って呼んで。よろしくね、実奈」

「こちらこそよろしく、椿姫」

嬉しくて笑い合ってると、実奈が声を掛けられた。

「おい、三浦〜。お前さ、部活とかどうするんだよぃ」

「ちょっと、丸井! 私いま椿姫と親交を深めてたの!」

「椿姫〜? って、あぁ幸村くんの前のヤツか。俺は丸井 ブン太、シクヨロ!」

一瞬、名前に驚いてしまった。丸いブタって……と思っていると

「言っとくけど、丸いブタじゃねーから。丸井 ブン太だからな」

配られたばかりの生徒手帳を見せられれば『丸井 ブン太』の名前にに自分が恥ずかしくなった。
慌てて謝れば、ったく!と呆れたように言われてしまう。

「そんなに畏まることないよ、室生さん。丸井の名前がややこしいんだから」

後ろから不意に聞こえた声に振り向けば、幸村くんが口元に手をあてて可笑しそうに笑っていた。

「ちょ、幸村くん! 酷くね?」

「フフ、デブン太とか言われないようにね」

「あははっ! デブン太って、すごいピッタリ!」

幸村くんの言ったことに実奈がお腹を抱えて笑っている。なんだか話についていけずに驚いていると、声が響いた。

「精市、彩香が待っているぞ」

聞き覚えのあるその声は3年近くもの間聞いていなかった声。そして記憶の中にある声よりもはるかに低くなっていた。
ちらりと廊下側の入り口を見れば、先ほど見た蓮二の姿と、一緒にいた女子の姿。
ドキッと胸がなり、蓮二を見つめるとこちらを見ていた。

「精市くん」

鈴のような声が聞こえた。
可愛らしい彼女は幸村くんの名前を呼び、手を振っている。
つい見てしまったのか目が合うと、キョトンとした後、会釈をされた。

「彩香、蓮二。良かったらこっちにおいで」

幸村くんが呼び、蓮二たちはこちらへと近づいて来た。
久々に会えた喜びと不安で胸の動悸が早まるのが分かる。

「精市くん、こちらは?」

「丸井とジャッカルの友人の三浦さんと、室生さん。二人とも外部からの進学なんだって。あぁ、室生さんは蓮二と同じ小学校って聞いたけど、知り合いかい?」

「久しぶりだね、れ「久しぶりだね、とお前は言う。確かに久しぶりだな、室生」…」

名前を呼ぼうとしたら遮られ、尚且つ苗字で呼ばれた。
呆然としていると、蓮二の傍にいる彼女が「知り合い?」と聞いている。

「同じ小学校で、家も近所なんだ」

「へぇ、そうなんだ。幼なじみってところかい?」

「まぁ、そんなところだ」

幼なじみという言葉にドキッとした。そうだけど、そうじゃない、と言いたくなったけど言えずにいた。

「へぇ、じゃあ三浦とジャッカルみたいなもんなんだな」

「ジャッカルと三浦さんは幼なじみなのかい?」

「うーん、幼なじみっていうか、マンションが隣同士」

「へぇ。あ、私は1組の倉橋 彩香です。よろしくお願いします」

彼女は頭を下げて自己紹介をしてくれた。慌ててこちらも挨拶をする。

「私は三浦 実奈です。ジャッカルと丸井とは同じ小学校なんだ。よろしくね、倉橋さん」

「こちらこそ」

「初めまして、室生 椿姫です。こちらこそよろしく」

「蓮二くんの近所ってことはうちも近いのかな?」

「いや、彩香の家からだと俺の家よりも方向が逆だから近いとはいえないな」

「そうなんだ、でもこれから通学が一緒になるかもね。よろしくね、室生さん」

「う、うん」

「さて、精市。弦一郎が待っているから行くとするか」

「あぁ、行こうか。彩香」

「うん。楓ちゃんは?」

「弦一郎のところに行っている。丸井、ジャッカル、先に行くぞ」

「おぅ、じゃーな。三浦、室生」

「また明日な」

彼らはそう言って手を振ると教室から出ていった。
廊下からはなにやら悲鳴みたいな声が聞こえたが、あまり気にならなかった。

「なんか、凄かったね。ていうか椿姫って柳くんと幼なじみなんだね」

「う、うん。実奈も…桑原くんと」

「ん〜、親友みたいなもんかな。じゃあ私たち行こうっか」

「う、うん」

話している内に実奈が桑原くんの事が好きだと聞かされた。

『同じ高校になったし、親友から抜け出して恋人になってやる』

そんなこと言える彼女がちょっと羨ましくなった。
名前を呼ばれなくなったことで、私は幼なじみでさえないように思えた。


ねぇ、私はあなたにとっていったいなに?



To be Continued


あとがき

ごちゃごちゃですみません。


2011/03/01


-3-

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