幼馴染みの糸の色

テニスの王子様

入学式から数日経ち、部活を決めかねていると、幸村くんから話を持ちかけられた。

「室生さんって、テニスのルールとか分かる人かい?」

「え、っと、分かるけど…」

そう告げた途端、ニッコリと笑みを浮かべた幸村くんに一瞬背筋がゾッとした。
笑顔を向けられただけなのになんで…と思っているとまたまた笑みを浮かべた。

「テニス部のマネージャーとかしてみない?」

「マネー、ジャー…?」

「うん。室生さんなら大丈夫そうだし、同小だった蓮二や紫…切原 紫がいるし……どうかな?」

思いがけない誘いにビックリした。
マネージャー、だなんてやれるだろうか?
出来るならやりたい。蓮二とまた仲良くなりたい。

「三浦さんはもう料理部に入ったっていうし、全く知らない人がいるよりは知り合いがいる方がいいかと思ってさ」

「……やってみたい、かな」

「本当に? 助かるよ、マネージャー希望は多いんだけど誰かと仲良くなりたいとか不純な動機のばかりの子が多くて、」

どきっとした。不純な動機……そう言われると私がマネージャーになってもいいんだろうか。
そんなことを考えていると、幸村くんの席に誰かが近づいて来た。
顔を上げると帽子を被った人……(先輩だろうか?)がいた。

「精市、」

「真田。マネージャーの件、彼女はどうかな?」

「ふむ、……テニスのルールは知っているのか?」

「知っているってよ。それに蓮二の幼なじみで、紫とも面識はあるようだよ」

「蓮二の……そうか、なら頼めるだろうか?」

「は、はい。私でよければ」

「精市の推薦なら大丈夫だろう。自己紹介がまだだったな、俺は隣のクラスの真田 弦一郎だ」

「私は室生 椿姫です……え、同じ学年…?」

思わず呟くと幸村くんはお腹を押さえながら笑っていて、真田くんは眉間に皺を寄せている。

「フフッ、室生さん。真田はこう見えても俺たちと同じ1年なんだよ」

「す、すみません!」

慌てて謝ると真田くんは顔をしかめたまま「慣れている」と言った。慣れているなんてなんだか悲しい気がする。
とりあえずは放課後、テニス部に来てくれ。と言われ頷いた。

「フフッ、よろしくね。室生さん」

「は、はい」

クスクス笑う幸村くんにどこか不審がりながら、私は頷いた。
今日からテニス部のマネージャーになるみたいだ。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


放課後、部活の時間がやってきた。
あの後、沢渡さんと調理室から戻って来た実奈(沢渡さんとは同じ部活で、因みに倉橋さんもだとか)にマネージャーの事を言うと驚いていた。
沢渡さんも驚いていたが、大丈夫だよと言ってくれた。話を聞けば真田くんとは幼なじみらしい。

「顔はオッサン臭いけど、大丈夫」

なんだか怖いイメージがあったけど沢渡さんに「気にしない」と言われた。何かあったら幸村くんか、蓮二に言うといいと言われた。
二人は部活があるからと行ってしまい、少し困っていると丸井くんと桑原くんが話しかけてきた。

「室生、部活行こうぜぃ」

「幸村に連れて来るように言われたんだ、一緒に行こうぜ」

「あ、ありがとう!」

幸村くんは先に先輩に言いに行ったらしく、幸村くんが勝手に決めていいのかな?と疑問を抱くと、幸村くんに適う人はいないらしい。
1年生なのに、と思っているとテニス部で一番実力があるらしい。そんなに凄いのかと感心していると、部室に着いた。
幸村くんを見つける前に、一緒にいた蓮二の姿が先に目に入った。他にも休み時間に会った真田くんと切原さんを見つけた。

「幸村くーん、室生連れてきたぜぃ」

「ああ、ありがとう」

「…………あれ? もしかして室生 椿姫? やっだ、懐かし〜、私のこと覚えてる?」

丸井くんが話し掛けると振り向いた4人の中で、一番に反応したのは切原 紫ちゃんだ。
蓮二も驚いているのか、一瞬眼を見開いた。

「覚えてるよ、切原さん」

「紫でいいよ。さん付けなんて慣れないから。そっか、室生さんなら大丈夫そうだね。柳も仲良かったよね」

切原さんが話を振ると蓮二はいつもの顔で「まぁ、そうだな」と答えた。

「紫たちもいいみたいだね。室生さん、先輩に紹介するからついて来てくれるかい?」

「は、はい!」

「フフッ、緊張しないでいいよ」

幸村くんに手招きされ、ついて行こうとした時、蓮二をチラリと見るとこちらを見ていたのか、フイと眼を逸らされた。

(……なんだろう…実は反対なのかな?)

不安になりながらも、幸村くんについて行き、部長さんに挨拶した。

「いやぁ、助かったよ。本当は2年にもマネがいたんだけどね、幸村が入った途端に辞めてね……まぁ、仕事しないマネだったから構わないんだけどね。切原さんと一緒に頑張って。仕事は切原さんに聞いて、分担してくれ」

「は、はい」

部長さんの言ったことに突っ込みを入れたかったけど、なんとなく聞くのが怖かったので止めた。

「じゃあ、部活始める前に部員たちに紹介するからよろしくね」

「はい」

部長は部活開始前に部員を集合させた。
並ぶ部員たちからの視線を集めながら、マネージャーになった事を告げて、挨拶をした。

「今日からマネージャーになります室生 椿姫です。よろしくお願いします」

「じゃあ、切原、面倒見てやってくれ。では練習開始、レギュラーはコートで練習試合を開始して、1、2年はジョギングと筋トレ開始」

「「「イエッサー!」」」

動きだす部員たちに圧倒されていると、切原さんに肩を叩かれた。

「室生ちゃん、こっちこっち。今日は私のジャージ貸すね。後でサイズ教えて? ジャージ注文するから、それまでは自分で用意したジャージでいいから」

「あ、ありがとうございます。切原さん」

「紫でいいよ。同じ小学校なんだし」

「じゃあ、私も椿姫でいいです」

「オッケー。じゃあ仕事の説明するね──」

切は─じゃなくて紫からジャージを借りてから、マネージャーの仕事を一通り教わった。
コートの整備に、ボール出し、ドリンクとタオルの準備、スコア書きに、部室の掃除、他にもボール拾いなどもある。

「結構仕事あるんだね」

「まあね。でも椿姫がテニスのルール知ってて良かったよ、前のマネージャーなんてルールも知らないでいたのよ? もう邪魔にしかならなかったわ」

前のマネージャーってさっき部長が言っていた人だろうか?
そんなこと考えているとコートの外で歓声をあげてる人たちがいた。
きゃあきゃあと幸村くんや丸井くんの名前、他にも誰かの名前を叫んでいる。

「……アレって…」

「あぁ、ファンクラブの連中よ。中学ン時からのだからね」

本当にファンクラブがあるんだ、と感心してしまう。
蓮二くーん!と蓮二の名前を呼んでいる人たちもいた。

「幸村くんと丸井くんがモテるのは分かるけど、れ、柳くんもモテるの?」

「柳? んー、まぁ、モテるよ。でも柳は色々あるけどね。幸村は彼女いるし」

紫が何やら苦笑しているのが気になった。色々ってなんだろう。
それに幸村くんに彼女がいると聞いて驚いていると、紫がまたまた苦笑した。

「幸村ってああ見えて彼女いるのよ。しかも超溺愛してる彼女が。本当はマネージャーさせたかったんだけど、依怙贔屓しちゃうからダメ。って言われたんだってさ」

「へ、へぇ…」

「もしかして、椿姫って幸村のこと?」

「ま、まさか! その、意外だなって思って」

「運命の赤い糸で結ばれてるだ〜とかウザイこと言ってたよ、幸村」

幸村くんの意外な一面を聞かされ、唖然としてしまった。

恋人同士を繋ぐ赤い糸……ならば幼なじみを繋ぐ糸は何色なんだろう……。
出来ることならば、それが赤く染まることを願ってしまう。

1年生ながらコート内で練習する蓮二の姿を見つめながら、ため息をつくしかなかった。
惚れてる相手って、倉橋さんなんだろうか?



To be Continued



あとがき

お題って難しい。
展開が早いですが、よろしくお願いします。
つか、柳とヒロインがあまりにも接点なさすぎる……orz


2011/03/29


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