「いまさら」 だなんて聞きたくない

テニスの王子様

彩香ちゃん家から歩いて10分程度の所に蓮二の家がある。そこからさらに5分位かかって私の家があった。
てくてくと言葉もなく歩くのは、苦しい……。でも話をしたとして出て来るのは部活のことで、後は学校生活のこと。
話の中には彩香ちゃんの話題も出る、そうしたら、もっと苦しい……。
チラリと右側を見上げると、視線を感じたのか蓮二と目が合った。

「どうかしたか?」

「う、ううん。……あ、彩香ちゃんと幸村くんって本当に仲がいいんだね」

「…………そうだな」

ああ、こんなこと言いたかった訳じゃないのに……よりによって2人の話題を出してしまった。

「幸村くん、本当に彩香ちゃんが大好きなんだね。丸井くんがパイを多く食べたくらいで」

「それが精市だからな。彩香に関しては愛情が深いというか……彩香もたまに困惑しているようだ」

「そうなの?」

そんな風には見えなかった。
いつも2人仲良くて、ふふっと可愛らしく笑っていて、互いが互いに好きなんだな、と周りに分かるくらい甘い雰囲気を出しているのに。

「まぁ、たまにだがな。それで精市を珠に諫めるがそれで怒ったりして少し大変なんだ」

「ふーん……なんで蓮二が諫めるの?」

「紫や沢渡だと喧嘩になるし、だからといって弦一郎が間に入っては瞬殺だからな」

「へぇ……」

蓮二の顔を見上げると眉を潜めて話していた。

「な、なに?」

「それはこちらの台詞だ。お前こそ何が言いたい」

「べ、別に」

「…………」

蓮二はジッと見てきた後、またスタスタと歩き始めた。
私は焦ってしまい、またとんでもないことを話題にしてしまった。

「あ、あのさ、蓮二って彼女作らないの? 結構モテるみたいだし、」

「別にモテたりはしていない」

「え、何言ってるの? いつもギャラリーから名前呼ばれてるでしょ」

「……興味はない」

蓮二は、ため息を吐きながら言葉を零した。
モテない男子が聞いたら、嫌味にしか聞こえない台詞だってば。
そんなことを考えていると、前に紫が言っていた事を思い出した。

「柳? んー、まぁ、モテるよ。でも、柳にしろ幸村にしろ、惚れてる相手がいるからねぇ」

惚れてる相手……どう見ても蓮二は彩香ちゃんが好きだとしか思えない。
紫も言っていたし、鋭い幸村くんなら気付いているのだろう。
それでも彩香ちゃんの傍にいさせるのはなんでなのか、幸村くんが入れない絆でもあるのかな、中学入ってから仲良かった、とか?
全然知らない蓮二の中学時代、そこにずっと彩香ちゃんがいたのだろうか?
そうしたら私との二年間よりも、彩香ちゃんの方が蓮二といた時間が長い。
もしかしたら蓮二はずっと片思いなのかも、傍にいたのに、幸村くんに横から持っていかれたとか……。
色々なことが頭に浮かぶ。

「……あ、彩香ちゃんとは中学入った時から仲良かったの?」

ドキドキしながら蓮二の返答を待つと思いがけない言葉が返ってきた。

「知らなかったのか? 彩香は中2の終わりに転校してきたんだが…」

「そ、そうなのっ!?」

「あぁ。彩香の祖母が入院してな、一人暮らしだったのもあって彩香たちが一緒に暮らすようになったんだ」

フッと笑う蓮二の顔を見て、私は足を止めた。思わず、そう思わず呟いた。

「………蓮二は、」

「なんだ?」

「彩香ちゃんの事が好きなの?」

私の言葉に蓮二も足を止める。
くるりとこちらを振り向く蓮二がなんていうか、怖かった。
鼓動が早まるのを感じる……細い切れ長の双眸がこちらを見ている。

「で、でも残念だったね! 相手が幸村くんだし……は、初恋は実らないっていうし…仕方ないよね! それに蓮二モテるんだし、諦めて別の人を探したらいいんじゃない」

空気に耐えきれなくて次から次へと言葉が出てくる。
ああ、バカ!何言ってんだろう。

「やはり、馬鹿だと思うか……そうだな、無理か……」

──傷、つけた……?

「あ、えと…」

「今、お前が言っただろう……だが、初恋ではないがな」

「えっ?」

「彩香に関しては、別に精市から奪おうなどとは思ってはいない。精市は親友だからな」

蓮二は微笑しているが、私はさっき言った彼の言葉が気になった。

「……彩香ちゃんが初恋じゃない、って……」

「ああ、俺の初恋はお前だ」

「え?」

「いまさらだかな」

衝撃の言葉と共にショックが大きかった。
私たち両思いだったの?
でも「いまさら」って?
もう「いまさら」なの?
目が熱い……涙が溜まっていくのが分かる。

「どうした?」

「…………い、「いまさら」なんて言わないでよっ! 私、私が、どんな思いで立海に入ったかなんて、知らない、くせにっ!」

「……室生」

「なんで、苗字で呼ぶのよっ! 〜〜もう、蓮二なんて知らないっ!!」

頭の中がぐちゃぐちゃの状態だった。何を言ったのか、よく分からない。

「──椿姫!」

蓮二が叫んだことも知らなくて、どんな顔をしてたのかも知らなくて、その場から走って逃げたのだった。
家に着いて制服を脱ぎもせず、私はベッドにダイブした。

「蓮二のバカ……」

悔しくて、悲しくて、辛くて、涙が止まらなかった。





To be Continued



あとがき

名前変換がないってなんだろう……。
ようやく2人きりになれたら、いきなりの急展開(苦笑)
柳にとっては「いまさら」ですが、椿姫にとっては「いまさら」なんかではない……。
もしかしたら次は幸村が出張るかもしれない(苦笑)


感想頂けたら嬉しいです。


2011/07/30


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