もう幼馴染みには戻れない

テニスの王子様

朝、いつの間にか寝てしまったのが目が覚めた。
時計を見て、5時半という時間帯に体内時計ってすごいなんてどうでもいいことを思った。
部活に入ってから朝練にも参加しているせいだ……なんて考えながら、鏡を見て自分の姿に呆れた。
制服はしわしわで、顔はボロボロ……目なんてウサギの目みたいに真っ赤……というより腫れてお饅頭みたいなんて思った。

「……ブサイク…」

ポツリと呟いて、また涙が目に溜まるのを感じた。
ああ、もう泣きたくなんかないのに……。

「……朝練、出れないや…」

昨日の蓮二の事が頭に過る。
もう彼は、私の事は気にならないだろう。

  ああ、俺の初恋はお前だ

  いまさらだかな

  どうした?

  ……室生


昨日の蓮二の言葉が甦る。
あんな簡単に言えるって事は、彼にとっては既に終わっている想いだからだろう。
ぐすっと鼻を啜り、もう一度鏡を見た。
泣き腫らした瞼に、真っ赤な目と鼻、可愛くなんてない。
ふと彩香ちゃんの姿が過る。
紫や沢渡さんみたいに美人って訳ではないけど、ニコッと笑ったりしてて可愛いんだ。雰囲気もほんわかしているし……。
誰だって、あんな風に可愛いかったら好きになるに決まってる……。
自分で思って、傷ついてしまった。バカみたいだ。
自分の顔を見ないようにして、私は身を翻し、着替えを持って自室から出たのだった。
シャワーを浴びてから、メールで部長と紫、それに幸村くんに『体調が良くないので朝練は休みます』と連絡を入れたから、いつもよりゆっくり出来た。
嘘ついて申し訳ないけど、今は蓮二に会うのが嫌だった。
皺になった制服にアイロンを掛け、昨夜食べなかったご飯も食べた。
お母さんは心配そうに「具合悪いなら休んでもいいのよ」と言ってくれたけど、今日休んだら、明日も休みたくなる。そしたら明後日も……ってなりそうだから「大丈夫」だと言って支度をした。
小学生の弟なんて「姉ちゃん、振られたんだろう」なんてニヤニヤしながら言ってきたから、叩いてやった。当たってるのが腹に立つ。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


学校について、教室に入るとまだ幸村くんたちがいないのを確認した。当たり前だけどまだ朝練みたいだ。
実奈や沢渡さんもやって来て朝練の事を聞かれたけど、アレで体調が…というと納得してくれた。
チャイムが鳴る直前にテニス部が教室に入ってくる。女子に挨拶されながら入ってくる彼らはやはり圧巻だ。

「おはよう、室生さん。体調は大丈夫なのかい?」

「おはよう、幸村くん。今は大丈夫」

「そう、なら良いんだけど。無理はしないでね」

ふふっと笑う幸村くんに朝練の事を聞いてみた。蓮二の様子が気になったからだ。

「ん、いつもと同じだよ」

「……そ、そう…」

あの蓮二に少し反応があったかなんて期待してバカに思えた。
少し落ち込むと幸村くんが口を開いた。

「何かあったの?」

「……別に、何も、」

「そうは見えないけど……蓮二のことかい?」

顔を上げると幸村くんは微苦笑してから、何故か先生に私を保健室に連れて行くと行って二人で教室を出た。
保健室に着くと保健医は出掛けているらしく無人だったが、丁度いいとばかりに、幸村くんは「話、聞くよ」と言ってくれた。
どうしようかと思いながらも、倉橋さんの彼氏でありながら、一緒に居させている幸村くんに少しだけムッとした。
八つ当たりという訳ではないけど昨日のことを話した。

「……」

なにも答えが返ってこないのが少し気まずい。
幸村くんに眼を合わせられなくて、俯いていると名前を呼ばれた。

「室生さんは、さ。蓮二とどうなりたかったの?」

「え?」

問いかけに顔を上げると真っ直ぐ見つめられていた。少しドキッとする。

「……あんな事、言っちゃったし…幼なじみにはもう……」

『バカ』と怒鳴って告白まがいなことを言って、どうなるかなんて分からなかった。
ただ、もう幼なじみには戻れないと思ったからこそ、少し気分が重い。
何も言えずにいると幸村くんが口を開いた。

「ずっと幼なじみのまま? それとも恋人?」

「え、…それは、もちろん…」

「怖いのは分かるよ、人の気持ちは他人には分からないからね。だからこそどうにかしたいなら、心を決めなきゃ。いつまでも幼なじみのままじゃいられないんだよ」

「…………」

「君には背中を押してあげられるけど、蓮二に関しては何も言えない。アイツの気持ちは知っているからね」

「……幸村くん」

窓の外に視線を向ける幸村くんの姿に驚いてしまう。なんだか切なそうな顔をしていたからだ。

「俺は蓮二に酷なことをしてきたからね。はっきりしろとは言えないんだ。……俺も怖いからね」

「怖い…?」

「うん。彩香は俺を選んでくれたけど、もしかしたら蓮二との方が似合うのかもしれないって考えると怖いんだ」

それこそ蓮二の方が彩香と一緒にいたりしたから。そう話す幸村くんは、どこか懐かしむように話してくれた。

「焚き付けるつもりはないけど、もう後には退けないなら、前に進んでしまえばいいよ」

呟いてから幸村くんは保健室から出ていってしまった。
1時限目はここにいるといいよ、と言ってアイスノンを渡してくれた。眼が赤いからだろうな…。
しん、と静かになる保健室は教室とは離れているからか、遠くに騒めきが聞こえるだけ。
瞼にアイスノンを押し当て、考えてみる。
幼なじみにはもう戻れないと思った、なら前に進もう。
どちらにしても私が結局蓮二のことがが好きなのは変わらないんだから。


それでも怖いのは“幼なじみ”ではいられなくなるからなのか



To be Continued



あとがき

夢小説?と疑問を抱かせる話ですみません。つか名前変換がないってなんだね?
今回は幸村様が出張ります!ヒーローを差し押さえどんだけ出てくんだよ、という感じです。
こんなことなら『青空』キャラ出さなきゃ良かった。
でもそうなると話が大分というか全然違う話になっていたと思いますが(苦笑)
次は柳が絡むと思いますが、『青空』ヒロインも絡みます(どこまで出張る気だ、青空カッポーめ!)

ご拝読ありがとうございました!

2011/08/22


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