知り合い未満

テニスの王子様

美姫からテニス部の人たちを紹介されたと言っても、今の今まで(美姫の友人になってから)関わりにあったことがないので大丈夫だろう。
今時の若い子たちは、誰が抜け駆けしたとかでファンクラブが制裁を加えるとかなんとか……昔のヤンキーよりかなり怖いと思う。
『テニス部はみんなのもの』そんな思考がまだまだ幼いのだと思う……人は誰のモノにはならないというのに。
そんなどうでもいい日々を過ごしながら、別に私とてグダグダ生きている訳ではない。
OL時代、あまりにも資格がなくて転職しようがなかった……今更という気持ちが大きすぎて、腰掛けOL、つまらない人生だった。
成人してまたそんな道は嫌だと思い、役に立つような物を勉強していた。
今は医療事務を勉強中、無論通信講座。本業の勉強もしなくてはならないから。
早々に帰宅し、宿題、通信講座をやり終え時計を見たら7時になっていた。

「……ご飯、食べよ…」

キッチンに行き、冷蔵庫を開けたが、オカズになる物が一切なく、なんとも悲しくなるしかなかった。

「買いに行こう…」

バッグに財布が有るのを確認してから、鍵を持ち家を出た。
近くのスーパーがいいか、その近くのコンビニがいいか……スーパーにした。惣菜もお弁当もあるし、飲み物もコンビニで買うより断然安い。
ついでに色々食料を買い、店を出た。てくてくとマンション近くまで行くと目の前に人がいた。

「おや、貴方は……」

「…………」

「華月さんでしたよね。美姫さんのご友人の」

そこには眼鏡を掛けた、数日前に会った人が立っていたのだった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


部活を終え、自宅へと歩いていると曲がり角にて見知った人に出会いました。
確か、美姫さんのご友人……華月 瑠歌さんだったはず。

「華月さんでしたよね。美姫さんのご友人の」

そう尋ねれば「はい」と答えが返って来ました。

「自宅はこの辺りなんですか? 時間も遅いですし送って行きますよ」

「……いえ、すぐそこですからお気になさらないで下さい」

「しかし、そのように沢山の荷物を持っては辛いでしょうから」

そう言って彼女の持っている買い物袋を取り上げた。
頻りに困ったように「いいですから」と言っていたが、ふらついていたのを見たからには黙って見ていられません。

「さ、参りましょうか」

「………………はい」

歩き出して行けば、すぐに目的地についてしまいました。やや驚いたことは

「同じマンションなのですね」

「……えっ…」


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


突然の言葉に絶句してしまった。
まさか、この人が同じマンションだったなんて。
それは相手も同じようだったが、眼鏡を押し上げ質問してきた。

「いつ頃、こちらに?」

「……入学した時からです」

「そうなんですか、今まで気付きませんでしたね。私は8階ですが貴方は?」

「9階です」

はっきり言ってどうでも良かった。別に今後彼に関わる事もないだろうと思い、答えた。
エレベーターに乗り込み、階数ボタンを押してくれる姿はとても10代の青年が出来る姿ではない。
ポーンとエレベーターが8階で止まり、彼が降りるだろうと持たせてしまっていた荷物を受け取ろうと手を伸ばしてが、それを拒否された。

「……あの、?」

「荷物は運びますから」

「は?」

思わず出た言葉はそれしかない。
彼は構わず『閉』ボタンを押し、グンッとエレベーターが動く。そして、ポーンとそれは9階で止まった。
彼はエレベーターから降りるとスタスタと歩いている。慌てて追い掛けると、振り向かれた。

「ご自宅はこちらでよろしいですか?」

『華月』という表札の前でにこやかに笑う姿は、瑠歌にとっては異様に見えてしまった。

「……はい、ありがとうございました」

礼を述べて、荷物を受け取れば「当たり前のことをしたまでです」と言った。

「それでは、また明日。アデュー」

「……さようなら」

再度頭を下げてから、直ぐ様家に入った。
荷物をキッチンへ持っていき、弁当を取り出した。が、なんだか食欲がわかない。
瑠歌はため息を吐くと買ってきた弁当も一緒に冷蔵庫に入れ、寝室のベッドに潜った。
たかが、荷物を持って貰っただけ。何もあるはずはないのに、このいやな予感はなんなのだろうと思いながら眸を閉じた。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


翌朝、早く寝たせいもあって早く起きてしまった。

「……5時、か…」

シャワーを浴び、学校の支度をする。いつもは弁当を作るがそんな気が起きなかった為、コンビニで買って行こうと思った。
上がって来たエレベーターに乗り1階までの間、眼を閉じていたら直ぐ様エレベーターが止まった。
見れば扉が開き、そこには昨夜荷物を運んでくれた男性の姿があった。

「おはようございます。お早いですね」

「……おはようございます」

瑠歌はそう答えるとまた眼を閉じた。
あまり関わりたくないのだ。しかし、眼を閉じていても感じるものがある。1階までの時間がやけに長く感じた。
ようやく、階下についた時に不意に腕を取られた。見れば、一緒に乗っていた彼が掴んでいる。

「……あの「私と友人になってくれませんか?」……は?」

離して、という前に遮られ、唐突な出来事に言葉を失った。


だって、
貴方とは他人以外の何物でもない



To be Continued


-5-

キミがいるだけで top