Interval

テニスの王子様

From:不二 周助
Sub:待ち合わせ

駅前の時計台に10時ってことで。
会えるのが楽しみだよ。

‐‐‐END‐‐‐


そんなメールを受け取ってから、数時間。
時間に間に合うのかどうか彩香は時間を確認しながら、焦っていた。
だが焦っていたからとはいえ、電車の速度は変わることはない。

「ああ、もう! 待たせちゃうな…」

こればっかりはしょうがない。と携帯を取り出してメールを打った。

To:不二 周助
Sub:Re:待ち合わせ

おはよう。
ごめんなさい、そちらに向かってるんだけど少し遅くなるみたい。
本当にゴメンね!

‐‐‐END‐‐‐


カチカチとボタンを押した後、送信してから、移り変わる窓の景色を眺めた。
あの関東大会決勝から早1週間。
もう8月になっていた。

「……早いなぁ…」

そう呟き、先週の試合を思い出した。
リョーマの『COOLドライブ』というのが決まり、青春学園は王者と呼ばれる立海大附属を下した。
そして、その時に約束していたことがあった。

『僕が試合に勝ったら――今度、一緒に出掛けてくれないかな』

『……そんなことでいいなら、いいよ』

『クスッ、ありがとう。頑張るよ』

『うん、応援してるよ』


そんな約束をしたから彩香は只今、電車に揺られ待ち合わせ場所へと向かっていたのだった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


駅前の時計台の下にて、彼女が来るのを待っていた。
待ち合わせは10時だというのに、楽しみにしていたせいか、30分前にはここにいた。
そんな時、メール着信音が聞こえ、携帯を見る。

From:倉橋 彩香
Sub:Re:待ち合わせ

おはよう。
ごめんなさい、そちらに向かってるんだけど少し遅くなるみたい。
本当にゴメンね!

‐‐‐END‐‐‐


そんなメールを眺めていると、近くで同じに待ち合わせをしているのだろうか、何人かのグループからの会話が聞こえた。

『電車遅れてるらしいよ』

『マジで? 映画間に合うかな』

『大丈夫っしょ、それくらいは』

成る程、彼女もそれに巻き込まれたらしい、と考えてから彼女にメールを送った。
『気にしなくていいよ』と。
待つのは別に苦ではない。特に彼女を待つのであれば。
不二はそう考えながら、クスッと微笑すると持ってきた文庫本を手にした。
待ち合わせをして、知らない娘たちに声を掛けられないことは少なくない。
だからそれをされないようにと本持ってきたのだ、彼女との待ち合わせに如何なろうと邪魔されたくないから。
しばらく待っていると、駅から出て来る人が増えたのを見て本をカバンにしまった。
するとキョロキョロしている彼女の姿を見つけ、僕は急ぎ足で近づいた。

「倉橋さん」

「あ、不二くん。ごめんね、待たせちゃって」

申し訳なさそうに謝る彼女に苦笑しながら

「倉橋さんのせいじゃないから気にしなくてもいいよ。それに待ち合わせ時間を考えたらほんの10分遅れた程度だし」

「でも不二くんを待たせたのは申し訳ないよ、ごめんね」

時間厳守なのは手塚と同じなのだろうか、と考えてしまう。
彼女の従兄で、同じ部の部長の手塚は何事も時間厳守で遅れてくることなどない。

「気にしてないし、待ってる時間も楽しかったから大丈夫だよ。じゃあ行こうか」

そう言って手を差し出したいけれど、それを出来なかったのは、気恥ずかしいのと、いきなりすぎるかなと思ったからだ。

「うん。なんだかプラネタリウムなんて久しぶりだな〜」

「前に行ったのはいつだい?」

「うーん、去年の秋……だったかな? 国一お祖父様からチケット頂いて国光と行ったの」

ニコニコと話す姿に笑みを返しながらも、内心複雑な気持ちにもなる。
なんだかんだと手塚と倉橋さんは仲が良すぎるのだ。
従兄妹と知らない二年生や三年生ですら、二人は付き合っているのだと思っている。桃や海堂でさえそうだったし。
聞かれれば否定をしていた二人だか、そうそう面と向かって訊く奴はいなかった。
――しかも去年の文化祭では、ベストカップル賞までもらっていたくらいだ。
カップルではないから、と辞退しようとしても2位との票差はあまりにもあって、仕方ないとばかりに受け取った。
しかもそれは翌年の入学案内に二人はモデルとして載っている。

「久しぶりだし、楽しみだな。誘ってくれてありがとう」

「ううん。夏休みだから、混んでるね」

「そうだね、やっぱり普段より人が多いね」

「はぐれないようにしないとね」

その言葉を理由に僕は手を握ると、彼女は驚いていた。

「えっ、あの……」

「ん?」

「……ありがとう…」

「──っ、」

少し頬を赤く染め、笑う彼女を自分のモノに出来たら、という感情が起きる。

「? どうかした、不二くん?」

「なんでもないよ、行こう」

顔が赤くなるのをなんとか抑えて、僕らはプラネタリウムに向かった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


プラネタリウムから出た後、昼食を取ろうと喫茶店に入った。
僕はペペロンチーノを頼み、倉橋さんはオムライスを頼んだ。

「そういえば、手塚の調子はどうなのか聞いてる?」

本当はあまり話題にはしたくないけれど、星の話は喫茶店に入る前にしてしまっている。
彼女が意外にもギリシャ神話が好きなことを知った。

「……うーん…。なんかね、うまくいかないのかな…、国光ってそういう事私には言わないからさ」

苦笑しながら話す倉橋さんに「そっか」とだけ呟く。
大石が関東大会優勝したことを連絡したら「これが始まりだ」と言っていたらしい。
そのことを伝えると、倉橋さんはまた苦笑した。

「目標は全国制覇、ってことなのかな?」

「うん、さすがだね。僕もそう思ったよ」

頷いてみせると、ふふっと笑った後に窓の外を見つめた。
ボソリと呟いた言葉に反応してしまう。

「……もしかしたら焦っているのかもしれないね」

「焦る?」

「うん……きっと焦ってる。自分は間に合うのかどうかって……」

「……」

「会いに行こうかと思ったんだけど……『大丈夫だ』しか言わないんだよね」

心配そうに眼を伏せる倉橋さんの姿と共に手塚に嫉妬してしまう。
一体どれだけ彼女を独占しているのだろうか。

「でも、国光なら大丈夫だって信じてるの。だから待っていられる」

そうだね、手塚を信じよう。と頷くと、微笑んでくれた。
この二人の信頼関係はどのくらいなんだろうか。
僕が二人の間に入れる可能性はどれくらいなのかは分からないけれど、少しずつでもいいから意識してもらえたらいいのに。

「このあと、どうしようか? 映画でも見る?」

「あ、私観たいのがあったんだけど……」

「僕でよかったら付き合うよ、倉橋さん」

「本当に? ありがとう」

嬉しそうに笑う姿にドキドキと胸が高鳴る。
君と過ごせるならば、どんな事でも構わないのだから。

夏休み、全国大会が終わったら、君に気持ちを伝えてみようかな……。
君は受けとめてくれるだろうか?

「じゃあ、練習頑張ってね。全国も応援に行くから」

そう言って君は電車に乗って行ってしまった。
神奈川と東京、この距離がもどかしい。



END

あとがき

インターバルでございました。
不二がヒロインに溺れていやがるっ!と自分でも思わぬ展開でございます。
本編の約束事は、まぁぶっちゃければデートの約束です。
ヒロインはあまりデートと意識してないですが(苦笑)
そして、どーでもいいのか手塚とヒロインのベストカップル賞……お似合いの二人で選ばれてしまったという訳です。
モデルと翌年の入学案内などのモデルです。制服姿などで。


次は立海側の話になるかな?
退院してきた彼と再会でございます。


2009/07/08


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