16
青学の緒戦の相手は、一回戦で千葉の六角中VS沖縄の比嘉中で勝ち上がった、比嘉中だった。
一回戦を見ていなかった彩香は彼らがどんなテニスをするのか、分からなかったが、やたら喧嘩腰な比嘉中が怖いと思えた。
第1試合はリョーくんだった。相手とのあまりの体格の差に驚きつつも、国光の姿を見つけたので近寄った。
「あれ、倉橋さん」
「……こんにちは、不二くん」
驚かそうと後ろから近寄ったけど、振り向いた不二くんによってばれてしまった。
「クスッ…倉橋さんでもお茶目なことするんだね。しかも手塚相手に」
そう言って、不二くんは国光との間にどうぞと言わんばかりに右に一歩ズレた。
「だって不二くん、国光の驚く声ってあんまり聞いたことないんだよ? 顔はなんとか分かるけど」
「…………彩香、越前の応援に来たんだろう」
「あ、うん。そうなんだけど、なんでシングルス3から試合なの?」
「今回は特別ルールで、シングルスとダブルスの交互でやるそうだ」
「そうなんだ。で、どうなの?」
「一気に試合の主導権を握ったようだね」
「すごいね、リョーくん」
見れば1‐0とゲームを取っていた。
「どう、青学の柱の成長ぶりは? 頼もしくなったんじゃない」
不二くんは笑みを浮かべながら話すと、国光は相変わらず無表情で答えた。
「だいぶ、経験を積んだ様だな。だが試合はまだ始まったばかりだ! 全国では一つの油断が命取りとなる」
「そうだね」
「でもやっぱり頼もしいでしょ」
なんだかんだいって嬉しそうなのが分かって口にすれば「……あぁ、そうだな」と答えが返ってきた。
不二くんはほんのちょっと驚いていたけど。
相手のサービスは呆気ないほど簡単に取られてしまった。
あの大きな身体では思えないくらい飛び、強烈なサーブを打ってきた。
「な、に…あれ……」
信じられない強烈なそれに驚きを隠せなかった。
一撃必殺サーブ『ビッグバン』はリョーマのドライブBでも打球が飛ばないらしく、試合の流れはあちらに移ってしまったらしい。
比嘉中の応援が沸き上がっている。
だが、リョーマはあのビッグサーブに対するプレッシャーはないようだった。
試合はタイブレークまでいって、皆がハラハラするなか、味方までも騙していたらしい。威力が衰えたあのサーブを打ち返し、最後はCOOLドライブで逆転勝利、試合は終了した。
「越前、よくやった!」
「全国でのまず一勝だな!」
みんなが激励とばかりにドカドカとリョーマを叩いた。
そんなリョーくんは「先輩たち、負けないで下さいよ」と生意気な口を叩く。
「コイツ、勝ったからって調子に乗りやがって! 危なかったじゃねーか!」
「う」
桃城に蹴られれば、それに笑いが起こった。
「リョーくん」
「彩姉、来てたの?」
「うん。見てたよ、格好良かったよ」
笑ってそう話せば、リョーマは少し照れたように「……Thanks」と呟いた。
「確かに越前がこんなに苦戦するとはな…」
「九州地区優勝は伊達じゃないって事っスね」
「今大会のダークホースと言われているのも頷けるな」
「相手にとって不足無しっスね!」
「だいたい年寄りに平気でボールぶつける様な卑劣な奴等、絶対に許す訳にはいかないよ」
「そうだね。行こう!」
『続いて、ダブルス2の試合を行います。選手は前へ!』
アナウンスと共に不二と河村がコートに入っていったので、彩香はフェンス越しに声をかけた。
「不二くん、河村くん! 頑張ってね!」
「オーケー! 任せときなってベイビー!!」
「うん、頑張るよ。だからちゃんと見ててね、倉橋さん」
バーニング状態でラケットと振り回しながら答える河村と対照的に、不二はにこりと笑いながら、彩香を見つめて言った。
その様子にほんの数名なぜか照れていたが、彩香は手を振って応えるだけだった。
リョーマは「……彩姉、ニブすぎ…」とボソッと呟けば、桃城も「……あぁ」と答えていた。
試合が始まる直前、彩香は河村が言っていたのを気になって、傍らの手塚に訊いた。
「ねぇ、国光」
「なんだ」
「さっき河村くんが言ってたことって、どういうこ──」
「竜崎先生ぇ───っ!!」
試合が始まってすぐに騒めいたと思えば、相手が打ったボールは竜崎先生目がけて飛んでいった、がそれを河村が返したのだった。
「なっ!? 河村くん!」
ベンチに激突しながらも、大丈夫だと言ってコートに戻る姿が目に入る。
『これがキミたちのテニスなのかい? だったら絶対に負ける訳にはいかない!』
『やって貰おうさぁ』
コートにいる不二くんの眸が厳しくなる。
「一回戦の比嘉中対千葉の六角の時、あいつらは六角の監督に先ほど同様ボールをわざとぶつけた、それが先ほどの答えだ」
「じゃあ、少し前のサイレン音って……」
「あぁ、六角の監督が運ばれたのだろう」
「酷い……テニスで、人を傷つけるなんて……」
「あぁ……」
その後、監督同士で少し揉めたりしたが(相手が一方的にだが)、試合は再開された。
不二の三種の返し球『羆落とし』が縮地法とかいうモノで返され、河村の『波動球』もを『飯匙請』というすごい変化をする球を打ってきた。
ピンチになりながらも、波動球を打ちポイントを取っていく。
そして、『大飯匙請』と究極奥義を出したにも関わらず、不二の第4の返し球、『蜻蛉包み』で完璧に返した。
試合は7‐5で不二・河村ペアの勝ちだった
続く第3試合は菊丸くんのシングルス2だった。そのオーダーに誰もが驚きを隠せなかったが、前半の試合はなかなかいい調子だった。
しかし相手は裏手の左利きだったで、試合は追い上げられていく中、信じられない光景が目に映った。
コート上に、菊丸が2人いて1人ダブルスをしていた。だが互いに一歩も譲らずタイブレークに突入し、7‐6で勝利。
3連勝で準々決勝に進出が決まった。
初戦のチームは5試合全部するらしく、続く第4試合、ダブルス1の乾・海堂ペアが6‐3で快勝した。
一勝も出来ずにいた比嘉中の監督は顔に泥を塗られたと言って、監督を降りると言ったが、誰かが監督に向かってボールを放った。
「ひいぃぃ―っ! 相手の部長やべェ―よ!!」
「とんでもねぇ野郎だな、自分んトコの監督に」
「木手 永史郎……この沖縄比嘉中を初の全国へ導いた立て役者だ。部員からの信頼も厚い。九州地区大会では各校のエースの息の根をことこどく止めてきた。その大胆かつ素早く相手の急所をつくプレイスタイルからついた異名は……」
『殺し屋』──そう乾が説明した。その言葉に彩香は心配そうに傍らの手塚を仰ぎ見た。
「……」
「大丈夫だ」
視線に分かったのか、手塚は彩香の頭にぽんと手を置いた。
「気をつけてね」
「あぁ」
そう言って、コートへと降りていった。
頑張れ、と彩香は呟くと頷かれたのは聞こえた訳ではなく、長い付き合いでそれを感じ取ったからだ。
相手の部長、殺し屋と呼ばれている彼はラケットを手塚に突き付け、『忠告』というのをするが手塚は『結構だ』と返した。
始まった試合は凄いラリーだったが、零式ドロップを囮で出すも縮地法というものによりポイントを取られ、ゲームを取られた。
4ゲーム取られ、手塚が「ラケットは……人を傷つける為にあるんじゃない!」と告げるも彼には無意味だった。
『お前には言っても無駄だった様だ』
その言葉に彩香は顔を歪めた。記憶の底にある嫌な記憶を思い出すからだ。
そして手塚の雰囲気が変わる。周りの人は『無我の境地!?』と驚いているが何か違うと不二は言った。
彩香はそれを見て、ああ、もう全力で戦えるのだと確信した。
木手が放つサーブはリョーマが苦戦した『ビッグバン』。だがそれを倍返しで返していく。
サーブだけではない、全ての球種、回転、軌道、破壊力、その全てが倍返しになって。
4‐0だったゲームも5‐4と手塚が逆転した。
『て 手塚ぁ──っ!!』
彼は打ち返す際にラケットで手塚に向けて砂をかけた。
「国光っ!」
試合はまだ続く中、見ていた青学レギュラーは唖然としていた。
「て、手塚部長…正直言って治療中のブランクはキツいと思ってた。それが逆に強くなっているなんて」
誰かがそういった時、背後から声がした。
「たわけが………同じ学校にいて分からんとはな! これが本来の手塚の姿だ!」
三人の姿に周りが騒めき始めた。
「お、おい見ろよ……王者 立海大附属!!」
「それもビッグ3!! 揃い踏みだ!!」
その時、三人の傍に一人の少女がいた。
「彩香〜」
「楓ちゃん」
手を振りながら駆け寄ってくる友人に彩香は笑った。
「そっちは終わったの?」
「うん、だから手塚くんの応援に来たんだ」
「そうなんだ、ありがとう」
笑って答えると楓は「可愛いっ!』と言って抱きついた。
「か、楓ちゃん!」
「楓、倉橋さんが苦しんでいるだろう。離してあげなよ」
「……仕方ないわね」
少し離れた場所で言う幸村に彩香は「ありがとう」と会釈をした。
幸村はフフッといつものように笑うと手塚の試合を見た。
「久々だ……手塚のアレを見るのは『百練自得の極み』」
「ここ3年程、腕の怪我だか何だか知らんが封印していた様だからな」
百錬自得の極み……封印…その言葉に誰もが驚いていた。
「じゃあ今まで俺達が見ていた手塚部長は……」
不意に違う場所から笑い声が響いた。
見ればそこにはアイスブルーを基調としたジャージを着た集団──氷帝学園のレギュラーが揃っていた。
彼らだけではない、辺りを見渡せば黄色のジャージを着た人達もいる。
楓ちゃんが言うには大阪代表『四天宝寺』だという。色々な強豪校が手塚の試合を見に来ていた。
試合はは6‐4にて手塚の勝利となった。
「青学も準々決勝進出だね」
「立海もでしょ」
「もちろん! あ、せっかくだから言ってあげたら?」
ちらりと後ろを向けば、立海三強が揃っていたので、彩香は頷いて彼らに近寄った。
「どうかした? 倉橋さん」
「立海も準々決勝進出なんでしょ、おめでとう」
訊ねてきた幸村に彩香は微笑しながら言うと横から声がした。
「我が立海が準々決勝如き進むのは当た「黙ろうか、真田(初戦で動きが悪かった癖に口を挟むなよ)」……う、うむ…」
「……あ、あの…」
「気にしないでいいよ、倉橋さん。そうだね、互いに順調に勝ち進んで決勝で会うことを楽しみにしているよ──手塚」
「あぁ、そうだな」
その言葉に振り向けば、後ろに国光の姿があった。
「フフ…楽しみにしているよ」
じゃあ、行こうか。と言って幸村たちはコートを後にしたのだった。
次の試合は、ベスト8が出揃い、青学の相手は、関東大会初戦の再現の如く、氷帝だった。
To be Continued
あとがき
すいません、夢じゃないですね。削ろう削ろうと思いながらもドツボにハマってしまい、どうすることも出来ない状態になってます。
かなり読みにくいし、訳分からないかと……もう嫌になってます。
読んでる方はもっと嫌ですよね、申し訳ございません!
2009/08/11