26

テニスの王子様

ガヤガヤと賑わう海原祭。中、高、大と同時開催だからかなりの人混みだ。
こんな形で立海に来ようと思いもしなかったと、ため息をついた。
ピロリン♪と音が鳴り、携帯を見ればここに誘った彩香からだ。

From:倉橋 彩香
Sub:着いた?

教室は3‐Cだから間違えないでね。


‐‐‐END‐‐‐


やれやれと思いながら、手塚は顔を上げた。

「手塚」

「不二、どこに行ってたんだ」

「立海は広いからさ、エリア別の紙をもらって来たんだ。倉橋さんたちの中学エリアは北門の方みたいだよ」

「そうか、すまなかったな」

「クスッ…気にしなくてもいいよ」

いつものように笑う不二を見ながら、行くか。と目的地へと向かった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


メールを貰う前から行こうと考えていた。
そして手塚に誘われれば、即決したのは言うまでもない。
倉橋さんに会えるのであれば、裕太が帰って来ようが今回ばかりは気にしない。
だって、アレだよ? 倉橋さんの赤ずきん姿が見れるなんて今後あるはずがないじゃないか。

不二はそんなことを思いながら、手塚と共に、彩香のクラスがやっているコスプレ喫茶という名のメルヘン喫茶へと向かったのだった。
周りが多少騒がしかったが二人は気にもせずに歩いていく。王者立海テニス部を敗った青学の部長と天才と呼ばれる二人がいるのを周りが放っておくはずがなかった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


喫茶店は朝から大盛況だった。それもそのはず、校内で一番モテる男子生徒が、コスプレをしているのだから、一目見ようと女生徒が押し寄せて来ている。

「きゃああぁぁ、幸村くーん」

「カッコいいーっ!」

「あぁん、私を攫って〜」

あまりの黄色い声に彩香は呆気に取られ、楓は頭が痛いというようにこめかみを揉んでいた。

「す、スゴい人気なんだね…」

「はぁ、だから出なくてもいいって言ったのに……」

幸村がいるせいか、居座る女生徒が多すぎて、客足が回らないのだ。

「でも、確かにカッコいいよね」

そう話す彩香にもう一度幸村を眺める。一見女性とも見まごう容姿を持つ幸村だが、今回の衣装は海賊だった。確かに似合うし、カッコいいが……攫ってってなんなんだろう。
そんなことを考えていると廊下の方でもキャーと悲鳴が上がる。
なんだろうと首を傾げれば、ドアが開き、2人の男性が入って来た。

「国光、不二くん」

「おはよう。彩香、沢渡も」

「クスッ、可愛いらしい赤ずきんだね。倉橋さん」

「あ、ありがとう…」

えへへ、と照れる彩香は確かに可愛い。なんたって赤ずきんのコスプレをしているからだ。ちなみに私はチャイナドレス……微妙だ。
そして、クラスの男女共がこちらに視線を向けた。
ざわざわと一層に騒がしくなるのはみんなして、彩香、手塚くん、不二くんを見ている。

「沢渡も夏祭り以来だな、あの時は彩香が迷惑をかけてすまなかった」

「ううん! 気にしないでいいよ」

いきなり手塚くんに話し掛けられてびっくりしたが、「そうか、」柔らかな眸にドキリとしてしまう。

「似合うな」

「え?」

「その格好、似合うと思うぞ」

「っ、あ、ありがと…」

まさかの一言に顔が熱くなるのが分かった。手塚くんからそんな言葉が出るなんて……。

「国光、何か飲む?」

「なにがあるんだ?」

「んーとね……」

お礼を言えないままだったけど、顔が熱くて参ってしまった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


女子に囲まれながらも、ついつい倉橋さんに視線を向けてしまう。
赤ずきんのコスプレ……可愛い過ぎるなんて思ってしまう。うん、狼じゃないけど、食べちゃいたい。
そんなことを考えていると廊下が騒がしくなり、現れた2人に驚いた。手塚はともかく不二も一緒だなんて…。

「ねぇ、アレって青学の不二くんじゃない?」

「もう1人は手塚くんよね?」

「幸村くんに会いに来たとか?」

「やだ、カッコいい〜」

「え、でもなんであの子のところに?」

女子の声が聞こえる中、彼らは一直線に倉橋さんと楓のところへ。
なにやら会話をしていた楓の顔が赤いけど……ふーん、面白そうだね。
倉橋さんも……なんか顔が赤い…………。
面白くなくて、テニス部部長として挨拶しに女子たちから離れた。
ようやく解放される、倉橋さんの傍にいける、それにホッとしてしまう。

「やぁ、いらっしゃい。手塚、不二」

「幸村…………似合うな」

「……フフッ、ありがとう」

意外なことに手塚に言われてしまった。

「でも本当に似合うよね、カッコいいと思う」

「ありがとう……倉橋さんも物凄く可愛いよ」

「も、もう! 幸村くんまでお世辞なんていいのに!」

カッコいいだなんて言われたことが嬉しくて、恥ずかしくて、つい口に出せば頬を赤く染める倉橋さん。
でも俺「まで」ということは…。

「だから言ったじゃないか、可愛いって」

「う〜〜…言われ慣れないから止めて〜」

やはり不二に言われたようだが、赤く染まったままの顔で両耳を押さえて話す倉橋さんが本当に可愛らしかった。

『みなさん、当メルヘン喫茶にようこそおいで下さいました』

いきなりのマイク音に誰もがそちらを見れば、クラス委員長が教壇の上に立っていた。

『これより、ゲームを始めたいと思います!』

ゲーム?そんなのは初耳だ。知ってた?と倉橋さんと楓を見れば、首を横に振られた。
黒板には『○○ちゃんを探せ!』とよく分からない文字が……いったいなんなんだ?
疑問をよそに委員長が話を進めていく。

『ゲーム内容ですが、1時間内に人を探してもらいます。1番最初に捕まえ連れて来た方には、1日デート権をあげちゃいます!』

おお〜!と歓声が上がる。1日デート権とやらはいつでもOKなものらしいが、危なくないのか?
そんな風に考えていると

『では探して頂く子たちを紹介します! まずは不思議の国のアリスちゃん、そして赤ずきんちゃんでーす!』

「「「「……はぁっ!?」」」」

「…………」

「「うおおぉぉぉ!」」

いきなりの発言に倉橋さん、楓、不二そして俺も声を上げるがそれはいつの間にいたのか分からないが、男たちの声でかき消された。

「え? えっ?」

「はいはーい、彩香ちゃんはこっちこっち〜」

訳が分からないとキョロキョロする倉橋さんをクラスの女子が背中を押して、舞台ではないが教壇に立たせた。
隣には不思議の国のアリスの衣装を纏う、黄口さんがいた。

「はい、見つけたもの勝ちです! アリスや赤ずきんとデートしたいかーっ?」

「「「うおおぉぉぉ!」」」

「では参加される方は番号札を渡しますので、胸に着けて下さい。彼女たちが逃げてから30分後に開始です!」

張り切る委員長、参加する面々に眼を見張る。こんな話聞いてないとばかりに倉橋さんも楓も眼を丸くしている。
黄口さんはとっくに教室から抜け出し、倉橋さんは不安気にこちらを見ていた。
これはなんとかしなくては、見知らぬ野郎にみすみす倉橋さんとのデート権を与えてなるものか!

「彩香!」

「か、楓ちゃん、な、なんなの?」

「いいから、まず逃げ切ること考えな!」

「う、うん……」

「倉橋さん、大丈夫だよ。僕がなんとかするから」

不二がそんなことを言いだすから、俺も負けじと言った。

「俺もなんとかするから、とりあえず逃げて」

「どこかに隠れるといい、気をつけろよ」

「不二くん、幸村くん……国光もありがとう」

そう言って倉橋さんは教室から出て行った。
多分、あの盛り上がりから中止を求めても無理だろう、ならば残るはゲームに参加することだ。
だけど、委員長には後でしっかり言い聞かせないといけないね。

「げ、田代もいるんじゃん」

田代……蓮二が言っていた倉橋さんに付きまとうヤツか……。
そんなヤツに負ける訳にはいかないな、そして、不二にも。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


いきなりの展開に倉橋さんは動揺していたけど、まずはここから逃げて身を隠さなくてはならない。
せっかくのイベント、こうなったら参加をして一番に彼女を見つけ出さなくては。
手塚は参加しないようだ。ならば僕が見つけてデート権も貰ってしまおう。

「委員長、どういうことなんだい?」

「そうよ! なんなのよ、この『○○ちゃんを探せ!』ってのは!」

「いやぁ、突発でやれば盛り上がるかと思っ……ゆゆゆゆき、むら?」

「そういう勝手なこと、されちゃ、困るんだよね」

「わわわ、悪かった! 悪かったよ…」

あの司会をしていたのはどうやらクラス委員長らしい。
なんだかビクビクと怯えているが、そんなことより。

「すみません、僕にも番号札貰えるかな」

「き、君、参加者? わ、分かった。悪いけど幸村、この人に番号札を「俺にも貰えるかい?」……え、幸村も?」

「あぁ。あんなに訳が分からない状態の倉橋さんを放っておけないからね」

参加する旨を伝えれば、幸村も参加すると言い出した。
ふーん、やはりというか、予想はついてたよ。
負ける訳にはいかないよ、こればかりはね。

こうして、『○○ちゃんを探せ!』の参加者が集まった。
ゲームスタートまであと10分弱。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


いきなりのクラスイベントに驚きながら、教室から離れた。
1時間とにかく誰にも掴まらなければいいんだ……でも、この格好目立つんだよね。
一緒にいた黄口さんもアリスの格好だから目立つだろうけど……ポケットから携帯を取り出して時間を確認した。
彼らがスタートするまであと15分、どこに隠れようかと考えていたら、ポンっと肩を叩かれた。

「えっ…「きゃああぁあ、彩香かっわいいーっ! 赤ずきんちゃんじゃん!」…紫ちゃん?」

振り向いた瞬間にムギュっと抱きしめられ、驚けばそこには紫ちゃんと仁志…じゃなくて仁王くんの姿。

「紫、離れんしゃい。倉橋さんが驚いとる」

「だって可愛いから仕方ないの!」

「ゆ、紫ちゃん! 助けて!!」

「「は?」」

そう言えば、2人は一緒に声を出していた。
とりあえず、1時間ちょっと逃げ切らなくては!




To be Continued


あとがき

アホな展開になってすみません。しかももう海原祭って……。
メルヘン喫茶なのに友人楓がチャイナドレスって……まぁ、どうとでもなるってことで(苦笑)
そしていきなりのイベント。喫茶店なのにイベント……どんな展開でしょうね。手塚、空気だし(笑)
いや、ここで手塚が参加したら彼があっという間に見つけてしまうのでね、うん。
幸村と不二に任せることにした手塚は、楓とお話してることでしょう。

きっとあっという間に終わると思います。
感想頂けたら嬉しいです。


2009/09/30


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