33

テニスの王子様

明後日からテストで、今は部活停止中にも関わらずテニス部レギュラーたちは部室に呼ばれていた。

「一体、なんの用なのよ。幸村」

「フフ、揃ったようだね。実はテストが終わり次第次の日から合同合宿を行う予定だ」

その突拍子もない発言に誰もが「は?」と首を傾げた。
部員の前に並ぶ立海三強こと幸村、真田、柳は驚いた顔などしていない。

「ゆ、幸村くん? いきなりなんだって合同合宿?」

「フフ、昨日帰りがけに氷帝の跡部がやってきてね、書類を置いていったのさ」

「合同合宿はテストが終わった翌々日から大型連休を使っての三泊四日だ」

そういって、参謀の柳がコピーしたプリントと皆に回す。

「ちょ、合同合宿って5校!? うちと氷帝、青学、不動峰……四天宝寺!?」

「ああ。だから紫、みんなのサポートをよろしく頼むよ」

「ちょー待った! 無理無理、ぜーったい無理に決まってるじゃない! 一体何人いると思ってんのよ!」

「青学から助っ人が2人、不動峰らは1人入る……お前を含め4人だ」

「いやいやいや、4人でも厳しいわよ! 柳!」

紫がキャンキャンと反論を上げる中、周りは事の成り行きを眺めていた。
幸村も確かに厳しいかもな……と考えていると、仁王が提案した。

「なら、臨時でマネージャーを増やせばいいんじゃないかのう?」

「はぁ? 増やすったってどうせ部員目当てでしか来ないわよ! 役に立たないのならいらないわ!」

「ふむ……いい考えかもしれんな」

紫の反論はもっともでかつてマネージャーを募集したが、見事部員目当ての役に立たない女子ばかり。
他のレギュラーたちも頷いていたが、顎に手を当てていた柳が仁王の案に同意した。

「蓮二、いくらなんでも無理だと思うけど?」

「そんなことはない。今回の合宿は合同だ。それを踏まえて適切な人間がいる」

柳はそう言って、フッと笑った。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


テスト最終日、彩香と楓は紫に一緒に弁当を食べようと呼ばれ、屋上に来てきた。

「「臨時マネージャー?」」

「そう。明後日から合同合宿があるんだけど人手が足りなくて……手伝ってくれない?」

両手を合わせてお願いしてくる紫に彩香も楓も顔を見合わせた。
いきなり言われても困る。
後ろの方にはレギュラー陣が並んでこちらを見ている。

「そんな、いきなり言われても……」

「そうね。急すぎるし……今までそんなことなかったじゃない、紫」

「そ、それが、今回は5校合同の合宿なのよ…」

「ご、5校合同!? だ、ダメダメ! 男子ばっかのところに彩香を連れて行けないわよ!」

紫の発言に楓は彩香をギュッと抱きしめて、拒否をした。

「えぇ〜、なんで? 今回は青学も参加だし……ダメ? 彩香〜」

紫は彩香に向かって手を握り、聞いた。
彩香は苦笑いをするしかなく、後ろにいるレギュラーの方を見れば、みんな切望するかのように見ていた。

「え、えっと……きっと行っても役に立たないと思うし…」

「そんなことない! 彩香、料理上手じゃない、居てくれると助かるのよ!」

それにレギュラー陣はうんうんと頷いている。楓はその光景に呆れてしまったようだ。

「……紫って、料理ダメだったっけね…」

「そういう訳で、彩香、楓、お願いっ!」

そんな風に頼まれたら、断ることも出来なかった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


紫の必死の願いに折れたのか倉橋さんは楓を見て、苦笑するしかなかった。

「はぁ〜、こうなったら仕方ないわね。彩香」

「ごめんね、楓ちゃん」

「んー、まぁ、紫の頼みだしね。彩香はとりあえず手塚くんに話しておいた方がいいよ」

「うん、電話しておくよ」

なんで楓はあんな風に倉橋さんを男子に近付けないようにしているのか、俺の他にも柳たちが気になっているみたいだ。
とりあえず、倉橋さんと楓は臨時マネージャーをオーケーしてくれて、かなりホッとした。
そして嬉しさが込み上げる。だって泊まり掛けで四日間も倉橋さんと一緒にいられるかと思うとね。

「ありがとう。倉橋さん、楓、とても助かるよ」

「幸村くん……あまり役に立たないと思うけど、よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げる倉橋さんに「お願いしたのはこっちだよ」と言ってお礼を言えば、笑ってくれた。
その様子を見ていた楓は「んー…」と何かを考えてる様子だ。

「楓? どうかしたのかい」

「楓ちゃん?」

「ちょっと幸村に話あるから、彩香は紫のとこに行ってて」

「う、うん…?」

倉橋さんが紫の方へ行くのを見てから、楓はこちらを向いた。
「ちょっと、こっち」とレギュラーたちから少し離れたところへ移動すると、楓が口を開いた。

「アンタってさ、彩香のこと好きでしょ」

それは疑問というよりは確認に近い言い方だ。
意外に分かりやすかったかな、と思いながら、楓を見つめた。

「いきなりだね、楓」

「否定しないところを見るとやっぱりか」

「肯定もしてなかったけど? まぁ、好きだけどね」

今更だね、と告げれば確かに。と答えが返ってくる。
うーん、周りにはバレバレか……真田ですら気づいたみたいだしな。

「彩香のこと、好きなら合宿中守りなさいよ」

「……え?」

考え事していれば言われた言葉に一瞬、意味が分からなかった。

「彩香、男子が苦手なのよ」

「……普通だと思うけど」

ちらりと彼女を見れば、紫の隣にいながら蓮二やジャッカルと話している。

「気を遣っているのと、アレらは慣れかしらね。ただ合同合宿っていうからには男子は多いし、だいたいどのチームも学校毎に行動するでしょう、だからよ」

『彩香は男性数人に囲まれるのが苦手、というより怖いらしくて…』

楓の言葉とともに前に手塚が言っていたことを思い出す。

「青学はもとより、立海の連中も慣れて来たから彩香も警戒は解いているけど……。だから氷帝と不動峰、四天宝寺から彩香を守りなさいよ、好きならね」

「……前に手塚も言っていたけど、倉橋さんはなんで集団の男が苦手なんだ?」

「……それは、私の口からは言えない。手塚くんに聞けばいいよ、教えてくれるかは別として。……じゃあ、明後日学校に集合すればいいのね?」

「え、あ、あぁ……。本当は明日もミーティングに参加して欲しいけど……」

ちらりと倉橋さんを眺めて

「下手に臨時マネージャーのことがばれたら大変だから、明日はいいよ」

「そうね、私や紫は慣れたけど彩香にはキツいだろうから……(また傷つけるわけにはいかないし)じゃあ、そういう事で」


ボソッと楓が何かを呟いたが聞き取れなかった。
彼女は手をひらひらさせると倉橋さんのところへ戻り、紫と話をしていた。

幸村はそれを見ながら、彩香にどんな過去があったのだろうかと気になったのだった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


合宿参加を決めたのは、紫ちゃんたちに頼まれたのと、合宿に青学――国光がいるからだった。
帰宅してからお母さんたちに合宿の事を言えば、国光がいるなら大丈夫だろうという話になった。
とりあえず、国光に電話しなくちゃ。

 プルル…

呼び出し音を聞きながら、なんて言おうかなどと考えていると本人が出た。


『もしもし…』

「あ、彩香です」

『どうかしたのか?』

「明後日から合同合宿なんだってね」

『あぁ、そうだが』

「私も参加することになったの」

『……は?』


珍しく驚いているような声音に思わず笑ってしまった。きっと少し眉間に皺か寄ってるかもしれない。


『どういうことだ?』


それに対して、彩香は紫に頼まれたことなどを話したのだった。


「楓ちゃんもいるし、大丈夫だよ」

『ならいいが……』

「そんな心配しないで。私は大丈夫だから」

『……彩香がそういうのなら、何かあったら直ぐに言えよ』


相変わらず、心配性なのかそんなことを言ってくる国光に苦笑してしまう。


「ありがとう、国光」

『では合宿で会おう』

「うん、よろしくお願いします。青学の部長さん」

『あぁ、よろしく』


それからはテストの出来などを話してから電話を切った。
ふと窓辺に飾ってあるサボテンを眺め、ため息をついた。


「……答えなきゃ…」


答えなんて分かっている。
今の私には好きな人がいない。
だからといって、付き合うなんてことはないのだから。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


彩香からの電話を切り、俺はメールを送ることにした。
参加するかは未だに不明だが、彩香は何も言われずに飛び立った越前のことを気にしていた。
合宿の詳細は既に大石あたりがメールを送っているだろう。


「他の連中には明日話すか」


不二あたりがどう出るか、気になるが。
彩香に何もなければいいと思うだけだった。



To be Continued



あとがき

なんかグダグダとしていてツマラナイですね。すみません。
次回は合宿……テキトーになります。
合宿ならではのイベントなどネタの協力を願いたいです(苦笑)


2009/12/07


-38-

青空 top