彼の人-カノヒト-
「んっ……?」
ムウは目を覚ますと、隣で寝ていたマリューを手探りで探した。
ふと、起き上がると机に向かって何か考えている風だった。
ムウは、そっと後ろに立ち声をかけた。
「……マリュー、さん?」
ムウの声にびくっとしてマリューは、ロケットをパチンと閉じた。
「……少佐…起きてたんですか?」
「…あぁ……どうかしたのか?」
振り返ったマリューの瞳には薄ら涙がたまっていた。
ムウは、それを指先で拭い取るとマリューは、少し哀しげな顔をした。
「…いいえ……何でもありませんわ…」
「……それ、誰かの写真が入ってるんだろ……大事な人……?」
ムウの言葉にマリューは、強ばった。しばしムウを見つめた後
「…………えぇ……昔の…」
そう呟くと、マリューは小さな声で「ごめんなさい…」と謝った。
「………大事な人だったんだろ? なんで謝る?」
ムウは、優しくマリューを抱きよせて言うとマリューはポロポロと涙を零した。
「…大事な…人だったんです…とても大事な……ラルフはっ…」
「! ラルフ……ラルフ・アンクレットか!?」
ムウの言葉に、その名前に、マリューは驚き顔を上げた。上がる声が震える。
「ご存じ、なんですか…?」
「…あぁ…俺の二期上の先輩だ………そうか…彼が…」
ムウは呟くと、昔を思い出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『よう、ムウ・ラ・フラガ! 今日も凄かったな、お前は!!』
バンっと背中を叩かれ、ムウは苦笑いをしながら二期上のラルフ・アンクレットを見た。
『ラルフ大尉! 痛いですよっ!』
ムウの小言も聞かず、ラルフと呼ばれた男は、構わずバシバシと肩を叩いてきた。
『しっかし、本当、お前は凄いな! 大したルーキーだよ!』
『あ、ありがとうございます。でも大尉が後援してくれたからですよ!』
殊勝にもムウは礼を述べるが、男は手を振りながら
『そんな事はないさっ! お前の実力は大したモノだよ!!………おっと…』
――カツン
彼の手元から何かが落ちた。それをムウは拾うと、ラルフに手渡した。
『あぁ、悪いな。サンキュ』
『家族の写真ですか?』
『ん? それもあるけどな…大事な俺の女神の写真が入っているんだよ♪』
少し整った顔が優しい笑みを浮かべるのを見て、ムウは中身がどんな相手が分かった。
『恋人でありますか?』
ムウは、そう聞くとラルフは口元を弛ませながら
『まぁな♪可愛くて美人だぞ〜俺の彼女は。歳は…お前の2コ下だが、優秀なんだ。休みになったら会いに行かなきゃな……彼女に…』
そう話す彼は、とても愛おしそうに話した。だが、次の休暇の頃には、彼の姿を見ることはなくなった。――帰らぬ人となったのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
マリューは、ずっとムウを見つめていたが、それに気付いたのかムウはそっと、抱きしめた。
「……少佐…?」
「彼は…ラルフはとてもいい人だったよ。気がよくて、頼りになり人だった。………だから、俺が彼の分も君を守るよ」
その言葉を聞くと、マリューはムウを顔を見上げた瞬間、口唇が重なった。
「………いいんですか?……あの…」
「いいんだよ。彼をすぐ忘れてしまう様な人だったら俺は夢中にならないよ」
どこかふざけている様で、しかし真剣に話した。
「………ありがとう…」
マリューは瞳を閉じ、ムウの胸に顔を埋めた。
END
あとがき
久々のムウマリュ新作ですvV
ってか、去年のネタ帳にあった話なんですが…
ちなみに時間軸は、オーブから脱出して宇宙に上がったあたりですかね?
では、ありがとうございましたvV
初稿:2004/11/15
改稿:2007/07/15
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