勘違いの真実

GUNDAM SEED

「頼みますよ〜少佐〜」

「でもなぁ〜そういうことは、直接本人に…」


ムウは困り果てていた。クルーの一人に無理なお願いコトをされていたからだ。


「聞けないから、少佐に頼んでるんですよぉ〜お願いしますってぇ〜」

「あー、ん〜…まぁ、聞いてみるだけならなぁ〜」

「本当ですか!? ありがとうございます♪」


頬を掻きつつ返事をすると、その彼はガシっと手を握り、握手をすると嬉々として自分の持ち場に戻っていった。
その後ろ姿を見ながらムウはため息をついた。


「やれやれ、参ったねぇ…」


ボソリと呟き、頭を掻いたのだった。
彼の頼み事は、この白亜の艦を取り仕切るマリュー・ラミアス艦長の事だった。


(艦長に好きな人いるか? なーんて聞いてくれ。だなんて無茶なお願いだよなぁ〜はぁ……大体あの艦長が素直に答えてくれるかねぇ〜?)


ブツブツとため息混じりに考えて、ムウは仕方なしに艦長室に足を向けたのだった。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



その頃、マリューは休憩時間を自室でもある艦長室で寛いでいた。
コーヒーを片手に報告書に目をやりっていると、不意に来客を知らせるブザーがなった。
誰だろう?と考えながらモニターで対応した。
そこに映っていたのは地球に降りると同時に少佐の階級へと上がった、なにかと頼りにしている同僚の姿だった。


『あー、えっとフラガだが艦長いる?』

「はい、なんですか?少佐」

『あ――っと、ちょっと聞きたいコトがあるんだけど少しいいかな?』

「? どうぞ。」


その物言いに小首を傾げながらもドアを開けたのだった。


――パシュン


「悪いな、せっかくの休憩時間に…」

「いいえ、それより何かあったのですか? 聞きたいコトとは?」



何かあったのか、と不思議そうな表情をしながらムウを見上げてくる。


「あ〜…まぁ、軽い気持ちで聞いて欲しいんだけど………その艦長って…好きな人とかっていたりする?」


なんで俺がこんなことを……と思いながら聞いてみると、彼女は呆然というかなんともいえない表情をしてじっと見上げていた。


「……………」

「こ、答えなくないなら、別に……」


何も言わずにいる姿に妙に焦ってしまう。
だが、考え込むように口許に手を当て視線を彷徨わせてから口を開いた。


「………それ」

「えっ?」

「どうして…聞くんです?」

「えーっと……どう…してって……」

「…あ、の………」

「あ――! あのっ、あのな、実は―――」


マリューの問い掛けに、ムウの中で警鐘がなり、心臓が跳ねた。

――ドクンっ…!


聞きたいような聞きたくないような感覚に、焦って理由を述べようとしたその時


『第二戦闘配備発令! 繰り返す、第二戦闘配備発令!!――――』

「「!?」」

「あー、話はまた後で!!」


アラームがなり、二人は急いで持ち場に走ったのだった。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



あれから三日が経ち、この前のクルーとムウは食堂で一緒になった。


「あ、少佐お疲れさまです。」

「あぁ、お疲れさん。………ん、なんだ?」


真向かいに座り、そわそわしているクルーにムウは不思議そうに訊ねた。
彼は気恥ずかそうにやや赤くなりながら聞いてきた。


「い、いえ、この前のコト、艦長に聞いていただけたかなぁ〜なんて思いまして……」


ムウは記憶を廻らせると、あの時のコトを思い出した。


「えっ!…あー、アレね……悪い、まだなんだ…」

「そうですか……すいません。―――って、艦長!?」

「えっ?」


彼がしゅんとした後、顔を上げるとムウの後ろに艦長がいるコトに気付き慌てた。
えっ!?と驚き、ムウもすぐに振り向いた。その行動にマリューは、驚いた顔をしていた。


「…びっくりした。どうかしたの?」

「いいえっ! あ、俺、そろそろ交代の時間なので、失礼します」

「ご苦労さま」


取って付けた様な理由を述べて、彼はそそくさと食堂から出ていった。
逃げた、な。と去っていく姿を見送りムウは頭を掻いた。


(もしかして…聞かれたかな?)


そんな風に思いながら、振り返るとニコリと笑みを浮かべてファイルを出してくる彼女がいた。


「フラガ少佐もお疲れさまです。あの…これ報告書お願いしますね」


だが、その笑顔はムウには何か違和感さを感じた。


「あ…ああ……?」

(なんか…いつもと様子が――)


違うし、どこかよそよそしい。と考えている間にも、話は終わったとばかりに踵を返そうとしている姿が目に入る。


「では、お休み中すみませんでした」


当たり障りのない事を言って食堂を出ていくマリューをムウは、声をかけた。


「か、艦長っ?」

「なんです?」


くるりと振り向く彼女を呼び止めたもののなんと言っていいのか、言葉がうまく出てこない。


「――い、いや、その、……なんだ。えーっと……」


ムウの様子にマリューは、少し目を逸らしながら答えたのだった。


「……この前のコトでしたら、好きな人なんていないとそうおっしゃって下さい」


ムウは額に手をあてた。やはり聞かれていたのか。
そして、再び彼女を見ると――どこか震えている様に見える。


「……艦長?」

「……私、馬鹿みたいですね…」


呟かれた科白は耳に届くか届かないかのような小さな声だった。
え?と聞き返す間もなく、彼女はぱたぱたと走り去っていった。


「おい、艦長っ……あ〜、くそっ!」


ムウはガシガシと頭を掻いた後、わからないまま身体は彼女を追い掛けていた。


――なんだよっ! これは……


この前の彼女の言葉が蘇る。
ほんの少し頬を染めて言ったあの言葉

『そういう意味って思っても……』

そして、胸につかえるこの苛々はなんだ。と思いながら走っていた。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



――パシュンっ!

「…はっ、はぁ……うっ…」


マリューは自室でもある艦長室に走り戻ると、そのまま壁にもたれズリズリと下がった。
両手で口許を覆い、自然に洩れる声を抑えた。

(…馬鹿みたい……何を夢みていたんだろう……一人で、勝手に浮かれて……本当、馬鹿みたい……)


情けない……と考えていると急にドアが開きムウが入ってきた。


「艦長っ! 入るぞっ! さっきのコトだけど…」

「っし、少佐っ! か、勝手に入ってこないで下さい!!」

「……あのなぁ、艦長…」


マリューはムウから目を逸らし、自嘲的に笑った。


「…バカみたいですよね……そんな訳ないのに…勝手に勘違いして、自惚れて…」

「……………」


そう話すマリューにムウは黙っていた。


「……出ていって下さい」

「艦長…確かに俺は、頼まれたけど…」


そっぽ向いているマリューの腕を掴み、自分に向かせるとマリューの瞳から涙が零れていた。

(…何も言わないで…これ以上辱めないで…)

それを見て、ムウは小さく息を吸った。


「…艦長……」

「……放して…下さい。……可笑しかったのでしょう、嘲笑って下さったって――――!?」


次の瞬間、マリューはムウの腕の中にいた。


「―――いいんだな!? 俺は自惚れても…そういう意味だと思っても…いいんだな!!」


ムウの言葉に、マリューは驚き顔を上げた。


「…どうして?…少佐には関係ないはずでは…」

「っ関係なくないさ! 気になって…気になって……俺は艦長のコトが…マリュー・ラミアスが好きなんだ…」


(あぁ…そうだ。俺は気になっていたんだ。そっか、こんなにも簡単なんだ……言葉にすれば、こんなにも分かり切った答えが出てきた…)


すっぽりと腕の中に入るマリューを抱きしめたまま、ムウは言葉を紡いだ。
がくがくと少し震える彼女をしっかりと支える。


「…い、今…」

「何度でも聴かせる。俺はマリュー・ラミアスが好きだって」


真摯な眼差しを向ければ、マリューは真っ赤になる。


「…本当…に…? じゃあ…私…自惚れても…」

「自惚れて下さい。じゃなきゃ、俺が困るよ」


愉しそうに笑うと、ムウはマリューの涙を拭い、口唇に深い口付けを落とした。


「…んんっ……」


二人、見つめあうとクスリと笑った。





END




おまけ

翌朝、ムウがマリューの部屋から出てくるのを何人かのクルーが目撃した。
そして、それを見せ付けるかのようにムウは濃厚なキスシーンを繰り広げたとか。
それを目撃したクルーの中には、ムウにお願い事をしていた彼の姿もあったらしい。
彼の淡い恋心は見事に砕かれたのだった。

「悪いな、こればっかは譲れそうにないんでね!」





あとがき


なんだかメロドラマ?
こんなの考えてた自分がおもしろい。
でも、マリューさん自覚してるのに、この話ではムウは自覚してないんだなぁ〜TVだと、ラブビーム(?)だしまくりなのに


初槁:2003/07
改稿:2007/06/30


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