見守る人
オーブの碧く美しい海が一望できる丘に、その石碑は建っていた。
『ムウ・ラ・フラガ』
その名を刻んだ石碑をゆっくりと手でなぞり、眺める女性が一人立っていた。
まるで、何かを語りかける様にそっと優しい眼差しで……。
「どうかしたのかね?」
急な問い掛けにハッとしてマリューは振り返った。
「バルトフェルドさん。………びっくりしたわ、いきなり声をかけて来るから…」
「おや、それは悪いコトをしたね。今日はチビは?」
「その辺にいるはずですわ」
ふふっと微笑むマリューの顔を見ながら、バルトフェルドは口を開く。
「そうかね………あの話、まだ気が進まないかね?」
フッとマリューの顔が曇る。
そんな顔を眺めバルトフェルドはやれやれと嘆じながら口を開いた。
「別に、君を口説いてる訳じゃないさ。ただ君は無茶をしすぎてる。傷も癒えてはいない。が、それなのにたった一人で子供を育てるのは無理だ。と言っているんだ」
「…私は平気です……心の傷はあの子が癒してくれています…大丈夫よ…」
「何が大丈夫なものかね?先日も倒れたじゃないか、あの子は泣きながら僕に電話を寄越した。震えた声で『………ママを助けて…』と………マリュー、僕の屋敷に来たまえ」
「バルトフェルドさん…でも、私はムウの事を……」
マリューは、俯きながら言葉を濁す。
バルトフェルドは笑うと
「マリュー、何か勘違いをしていないかね?君を屋敷に迎えたからといっても僕達の関係は、今と変わることはなく今まで同様いい友人だ。僕はフラガにはならんし、君もアイシャにはなれん。互いに愛する者は別にいる」
その言葉に偽りはなく信用できる…がマリューは渋る。
「………でも、そこまでしてもらっては迷惑をかけるだけだわ……」
「では、フラガが帰ってくるまで世話をしよう」
「───バルトフェルド!?」
その言葉にマリューは声を抗えた。
「…でも、それではあまりにも図々しいわ…」
バルトフェルドは、静かにフラガのだという石碑を眺めた。
「とてもじゃないが…僕はまだフラガが死んでいるとは思っていないのでね。彼はいい友人だったからね、ほんの少しの間だったがあんなに気の合う奴はいないからね。それでだろうか、フラガが死んだとは思えないのだよ」
バルトフェルドの言葉に、マリューは微かに頷く。
例え、目の前で起きた爆発を見てたとしても『不可能を可能にする男』だからだと思っているから。
バルトフェルドはマリューを一瞥すると、また石碑を眺めた。
そう、君が死んだなんて思えない。何故だかそんな気がする………多分、自分とどこか似ているからだろうか?
そう、自分と似ているから、中々死にそうにないと思っている。どこかそんな風に思わせる人間だったから…だからだろうか。
フラガが愛したマリューの面倒を…自分が持つコトが出来ない子供という存在の面倒をみたいと思うのは……。
ただ、そんな理由なのだ。世話がしたいのは。
そう考えていると
「あ〜、バルトフェルドのおじちゃん!!」
丘の下から、ムウとマリューの子・ノアが息せきかけて走ってきた。
「やぁ、ノア。元気だったかい?」
ノアはバルトフェルドに嬉しそうに抱きついた。
「うん!元気だよ!!」
ノアはこの父親みたいで頼れるバルトフェルドに懐いていた。
「こらっ!!ノア、危ないからダメでしょ!!」
マリューが注意しても、抱きついたままでいるノアをバルトフェルドは頭を撫でてやり
「ハハハ、ノア?これからお茶でもするか?」
「ホント!?やったぁぁぁ〜ママ、行こう?」
ノアは嬉しそうにマリューの腕を引っ張った。
マリューはノアの笑顔を見てバルトフェルドに礼をいった。
「ありがとう、いつもすみません」
「な〜に、フラガが帰って来るまでの間さ。しかし、帰ってきたら恨まれそうだな。ノアにこんなに懐かれていては……」
マリューはその言葉を聞くと、一瞬キョトンとしたがすぐにクスっと笑うと石碑を眺めた。
「ですって、早く戻ってこなくちゃね……」
呟くと優しく笑った。
バルトフェルドも石碑を眺めた。
(早く戻って来たまえ。彼女達の為に………それまでは君の代わりに面倒くらい見ておくから…)
そう思うと裾をノアに引っ張られた。
「早く、行こうよ。バルトフェルドおじちゃん」
「あぁ、そうだな。美味いコーヒーをブレンドしたんだ」
「えぇ〜、パフェがいい〜〜!!」
そんな会話をしながら、丘をあとにした。
END
あとがき
これは「愛しい貴方へ」を書いた後に頭の中にずっとあったネタでした。
ムウがでてきてませんが、ムウマリュです!!
ムウは生きてます!生きてますとも!!
信じてまってます。ですからマリューさんも待っているのです!!
因みに最初、見守る人はキサカにしようかと思いましたが、やはりココは似たもの同士というコトで
アンディに☆(虎と鷹だし/←意味不明)
'03/10
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