Delivery Panic

GUNDAM SEED

麗らかなある日。フラガ宅にキラとラクスが来ていた。

「もうすぐですわね、マリューさん」

「そうね、来週あたりかしら」

ラクスが両手をあわせ、ウキウキしながら話し掛けると、マリューもにっこり笑って返した。

「それにしても大きなお腹ですよね…」

キラはびっくりしながら、マリューのお腹を見た。お腹をさすりながら、マリューは再び笑いながら

「そうね…でも一人しか入ってないわよ、すごく動くから元気いいわ〜」

「動くんですかっ!?」

「あらあら、キラったら当たり前ですわ〜生きているのですから」

クスクスとラクスに笑われ、マリューもふふっと笑った。

「なんなら触ってみる?」

軽くウィンクして言うマリューにラクスは嬉しそうに

「まぁ、よろしいのですか」

「えぇ、いいわよ」

ラクスはマリューの目の前に座り、そっとお腹に触れてみると

ポコッポコッ

「まぁ〜!動きましたわぁ〜」

「きっと、もうすぐ会えるからよろしくね。って言ったのかも」

ラクスはそれを聞くと、またお腹を撫でながら

「私こそ、よろしくですわ」

と囁いた。

「キラくんも触ってみる?」

「えっ!?僕もですか…い、いいのかな…」

「いいわよ…ほら」

傍らでみていたキラに声を掛けると、驚きながらもおそるおそる触ると

……ポコッ

「うわっ!?こんなに強いですね、痛くないんですか?」

「えぇ、大丈夫よ……」

「でも、何かお腹が硬く…って……」

ふと顔をあげてみると、さっきまでにこやかに笑っていたマリューだったが、急に苦しそうな顔をした。

「マリューさん!?」

「マリューさん!?大丈夫ですの」

キラとラクスは慌てて呼び掛けるが、マリューは少し顔に汗を浮かべながら

「…平気……なんだけど、なんだか朝から少し痛むなぁ〜って思っていたんだけど、急に痛くなっただけよ」

「で、でも病院行った方がよくないですか?乗せて行きますから!!」

「そうですわ!!マリューさん」

「で、でもこんな程度で病院に行っても追い返されるだけよ…っ…」

一層苦しくなったのか、いつも見る温和な顔立ちがなく、うっすらと青くなっていく。

「と…とりあえずは病院へ電話かしら…キラくん、取ってくれる…?」

「はっ…はい!!」

近くにあった受話器を取り、マリューに手渡すと電話を掛け始めた。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


数分たつとマリューは電話を切り、キラとラクスに向かって

「悪いのだけれど、病院まで乗せて行ってくれないかしら…一応来て下さいって言われちゃったのよ」

「えぇっ!?は、はい。分かりました!!」

キラは慌てて、車のキィを持つとエンジンを掛けに外へ行き、マリューはラクスに手伝ってもらいながら立ち上がり用意していた入院バッグを持つと車へと移動した。
後部座席に横たわりながら、マリューはだんだんと強くなる痛みに耐えていた。
とりあえず、この状況をムウに連絡しようとしたが、生憎留守番センターに接続されてしまい、仕方なくメッセージを入れておいた。
やがて、病院へ着くとナースが待ち構えていた。

「フラガさんですね、早速モニターと内診しますのであちらへ。お付き添いの方々はこちらでお待ちください。」

てきぱきと指示するナースに従ってマリューは診台へと上がると先程とは比べものにならない痛みが走った。
ナースや助産婦さんがやって来て診ると

「あら、もう生まれるわよ!!」

「…っえ…?…っく…」

突然の言葉にマリューは唖然としたが、そんな事はお構いなしに回りは出産準備に取り掛かる。
先生もやって来て、どれどれと診るとやはりもう生まれそうなのかびっくりしていた。

「陣痛が始まってどのくらい?」

「えっ…急に痛くなったのはさっきでして…」

「そうなの!?かなり早いね、もう少しイキんでみてくれる?頭見えてるから」

「は、はいっ…!?」

タイミングに合わせ、イキむと熱い痛みが集中している。

「はい、もう少し!!大丈夫、出て来てるよ」

「…っんぅぅぅ〜」

「上手、上手。ほら頭出て来たよ〜力抜いてね。」

えっ?と思った時、悲鳴と共にマリューは赤ちゃんを出していた。

「あああぁぁぁぁっ!!」

「オギャーっ…!!」

「まぁっ、元気な女の子ですよ!!」

そう言って生まれたばかりの赤ちゃんを胸に抱かせられマリューは涙ぐみながら堰をきって流れ出す感情に感動していた。

「あぁっ…会いたかった…」

待っていたキラとラクスは、ナースさんにマリューのお産が始まった事を告げられドキドキしながら待っていた。
キラは落ち着かないのかちょろちょろし、ラクスは笑いながら

「キラ、少しは落ち着かれたらいかがですか?」

「えっ…うん、そうなんだけど…ι」

姉のように慕っていたマリューの事だけに、キラは落ち着かないのだ。ましてや、父親であるムウはまだ来てない事にも落ち着かないのである。
その事を理解してか、ラクスも

「きっと、マリューさんならば大丈夫ですわ。」

と言っていた時

『オギャーっ…!!』

っと分娩室から声が聞こえ、キラとラクスは顔を合わせると

「「生まれ(た・ましたわ)っ!!」」

と両手を合わせて喜び合っていた。
二人が笑い合っていると、ナースが赤ちゃんを抱っこして

「無事にお生れになりましたよ、女の子です。」

と元気に鳴く女の赤ちゃんを見せてくれた。
キラとラクスは、あまりの可愛さに頬を染めそっと指で触れるとキュッと指を握り返された。
ようやく、病室へとマリューが戻った時ムウがやって来た(遅)

「マリューっ!!」

ばたばたとやって来たムウは、すごい勢いでマリューの抱き締めた。

「遅くなってごめんっ!!…そして、お疲れさん…」

「…ムウ…」

マリューはなんだか照れ臭そうにそっと顔を埋めるとしばし、二人は瞳を閉じていた。
ほんの数秒だったが、マリューはなにか充電(?)されたような気がして、パッと離れるとにっこり笑った。
傍らのベッドで眠ってる赤子を抱くと、マリューはそっとムウに見せた。

「ほら、パパが来てくれましたよ」

母に似たのか茶色の髪が少しながらもふんわりと柔らかそうに生えていた。眠っているので瞳の色はわからないが、マリューは微笑みながら

「ムウの瞳と同じ綺麗なブルーだったわ…」

「そ、そっか…」

「名前…決めた?」

「あぁ、気に入るといいな。君の名前はエリスだよ。可愛いお姫さま」

「きっと、気に入るわ」

そう言うと二人は顔を見合わせ、微笑むとエリスと名付けられた娘を慈しむように微笑んだ。

――――生まれて来てくれてありがとう――――




END




おまけ

「あ、ムウさん。やっと来たんですね。」

「キラくん、ラクスさん色々とお世話になって…ごめんなさいね。」

「いいえ、お気になさらないで下さい。それに赤ちゃんを抱っこさせて頂いてとてもうれしかったですわ」

「ムウさん、もう1度抱っこさせて下さい。」

「………あ、あぁ」

「ありがとうございます。さっきみたいにまた瞳あけてくれないかな?」

「まぁ、キラったら赤ちゃんは寝てるものですのよ」

……さっき?

……もう1度?

…え?パパの抱っこが最初じゃないの?

俺より先にキラがエリスを抱っこしたって事か?


「キラ、お前―――っ!!」

「な、なんですかっ!?」


こうして、ムウがキラに負ける日々が始まろうとしていた(笑)







あとがき

1年以上かけて、ようやく書きおわりました。
今回は、エリスちゃんの誕生のお話です。実際の出産はこんなに短縮されません。
初産婦さんは大体出産にかかる時間は、5〜12時間かと思われます。
経産婦も早い人は早いし、掛かる人は掛かるかと思います。
私は陣痛開始から
1回目は6時間
2回目は6時間
3回目は3時間でした。
あの苦しみはつらいですね(TдT)

この話では、ありえない早さですが普通にムウが間に合ってしまいそうになったんで、あっという間になりました。
きっと陣痛の痛みが弱かったのでしょう(ぉぃ)

では、読んで下さってありがとうございました。



2006/3/26


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