Baby Panic

GUNDAM SEED

「ごめんなさいね。じゃあ、お願いね」

「あ、あの……泣き始めたら私の手には負えないと思う…」

「ちょっとスーパーに行くだけだから、すぐ戻るわ。……じゃあ行ってくるわね、エリス」

「あーー!んまぁ〜〜」

マリューはカガリの腕に抱かれる我が子の頬にキスをすると、当の娘はくすぐったそうに笑う。

「あーーもう可愛い〜〜好きぃ〜〜」

「きゃう〜〜」

マリューがエリスに頬擦りするとエリスも擦り返す。二人だけの世界にカガリは溜息を吐きながらしばらく見ていた。タイミングが悪い時に来てしまったものだ。
ムウとマリューの住まいをフラッと尋ねたのが運のツキ。スーパーに買い忘れがあったということで子守りを頼まれてしまった。ムウは仕事でいない。
そりゃあ子供連れで買い物は大変なのは分かるが……。もうすぐ一歳になる赤ちゃんを見に来ただけのはずだった。
見るのと世話をするのは訳が違うものだ。買い物に出掛けたマリューを見送り、また溜息を吐いた。

「……はぁーーまあ、いっか。よろしくな、エリスちゃん」

カガリはきょとんと見つめる瞳に笑い返した。
抱っこしながらリビングに入る。相変わらずきょとんと見つめてくる瞳に困惑してしまう。
いつも抱っこしてくれる人と違うからだろう。

「う〜〜ん。もうちょっとでママ帰ってくるからガマンな?……さてと…」

この子は何が好きなんだろう?……聞いておけば良かった。
取り敢えず手近にあったおもちゃと絵本を取る。膝の上に座らせ、絵本を広げると

「あぅーー!」

小さな手で一生懸命に挿し絵をペチペチ叩く。喜んでいる様子にホッとした。
すると…エリスは笑いながら挿し絵に頬擦りを始めた。
カガリは先程の様子を思い出す。

「……可愛いの?好きなんだ?」

「あーー」

そうしてると今度はTVを指差す。
小さな子犬が沢山映っている、そこに連れていくと……今度はTVに頬擦りし始めた。

「……確実にママから習ったな、お前?」

「うきゃ〜〜」

可愛らしい仕草に思わず笑みが零れる。そうしてたら…

Σがつんっ!!

「いったぁーーっ!!」

いつの間にかエリスが握ってたおもちゃがカガリの足にクリーンヒット。
あまりの痛みで床に寝転ぶ。

「うぅ〜〜?」

罪の意識も無いだろう、エリスは不思議そうにハイハイしながら覗き込んできた。

「あ…はは……何でもないからねぇ」

一体この小さい体のどこにこんなパワーがあるのか分からない。
子供って大変だなぁ……等と思ったその時、カガリは自分の頬にふよふよした感触がした。
気が付くと、エリスが頬擦りをしてきていた。

「……私も好きなのか?」

カガリは起き上がってエリスを抱き上げる。そうすると、今度は満面の笑みを向けてくれた。
カガリは思い切り笑い返す。抱き締めると、しっかり服を握ってくる感触に鼻をくすぐる乳臭さ。

「あはは〜〜ほっぺたぷくぷく〜〜肉まんみたい♪はぁーー、あったかぁい☆この天然ホッカイロめぇ」

「うにゅう〜〜」

そうこうしてたら、玄関先で物音が聞こえた。

「マリュー〜〜エリス〜〜パパのお帰りだよぉ〜〜」

聞き慣れた声にエリスは手足をバタつかせて喜びを表現する。

「あぅーー!うぅーー!ぱぁぅ〜〜」

リビングに入ってきた父親に精一杯手を伸ばした。

「……おーっと?嬢ちゃんどうした?またアスランとケンカして家出か?」

ムウはカガリからエリスを預かりつつ余計な発言をかます。

「バカを言うな!!遊びに来たら子守りを頼まれたんだ!!奥さんはスーパーに行ったぞ!!」

そしてまた物音が…

「ただいま〜〜!ごめんねカガリさん……あら…早かったのね、ムウ」

大好きな両親が帰ってきて、エリスは父親の腕の中でキャッキャッとはしゃいでいる。

「いや、楽しかったから!……じゃあ帰るよ。バイバイ、エリスちゃん」

「うみゅぅ〜〜」

エリスは帰る気配を察してか、ほっぺたを突くカガリの指をぎゅっと握り返してきた。

「あら、ご飯くらい食べていったら?エリスも懐いてるし…」

「そうだぞ?ケンカなんか気にするな?いつものことだろ?」

「いや、帰るよ。アスランが待ってるしな!!(怒りを込めた強調)」





「…もう痛いのなんのって!突拍子も無いし、何考えてるか分からないし…」

「へぇ〜〜」

夕食時の団欒。凄い剣幕で話すカガリにアスランは微笑みながら相づちを打つ。
だが、段々と笑いを堪える仕草へと変わるのをカガリが訝しむ。

「…何笑ってるんだよ?」

「…いや……カガリ気付いてるのかなぁ?ってさ」

「何が?」

「カガリ、さっきから子供の話しかしてないぞ?」

「へ?そ、そうか?」

アスランは微笑みながら、だが真面目な瞳でカガリを見た。

「…欲しい?子供」

「へっ!?お、おまっ!な、何言って……」

赤くなりながらごまかそうとするが、真摯な視線に嘘はつけなかった。

「俺は欲しいよ?カガリとの子供ならいくらでも」

「な、何簡単に言ってんだよ!!」

「人一人育てるのがどれだけ大変なのかは分かってるよ。……いや、そうならなきゃ分からないことが沢山あるんだろうな。……カガリは?カガリは嫌か?俺の子供産むの…」

「嫌なわけ無い!!……だろ?」

真っ赤になりながら俯くカガリに思わず笑みが零れてくる。

「じゃ、今日頑張るな♪」

「だぁーー!!だからそういう発言は……あーーっもうっ!!!」


でも…またあのぷにぷにしたほっぺたに触れてみたい。
そしてその成長を見守っていく人生も悪くはない……そんな気持ちになる一日だった。



END







あとがき

思えば何となく書いたこの話がシリーズの始まりでした(去年の始めくらいかな?)。その後マキおねぇちゃんが続きを書いてくれて、二人して話が盛り上がって……で、その結果今に至ります。

今回載せるにあたって手直し兼読み直しをしました……が、激しく驚きましたιアスランがマトモだし(え?ι)ムウがおとなしいし(おいι)二人共見る影無いね!!(言い切りやがったι)

ちなみに『エリス』はギリシャ神話からです。響きが好きだから選んだけど、神話上では『不和・仲違いの女神』ですι

それでは、読んで下さってありがとうございましたm(__)m



メール公開:'04/1/18
サイトUP :'05/1/6
作)皐月


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