Language Panic
「にゃーにゃ!にゃーにゃ!」
ぷくぷくのちっちゃな指がTVを指している。そこに映っているのは……
「……犬?……へ?」
疑問符を浮かべるカガリに溜息を吐くマリュー。勿論その原因はムウとマリューの愛娘エリスだ。
フラガ家のリビングにて主婦の苦労話に花を咲かせていたところの突然の言葉。
〈にゃーにゃ〉は大概猫のことを示す言葉のはずだが……。
「気にしないで、カガリさん。この子ったら最近いつもこうなのよ」
「にゃーにゃ!まぁんま!にゃーにゃ!」
「はいはい……実はね…」
―ある日のフラガ家―
「あーー、ぱぁんぱぁーー!」
エリスは小さな体で抱えるように絵本を持ち、父親の元にトトト…と駆け寄る。
そしてその本を座っていたムウの足の上にポンッと置いた。
「ぱんぱぁ!れっ!」
「ん?読んで欲しいのか?」
「あぃ!」
「そうか〜〜エリスは絵本が大好きだなぁ〜〜よぉし、おいで!」
「きゃい〜〜」
ムウはエリスの体をひょいっと持ち上げ、足の上に乗せた。エリスはキャッキャッとはしゃぎ、足をバタつかせる。
「おっと……ほぉら暴れるなよ?さてと…」
ムウが絵本を広げると、エリスは挿し絵を一生懸命に指差した。可愛らしい猫の絵だ。
「あぅ〜〜」
この猫がお気に入りらしく、笑いながら頬摺りし始めた。
「エリス、これはにゃんにゃんだぞ?」
「う?……にゃーにゃ?」
「そう!偉いなぁ、よく言えたなぁ」
「うゅ〜〜」
ムウが頭をナデナデすると、エリスは照れたのか恥ずかしそうに顔に手を宛て、ぺちぺち叩く。
「……あー!」
「どうした、エリス?」
照れていたと思いきや、今度は窓の方を指差している。何事かとムウは窓を見ると、外に本物の猫がいた。
「ぱんぱぁ!にゃーにゃ!」
「おー!そうだなぁ!大当たりだな!偉いぞぉエリス〜〜」
「うきゃ〜〜、にゃーにゃ!にゃーにゃ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……という訳でね…」
「…え?変なことは無いと思うんだけど?可愛らしいエピソードじゃないかなぁ?」
「にゃーにゃ=猫じゃなくて、褒められるに繋がるみたいなのよι」
「うっ、それで犬でも何でもにゃーにゃなんだ……」
マリューは頷き、溜息を吐きながら肩を落とす。
「この前スーパーに買い物に行った時にね……この子ったら丸々一尾の鯖を…」
「……にゃーにゃ?」
マリューは再び大きな溜息を吐いた。
「さすがに恥ずかしかったわιでも切り身には反応しないところは頭いいわね」
『……結局親馬鹿なんじゃないかっていうかそういう問題じゃ…』
「あら、どうかした?」
「(ぎくっ)い、いやぁ〜〜何でもぉ〜〜ね、ねぇ〜〜?エリスちゃぁ〜ん?」
「う?」
なんとか誤魔化そうと、未だにTVに夢中だったエリスに話し掛ける。
「それはワンワンなんだよ?ワンワン」
「……わんわぁ?」
「そう!にゃんにゃんじゃなくてワンワン…」
「わんわ!わんわ!」
エリスはぱぁっと顔を輝かせ、再びTVを指差す。
カガリはその光景にホッとするが、クルッと振り向いたエリスの顔を見て、思わず頬が引きつった。
何かを期待しているきらきら輝く瞳が、こちらをじぃーっと見つめている。
「エ、エリスちゃん?」
じぃーっ
「い、いや、あ、あのね…?」
じぃーーっ
「…あ……あの…」
じぃーーーっ
『…な、なんなんだ……この何とも言えない凄まじい迫力のオーラはっ!?』
じぃーーーーっ
「……す、凄いねぇ〜エリスちゃぁ〜ん」
「…うきゃあ〜〜〜!!わんわ!わんわ!」
カガリに褒められたことが余程嬉しいらしく
「わ〜んわ!わ〜んわ!♪」
と即席にメロディが付けられた歌を歌いながら、二人が向かい合っている座卓の周りを走り回る。
はしゃぐエリスとは逆にマリューは重い溜息を吐き、カガリは冷や汗をかいている。
「…マ、マリューさん……ご、ごめ…」
「……いいのよカガリさん……今更ワンもニャーも変わりはないわ…って、エリス!走り回ったら危ないでしょう!?いいこにしてなさい!」
「やぁ〜〜!」
「エリス!」
「まぁんま、やぁ〜や!」
エリスは母親の言うことなど耳に持たず、カガリに抱きついた。そのままカガリの膝の上にごろりと寝転ぶ。
「もう、エリスったら!」
「あぁ…私は構わないよ、マリューさん。ね、エリスちゃん」
「あ〜〜ぃ」
くるくるの瞳とふわふわの産毛。見上げてくる笑顔に可愛らしさを感じると同時に『やっぱ子育てって大変だよなぁ……』と、今更ながら思い知る。
この前の一件以来、アスランは……その……えー……色んな意味で頑張っている。
自分がきっかけだったんだから、勿論嫌なことは無い(本人の前では絶対言わないけど)。
……まあ…新聞の広告の裏地まで使って名前候補を大量に書いていた姿にはさすがに驚いたけど(綺麗な良い紙に書いてたもんだから、私が勿体ないと怒ったからなんだけどな)……一生懸命に考えてくれてることが凄く嬉しかった。
きっとどこも同じ、大変なんだ。大変だけど……
向かいに座っているマリューが突然何かを思い出したようで、ポンッと手を合わせる。
「そうそう!美味しいケーキがあったのよ!カガリさん、甘い物好きでしょう?今持ってくるわね」
「あ、お構いなく…」
……なんて言葉は社交辞令。大の甘党なカガリは嬉しくて堪らない。だがマリューが立ち上がると…
「あーー、まぁぅ〜〜」
「あれ?エリスちゃん?」
カガリにベッタリだったエリスはトトト…とマリューに走り寄り、ピトッと張りつく。
「あ〜ら?ママは嫌なんじゃなかった?」
「ぶぅーー」
口を尖らせながらも離れようとしない様子に、マリューはやはりどこか嬉しそうだ。
「……やっぱりママがいいんだなぁ……。なんか淋しい」
大変だけど……なんか幸せ。そして私の隣にはニコニコのあいつがいる。……うん、やっぱり欲しい…な。
「……どうしたのカガリさん?ニコニコしちゃって。このケーキそんなに気に入ったならお裾分けするわね」
「え?あ、あははは!いや、凄く美味しいけどな!!」
そして、カガリが体調の異変に気付くのはこの数日後のことなのだが……それはまた別のお話
「ねぇ、マリューさん?赤ちゃん産むのって…やっぱり痛い?」
「うーん……そうねぇ……。例えるなら……」
「なら?」
「スイカ大玉を体の中から絞り出すって感じかしらvV」
「っ!!」
END
あとがき
さりげに実話だらけな話です。
カガリが私で(皐月の甘党が原因で、このシリーズのカガリは甘党だという設定になっちゃいました)、エリスちゃんの行動は実際に目の前であったことです。
一時期何でも『にゃーにゃ』と言ってた親戚のチビがモデルです☆
チラシの裏に子供の名前候補を大量に書いていたのは知り合いの旦那の実話です(笑)
最後のスイカは友人の母の名言です。確かに約3kgの赤ちゃんを産むんですもんね(^^ゞ
これも昔書いたやつで、今回読み直し兼手直しをしましたが……ザラ夫婦普通にラブってるよ!ほのぼのだよ!とビビりました
お目汚しでしたが、読んで下さって、ありがとうございましたm(__)m
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