愛しい貴方へ
最終戦闘が終わり、AAに帰還した機体はバスターのみだった。
ストライクルージュにキラとアスランを乗せ、カガリもクサナギへ帰還した。
マリューは艦長席に座し、クサナギとエターナルと状況報告を受けたり、各部署の被害報告を聞いたり、修理の指示を与え続けた。
そう、ずっと艦長席から離れようともせず何時間も……。
ノイマン達がいくら言い聞かせても、マリューは動こうともせず仕事に没頭していた。
困ったノイマン達は、回復したキラ達に休むように言ってくれと頼んだ。
「……僕がですか?」
「頼むよ…」
「お願いよ、キラ」
「分かりました」
みんなに言われてキラは、頷いたのだった。彼もまたマリューを心配していた一人だから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「マリューさん…」
キラは躊躇しながら声をかけると、マリューは振り向いてくれた。
「…キラ君、どうしてこっちにいるの? ラクスさんのそばに……」
キラはマリューの顔を見て驚いた。憔悴し、疲れきった表情をしている。
なんて、顔を――いやそれよりもこんなになっても……。
キラは、きゅっと顔をしかめるとマリューを見た。
「マリューさん、少しは休んで下さい」
やや強めの言い方だったが、マリューは顔を逸らした。彼の言いたい事はわかっていたから。
「大丈夫よ、キラ君。それに今は休んでなんて……」
「な、なにが大丈夫なんですかっ!? 仕事はマリューさんがやらなくたって誰か別の人に頼んで。
少しは休まないと体壊しますよ! 艦長がそんなボロボロでどうするんですか!?」
マリューはその言葉にビクリと動揺した。
『艦長がそんなクタクタのボロボロじゃ、どうにもならないぜ』
「……そう…ね。でも今は…まだ…」
マリューは顔を下に向けた。
いまはまだ、何かをしていたいのだ。そうでもしていないと、怖いから。
―がしっ!!
「!? ちょっと、キラ君っ?」
キラはマリューを艦長席から立たせるとブリッジから連れ出した。
「マリューさんは休んで下さい。みんながどれだけ心配してると思っているんですか?」
少年とは思えない力で、マリューを引っ張り、医務室へ連れていった。ドクターに安定剤をうたれ、ベッドで安静にするように言われた。
付き添いのキラと心配してやって来たミリアリアにマリューは、枯れるような声で謝った。
「…ごめんなさい……ありがとう。キラ君、ミリアリアさん。……でも今は休みたくないの…じゃなきゃ…色々な事が………」
薬が効いてきたのか、ゆっくりと瞼が閉じられ寝息が聞こえてきた。キラとミリアリアは、ホッと息をついた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
思い出しちゃうの…
イヤなのよ…もう独りは…
おいていかないで…
お願いだから…
絶対帰って来るって約束したのに…
なんで…どうして…?貴方は……いないの…?
不可能を可能にする男だって、言ってたじゃない…
『…マリュー……』
「ムウ!?」
『マリュー…』
「ムウ……貴方、何処にいたの? 私、心配したのよ」
『君は、強いだろ。マリュー』
「っ! いいえっ……強くなんかないわ!!」
『大丈夫、俺が言うんだから。』
「貴方が……いないのに…」
『…マリュー………』
「ムウっ、行かないで……」
『いつもそばにいるよ。俺はいつまでも見守っている。君の中で生きているよ、マリュー…』
「…ムウ……」
遠ざかる姿を追い掛けたいのに足が鉛のように重くて、動けなかった。
その場にしゃがみ込み涙がポロポロと膝へと零れ落ちた。
どのくらいそうしていたのだろうか?時間の流れがわからないでいた。すると、近いような遠いようなところから音が聞こえた。
――トクン…トクン…
自分のではない鼓動が聞こえる…
小さな音だけど、力強い鼓動が…
これは―――…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「―艦長は―――――月に入っ――――こんな無茶を――――」
(…なに? 何の話をしているの……?)
「じゃあ、マリューさんは―――――ですか?」
「それって……少佐の…?」
「そうだよ! ミリアリア、ムウさんしかいないよ!!」
(…少佐……?……ムウ…?)
マリューがゆっくりと瞼を開いた。気付いたミリアリアが声をかける。
「艦長、目が覚めましたか?」
ミリアリアの言葉にドクターもキラも振り返り、マリューはミリアリアに支えられて起き上がった。
ドクターは軽く診察すると、注意を言い始めた。
「艦長、あまり無茶しないで下さい。お体に負担がかかりますよ」
「…えぇ、ごめんなさい。でも…」
マリューは言葉を続けようとしたが、ドクターに遮られた。
「あなたは、もう一人の体ではないのですから」
その言葉に驚き顔を上げると、ドクターは微笑んだ。
「妊娠なさってます、艦長。もう3ヵ月です」
「…えっ……?」
マリューは言葉を信じられず、呆然としていたが、後ろにいたミリアリアが嬉しそうにはしゃいでいた。
「赤ちゃんがいるんですよ! 艦長のお腹の中に!!」
「……ムウさんの生命が続いているんですよ、マリューさん」
キラの言葉にハッとした。ミリアリアが涙を浮かべて笑っている。
「…赤…ちゃ…ん…?………ムウ…の…」
マリューはそっとお腹を触り、頬に一筋の涙が伝う。
「「「ハイ」」」
キラとミリアリアは、本当に嬉しそうに笑った。ドクターも頷いた。
マリューはその笑顔を見て、ますます涙が溢れてきた。
……ムウ………ムウ。
貴方の赤ちゃんがいるのよ。
私の中に…
貴方がいなくて、とても悲しくて、辛いけど…
まだ、笑っていけるわ。
私には、この子がいるわ…
貴方が与えてくれた新しい生命が…
貴方が守ってくれた生命…
きっと守るわ…貴方と私の赤ちゃん…
ありがとう…ムウ。この子を残してくれて…
いつまでも愛しているわ…愛しい貴方…
『俺は、いつまでも君らを見守っているよ……。だから、カンバ、カンバ!…………マリュー…』
END
あとがき
2003/9/20の衝撃の49話をみてその日は落ち込み、次の日にこれを書きました。
ムウ、アンタ本当に『不可能を可能にする男』だよ!!普通、あのシールド如きでは主砲は止められへんて……(魔可不思議・種)
しかし、マリューさん悲しすぎ、なんで二度も大事な人亡くさなきゃあかんねん…(号泣)
DESTINYでは、怪しい仮面がいますが、生きてて欲しいと願ってます。というか、生きてました。
初槁:2003/09/21
改稿:2007/07/02
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