Pregnant Panic
「カガリ!何やってるんだよ!?」
今日も言われる言葉。何って、普段通りに家事をやろうとしただけだぞ?
この後はいつもお決まりのセリフ。
「ダメ!俺がやるから、カガリはおとなしくしてろよ」
ほら、また言った。毎日言ってて飽きないのか?私は聞き飽きたぞ?
私の妊娠が発覚してから、元々過保護の気があったアスランの過保護っぷりは、みるみる高まる一方だ。
只今妊娠三ヶ月。まだ目立たないお腹。食欲だってある。毎月来るアレが無いだけのこと、実感が沸かないのが正直なところだ。
……何も変わらないのに…こいつは…いつもいつも……
「安定期まで油断出来ないんだから、ちょっとはおとなしく…」
……無性にイライラする。
「おい、カガリ。聞いてるのか?」
……イライライライラ……もう止まらない。
「〜〜〜あーーもうっ!煩い煩いうるさぁーいっ!!いつも同じことばっかり言って!!」
驚いて目を見開いたアスランに、イライラを思い切り当たり散らした。
「そんなに私が信用出来ないかっ!?まあ、そうだよな!!それだけ愚痴愚痴言うんだからっ!!」
「な、何言ってるんだ?俺はお前が心配で……」
この後に及んでまだ言うかっ!?
あーーイライラする!!イライライライライライライライラ……!!
「もういい!!『実家に帰らせてもらいますっ!!!』」
「えっ!?カガ…っ!!」
呼び止める声を振りきり、玄関の扉を思い切り閉めた。
あんな奴なんか、もう知らないっ!!
呼び止める間も無く、お決まりのセリフでカガリは出ていってしまった。玄関の扉が乱暴に開け閉めされる音が響く。
「……じゃあ、どうしろって言うんだよ…まったく…」
妊娠の吉報は嬉しい半面、言い表せない不安があった。これからお腹が大きくなっていって……正直この先が想像つかない。
ムウさんに相談したら、男は実際に生まれるまではそんなもんだって言っていた。
「…はぁーー」
悩んでもどうしようもない……と思えるようになったのは、カガリの影響だろう。
こんな時にカガリが行く場所は限られている。
…とりあえず俺は、奥さんの行動パターンに習うことにした……
「うわあぁぁぁんっ!!アスランの馬鹿ぁぁぁぁ!!もう私のことなんて愛してないんだあぁぁぁぁっ!!!」
……一体何が起こったんだよ?
久々に帰って来た姉の状態に、僕は溜息をついた。
「煩いなぁ……何?また痴話喧嘩?惚気?」
「冷たいぞ、キラぁーー!!たった二人きりの姉弟だろっ!?」
「結婚すりゃ、きょーだいなんてそんなもんだよ」
「うわあぁぁぁぁぁん!!!」
あぁ……もうでもカガリはアスランと、僕はラクスと既に所帯を持っている。……間違ったことを言っている気は無いんだけどなぁ。
「ほら、キラ。……カガリさんも落ち着いて下さいな?お腹の赤ちゃんが驚いてしまいますわよ?……あら?カガリさん?」
ラクスが宥めようとするが、これまで散々泣き喚いてたカガリは、今度は目を閉じて俯いている。
「ちょっと…カガリ?」
「…………ぅぅ〜〜眠いぃ〜〜」
「はあっ!?」
泣いてたと思いきや、今度は眠いときたもんだ。……何なんだよ、もう
「キラ、キラ」
ラクスが僕の袖を摘んで、小声で呼んできた。
「カガリさん、マタニティブルーなんじゃないですか?」
…なるほど。これで合点がいった。大方アスランに八つ当たりして、そのまま飛び出してきたのだろう。
どうやら姉のマタニティブルーは、色んな面で最悪なものらしい。……感受性の強さが裏目に出たのかな?
……アスラン…大変だなぁ……同情するよ
「なあ、お茶ってこんな味だったっけ?それにこのお菓子、もっと美味しかったと思うんだけど……」
……お姉さん、今度は茶菓子の文句ですか?
「カガリさん、妊娠なさったから味覚が変わったんですよ。イライラするのも、体調が変わったからですわ」
「イライラ?」
カガリは茶菓子を摘みながら、目をパチパチとしてる。……さっきまで眠いって言ってたはずなのになぁ
「あーー、そういや……私ったら何怒ってんだろ?アスランが心配するから、早く帰らなきゃな!!」
ゴンッ!!
「きゃあぁぁぁぁ!!キラ、大丈夫ですか!?」
い、痛ぁ……思い切りテーブルにぶつけた額に手を当てる。
「あはははっ!キラ、面白いなぁ♪」
「……カガリにだけは笑われたくない」
「遠慮するなよ☆」
「〜〜〜〜」
カガリのせいだと言ってやりたいけど、せっかく直った機嫌を損ねたくない。……面倒だから。さっさとアスランに任せよう
「あははは………………うぇぇ」
「……カガリ?」
笑っていたと思ったら、今度は口元を押さえている。……まさか…まさか……!?
「ぎも゙ぢわ゙る゙い゙ぃ゙〜〜〜」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!は、早くっ!!トイレにっ!!」
「カガリさんっ!!こっちですわっ!!」
ラクスが手を引くが、今にも吐いてしまいそうだ。
「ゔえ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙〜〜〜吐きそう〜〜〜吐くぅ〜〜〜」
そんな時に、玄関先でチャイムが鳴って…
「ごめんください!キラ!カガリを迎えに……」
「あぁーー!!アスラン!!いい所に!!!」
「へっ?……って、カガリ!?どうしたっ!?」
ボロボロと涙を零すカガリの姿に、アスランの顔色が変わった。
「アスラン、悪阻ですわ!!悪阻が始まりましたの!!」
「えぇぇぇぇぇぇ!!??」
「……悪かったな、迷惑かけて…」
カガリさんの悪阻がとりあえず一段落し、今の内にとキラが車を出して、お二人を家まで送りました。
「気にしないでいいよ、アスラン。貸しにしとくから♪」
「ああ。ラクスと喧嘩して追い出されたら、いつでも来いよ☆」
「まあ…。そんなことありませんわよvねぇ、キラvV」
「そうそう♪ウチは安泰なの!」
皆一様に顔を見合わせて、クスクスと笑い合います。……一人を除いては。
カガリさんは初めての悪阻で体力を使い果たしたのもあるのでしょう、アスランに抱えられながらスヤスヤと寝息を立てています。
「今カガリをベッドに寝せてくるから、少し上がっていけよ」
「いや、もう帰るよ。ねぇ、ラクス?」
「そうですわね。"お三方"水入らずでどうぞvV」
アスランは驚いた顔をしましたが、すぐに意味を理解したようで、穏やかに微笑みました。
「じゃあ、僕達はこの辺で………あ、アスラン。一つだけ言っておくけど…」
「…何だ?」
「今度カガリを泣かせたら、問答無用で連れ戻すからね?v」
まあ、アスランの頬が、軽く引きつっていますわ。おちおちと喧嘩も出来ませんわね〜〜vV
おまけ
「キラって…何だかんだと仰っても、カガリさんにお優しいですよねvV」
「そりゃあ……『二人きりの姉弟』だからね」
「うふふvV……そう言えば…アスランとカガリさんに子供が生まれるということは、わたくし達『おじさん』と『おばさん』になるのですねぇ〜〜」
「Σおじっ!?………う、うぅ〜〜ん」
「うぅ〜〜〜吐きそうなのに出ないぃ〜〜〜苦しいぃ〜〜〜」
「(背中を撫でながら)だ、大丈夫かっ、カガリっ!?」
安定期まで……まだまだ地獄の日々は続く…(笑)
END
あとがき
マタニティーブルー……なんか…書きたかったものとは全然違うものが出来てしまいました
カガリ→アスラン→キラと視点が変わったので、ラクスも出さなきゃでしょうと書いてみたものの……難しかったです
私自身まだ経験してないことなので、マキおねぇちゃんを筆頭に周囲のお産経験者に取材をしまくりました(はた迷惑な)
その結果、精神的不安だけじゃなくて、いっそ悪阻も書いちゃえ☆と思い立ち、カガリには大変な役回りになってもらいました( ̄▽ ̄;)
それでは、お目汚しですみませんでしたm(__)m
'05/1/16
皐月
-81-
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