Child Panic
「…………」
「うぅ〜?」
《 Child Panic 》
恐る恐る小さな女の子が小さな手を伸ばすと、目の前のこれまた小さな赤ちゃんはじぃーっと見つめ返す。
「あぅ!」
「Σ!!」
伸ばされた小さな手に向かって、もっと小さな手が突然伸ばされた。
女の子は驚いて手を引っ込めてしまい、そのままトテトテと後方にいる父親に飛び付いた。
「パパぁ〜〜ι」
「ん〜?どうしたぁ、エリス?」
「あぅ、あぅ〜〜ι」
「ほら、怖がることは無いんだぞ?赤ちゃんだぞvV」
「…あか…ちゃぁ?」
「そvちっちゃくて可愛いだろ?v…それにしても人見知りしない子だなぁ♪」
「暴れん坊で困ってますけどね。なぁ〜〜?ナンナv」
「うゅー!」
本日、フラガ一家はザラ家に遊びに来ていたのだった。
母親達はお茶の準備に忙しい。大勢のお茶を用意しなきゃならないので、マリュー自らカガリの手伝いをかって出てくれたのだ。
父親達はリビングで子供達と戯れていた。
「あー、あぅー」
それまでアスランのあぐらの中に納まっていたナンナは、その足に捕まり立ち上がる。
「〜〜〜うにゅぅι」
…と思ったら、ペタリと座り込んでしまった。
口を尖らせて父親の足をぺちぺち叩く。
「こぉらっιうまく立てなかったのはパパのせいじゃないだろうが。ワガママっ子め」
「ぶぅーー!」
「おお!立つようになったか!もうじき歩き回るな♪」
「その分いたずらも増えて増えてι手が届く所はみんな荒らすから大変ですよι」
「ははは!家もそうだったぞ!」
「???」
まさか自分のことを言われてるとは想像もしてないエリスは、きょとんと笑う父親を見上げた。
そして先程から気になるコロコロした物体を見やる。その〈赤ちゃん〉なる物体はこちらをじぃーっと見つめてきていた。
「ん〜?いつもと違う人がいるから気になるか?」
アスランは自分のお腹に寄り掛かる娘に話し掛けると、ナンナはその言葉に笑顔で答えた。
「あー!あー!」
ナンナは覗き込んでくる父親を見上げていたが、きゃっきゃっとはしゃいで、前方に手を伸ばし始めた。
「エリスちゃん。ナンナが“遊んで”だってさ」
「う?エリスとぉ?」
「ほぉら、行ってこい!お姉ちゃんv」
「…おね…ちゃぁ?」
それぞれの父親に促され、再度赤ちゃんを見た。
笑いながら手を伸ばす赤ちゃんに「お姉ちゃん」の言葉がムズムズする。
エリスがポテポテとナンナに近づくと、アスランは遊びやすいようにと、ナンナを抱きながら前に出してやった。
恐る恐る小さな手をそっと差し出すと、捕まえたと言わんばかりにぷくぷくのもみじがキュッと握ってきた。
「にゃあ〜〜う♪」
エリスは思い切り笑い返して、むぎゅっと抱き締めた。
「うにゅう〜〜vちっちゃぁのぉ〜〜vかぁいいのぉ〜〜vV」
「きゃう〜〜♪」
「ははは。エリスもちっちゃくて可愛いぞぉvV」
エリスは父の言葉にぷにぷにほっぺをぷうっと膨らませた。
「ちがぁもんっ!エリス、ちっちゃぅくないもんっ!」
「ぷうっ」
今度はナンナまでほっぺを膨らます。
「ん?ナンナちゃんも怒っちゃったか?」
「あはは!違いますよ!こいつはマネッコしただけですよ。なぁ〜?ナンナvV」
アスランがナンナのほっぺをぷにぷにと突くと…
「うみゅうぅ〜〜〜あむっ」
指に食い付いてきた。
「……なんでお前はパパを食べちゃうかなぁ?」
「うむぅ〜〜!」
そうこうして戯れていたら、リビングに二つの足音が近づいてきた。
「は〜い、お待たせv……!!」
「エリスちゃんにはジュースなv……!!」
お盆を持ちながら入ってきた母親達は一点を凝視して固まる。その様子に訝しみ、涎塗れの指を引き抜きながらアスランは問うた。
「?? どうし…」
「「可愛い!!vV」」
「「へ?」」
呆気にとられる父親二人と、はしゃぐ母親二人。
「ちっちゃい子供が赤ちゃん抱っこしてるぅvV」
「ムウ!!カメラは!?」
「へっ!?持ってくるわけないだろ?」
「んもう!!こんなに可愛いのに…」
「マリューさん!!家のを使えばいいよ!!私も撮るから!!」
「本当!?助かるわ、カガリさん!!vV」
きゃっきゃっと二人は部屋を出ていってしまった。
残された父親達は呆然と嵐のような盛り上がりを見ていた。
「……悪いなぁιマリューのやつ、家でエリスのアルバム作ってるからι」
「ははは……家もですよι」
はぁーーっとそろって溜息を吐く。
「日に日に成長してる姿って嬉しいんだけど…悲しいのもあって……ι」
「分かるぞその気持ち!!今はいいんだ!!パパ、パパって懐いてくれる!!だが…あと10年もすりゃ…」
「離れていっちゃうんですよねι嫌いって言われたりしてι」
段々と二人の目が、どこを見てるのか分からない遠い目になってくる。
「マリューは早く大きくならないかなって言うんだよなι」
「カガリもですよ。可愛い服着せたいとか一緒に買い物したいとか…」
次第に頭を抱えたり、目頭を押さえ始めてきた。
「しかしなぁ…いつも思うんだ。“あと20年もすりゃ見も知らぬ他の野郎に…”ってな。涙が止まらんってι」
「俺達も……まあ、色々としましたしねι子供が生まれたしι」
「男親の報いなのかもな……ιあぁ…今のままでいて欲しい(T_T)」
「同感です(T_T)」
しんみりと語り合いながらお茶を飲む父親達に、エリスは小首を傾げる。
「ねぇ?パパ、なにをおはなししてるのかなぁ?」
「あう?」
だが返答は返されず、笑顔と首を傾げるマネッコが返されたのだった……
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