Propose Panic
とある立派な屋敷の一室で、ある緊張が走っていた。
和室の上座には、いつもなら気さくなはずの口髭をたくわえ、年齢を感じさせない中高年の男性が座っていた。それもなにやらピリピリとした様子で手前にあったお茶を啜っていた。
原因は、入り口で正座をしている長身の男性、ムウ・ラ・フラガのせいであった。
ここはマリュー・ラミアスの実家であった。
正確には、実の両親の家ではなく育ての親のというべきだろうか。マリューは小さい頃、両親を亡くしており、父方の兄弟に当たるこのハルバートン宅で育ったのだ。
マリューの利発で聡明な質にハルバートンもかなり可愛がっていたのだった。
そのマリューもまた、ムウの隣に鎮座していたのだ。
「あの…マリューさんとの、結婚を……」
怖ず怖ずと話し出そうとする、ムウをギロリ!!と物凄い目付きで睨みつけた。
一瞬、ムウも身構えたが勇気を振り絞って一気に言い放った。
「マリューさんを僕に下さい!!」
「黙れ!この青二才が―――!許さん!!」
ハルバートンは怒りのあまりテーブルをひっくり返したのだった。
そう、今日はマリューの妊娠を機に結婚の挨拶をとやって来たのだが、突然のマリューの結婚の事に彼は些かお怒り気味だった。
もう二十歳も軽く越えていて、本人同士の合意だけでも結婚は出来るのだか、マリューにしてみれば実の父以上に可愛がってくれたこの叔父にはきちんと報告。とやって来たのだ。
が、結果この有様だった。マリューは、オロオロし涙ぐんでいた。
「お、おじ様…」
「マリュー………」
マリューは涙ながらに土下座をして懇願した。
「おじ様、お願い致します! 私、ムウと……この方と結婚したいのです! そ、それに……私のお腹には赤ちゃんが………」
マリューの懇願にハルバートンも困惑していたが、最後の一言を聞いた途端形相が変化した。
「…………ぬぁにぃぃ〜〜」
ムウとマリューは、その形相にもめげずに頭を下げた。
「「お願いします!!」」
その必死の様を見たハルバートンは、走馬灯のように可愛がっていたマリューとの思い出を思い出した。あの時の事、あの時の事。色々な思い出が溢れてくる。
そして、真剣に頭を下げる二人の姿を眺め、肩を下ろした。
「…くっ……許そう…………」
「「……あ、ありがとうございます!!」」
その言葉に、二人は顔を上げて互いを見ると嬉しそうにホッとしたように笑い深々と礼を述べたのだった。
「フラガくん。………マリューは、大切な兄弟の形見であり、私の大事な娘でもある。娘を頼むよ、マリューが選んだ君ならば、コレの両親も喜んでくれるだろう」
そう話す彼の瞳にうっすらと涙があったのをムウは見逃さなかった。もう一度頭を下げきっぱり言い張った。
「はい、もちろんです。」
マリューはその横で目頭が熱くなるのを感じながら、堪えていた。そして、感謝を込めて呟いたのだった。
「…………………ありがとう…」
END
あとがき
実はこれ、元々『学園シリーズ』にて書いていた話でした。
最近、自分のコピー本を発見してめくっていたら出てきました(笑)
いや、もう恥ずかしい限りです。
それで、皐月ちゃんに言ったら
「結婚シリーズで使えるよね」
ということで加筆して、この度『結婚・子供シリーズ』にUPとなりました。
ちなみに、ハルバートンは知将・ハルバートンです。
なんとなく、マリューさんに目をかけていたようにみえましたのでそう書いたんだと思われます。
今回のタイトル『Propose Panic』のプロポーズですが『申し込み』という意味で付けました。
マリューさんの親(叔父)に結婚の申し込みをしに行ったって事で(意味不明)
ついでに学園シリーズと結婚・子供シリーズはリンクしているようでリンクはしておりません。
では、読んで下さってありがとうございました(^.^)
マキ(森川沙耶)
初出:2003
再出:2006/10/18
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