01
「なんか……寂しい」
ふと漏らしたアスランの呟きに、カガリは目を丸くした。
「何が?」
後ろから語りかけるが、アスランは「うー…」とか言いながらうなだれている。
車の中という狭い空間で、カガリの?マークが飛び交った。
隣にちょこんと座る……と言うより、チャイルドシートに固定されているナンナに目配せしたが、「…あ?」と、可愛らしい笑顔を返されただけだった。
この日、せっかくの休日だから、家族水入らずでドライブに行こうということになった。
…が、いざ出発となった途端、愛車の運転席に座るアスランがぼやき始めた。
ナンナと共に後部座席に座るカガリは、娘をあやしながら夫に問うた。
「一体どうしたんだ、アスラン?出掛けようって言ったのはお前だろ?」
「……だから、寂しいんだよ」
アスランはハンドルにもたれかかりながら、後ろのカガリに視線を向けた。
だが、カガリは益々意味が分からない。一体何が気にくわないと言うのか…。
「……昔は、カガリは"ここ"だっただろ?」
アスランは空の助手席を軽く叩きながら言った。
「…ああ、そういえばそうだな」
「でも今は……」
虚ろな瞳で視線を送ってくるアスランに、カガリは彼の言わんとしていることに気付いた。
二人は学生時代からの付き合いだ。アスランが車に乗り始めた頃から、その全てをカガリは見てきた。
だが、その座る場所は、娘を授かってから変わってしまった。
チャイルドシートは後部座席に置くものだ。娘の場所は必然的に決まる。
そして、幼い娘を一人にさせるわけにはいかず……
「……仕方ないだろ?ナンナは後ろなんだから。それとも一人にしろって言うのか?」
「そんなこと、ダメに決まってるだろ!」
「じゃあ、諦めろ。ほら出発ー。行くぞ、ナンナ〜」
「きゃっきゃっ♪」
「うぅ……」
娘の可愛らしい声に混じって響く夫のウザったいうめき声が、カガリの頭痛を招く。
こめかみを指で抑えながら、カガリは携帯電話を取り出した……
――そして……
空席だった隣の席が、しっかりと埋められた。
だがその席に座る人物は、腕を組み、足を組み、そして見下す瞳をアスランに向けていた。
「……で?これで満足?」
その口から冷たく発せられる言葉に、アスランは心の底から寒気を感じた。
「……カ…カガリ……」
アスランは脂汗を流しながら助けを求めるが、カガリは溜息をつきながら睨み返した。
「助手席に座って欲しかったんだろ?だから、わざわざキラに連絡して来てもらったんだからな」
「そうそう。わざわざ、仕方なく、来てあげたんだからね」
キラは所々言葉を強調し、踏ん反り返るように助手席のシートに体を沈めた。
「うふふ…。私もお招き頂いて、ありがとうございます」
キラの妻であるラクスは、ナンナを挟むように、カガリの反対側に座っていた。
彼女はナンナの小さな手を取りながら、カガリと二人ではしゃぎ合っていた。
「可愛いおててですわ〜ちっちゃくて…ぷにぷにで…温かくて……」
「きゃっきゃっ♪」
「ほら、ナンナ〜vVおばちゃんと握手、握手〜〜」
「きゃ〜〜」
「……その呼び方は、ちょっと複雑ですわ」
「あはははっ」
元々この義理姉妹は仲がいいが、この日のはしゃぎ様は特別だった。
ラクスは妊娠中で、安定期に入ったばかり。やっと悪阻から解放されて、その苦しみで盛り上がっていたのだった。
後ろでは女が集まって和気あいあいとした雰囲気だったが、前の男達はというと……
「僕、せっかくの休みだったから、ゆっくりしていたかったんだよねぇ〜」
「……………」
……何とも言い難い雰囲気が立ち込めていた。
アスランは薄ら涙を浮かべながら、必死に妻へ訴えた。
「違う!これは違う!何かが絶対に違う!!可愛くないーー!!!」
「アハハハ、この可愛い天使の微笑みの、どこが気にくわないのかなぁ〜?…ん?言ってみて?ほら、さっさと」
「Σやめろーー!!その薄汚い笑みを俺に向けるなーー!!!」
……だが、アスランの命懸けの訴えは、あっさりと却下されることになる。
「……ふぇ………びえぇぇぇ!!」
「ああ、もう!この馬鹿アスラン!お前がグズグズ言ってるから!おお、よしよし……」
……結局、問答無用で車を出すことになった。
後にアスランは、この地獄の一日を、涙ながらに語ったと言う。
「……どーせ俺は馬鹿だからな……」
END
あとがき
本当に久々の更新ですみませんっm(__)m
ドライブ……ってことで、二人でキャラ達の愛車のこととか、細かい話で盛り上がっておりました(また意味無いことを…ι)
ちなみにアスランは、もちろん赤です(笑)
段々とキラの位置付けが確定してきました。これからは優雅に楽しくいぢめて頂くことになるでしょう♪
余談ですが、最後にナンナちゃんが泣いたのは、
『いつまでも拘束されることを嫌がった』
のか、それとも
『キラの邪悪オーラに気付いた』
のか、私も考えておりません(笑)
それでは、ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
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