拡散不要
視線が痛い。というしかない。
朝、学校へと向かう通学路からあちこちから視線が送られてくる。
昨夜なんて友人たちからの電話やメールがひっきりなしだったが、電話は出る事が出来ず、メールすら返せなかったからだ。
多分、みんな怒っているだろうなぁ〜、どうやって謝ろうかな〜と思いながらも、学校に行ってからの事を考えると頭が痛くなる。
(……帰りたい、家に…)
ずーん、と落ち込み気味になりながらも、通いなれた道を歩いて行けば、学校は目の前だった。
何やら校門付近が騒がしいが、何があったのか、あれ?もしや今日は風紀検査の日?
見れば、真田先輩と柳生先輩がいる。腕に「風紀委員」と腕章を着けていた。
まぁ、問題はないだろうが、二人以外の人にチェックされればいいだろう。
人の流れに任せ、女子風紀委員の所に並んでいれば、あちらも空いてるからそちらにと指示されてみれば、真田先輩である。
「真田委員長、こちらお願いします!」
「うむ、よかろう。そこの女子、こちらに…………む、お前は蓮二の…」
「………おはようございます。検査、お願いします」
「あ、ああ、わ、分かった…」
昨日の今日であるが、真田先輩なら特に問題もないだろう。
制服着崩してはいないし、さっさ教室に向かいたい。面倒な事が起きそうだけどね。
「……うむ、特に問題はないな!流石、蓮二の妹といった所か」
「──っ?!」
な、んて事を校門で、しかも風紀検査していてごった返してる此処で、言うの?この人?!
しかも声、でかいし!
「え、やっぱり柳さんて柳先輩の妹って本当なの?」
「そうなんじゃない? 今、真田先輩が言ってたし!」
「うそ!知らなかったー!」
途端にざわざわと騒がしかったのが余計に騒がしくなる。
「む? どうかしたのか?」
「…………さぁ、分かりません。失礼します!」
頭を下げて、校舎へと向かった。少しだけ小走りで。
靴箱に靴を入れて、上靴に履き替える。ひそひそとこちらを見ているのは、柳 蓮二が兄だからとばれただけではないだろう。
多分──
「ちょっとー、キヨくんに彼女いるんだってよ!」
「嘘〜?マジ、誰?」
「同じクラスらしいよ、柳先輩の妹とかって」
「柳先輩の妹ー?そんなの居たの〜?」
「ほら、あの子でしょー?」
「うっそ、あの子?!柳先輩には似てないんだね!」
こちらを指差してきた事に、頭がますます痛くなる。
教室に向かうまで色んな視線を送られた。が、難関はここからだ。
ガラリ、と扉を開ければ騒がしい室内が一瞬静寂に包まれる。だが、
「ちょっと、葵衣〜!どういう事なの?」
「柳先輩がお兄さんだって本当なの?!」
「キヨくんと付き合ってるってマジ?!」
「「「なんで教えてくれなかったのよー!」」」
友人一同が目の前で大声をあげてきた。
だから知られたくなかったんだよ。
というか、清雅とは付き合ってないし!なんて言えば、テニスコートで盛大な交際宣言したんでしょう!なんて返ってきた。
ちょっと、ソースはどこよ?!なんて思えば、テニス部の部員が視界に入る。
そうか、キミたちか…。
にこり、と笑みを浮かべれば、彼らは何故か身体を震わせた。
「葵衣〜、おはよ〜」
背中に重みを感じて振り向けば、清雅がのし掛かっている。ちょっとマジで重い。
「ちょっ、重っ「「「きゃー!キヨくん大胆〜!」」」は?」
「仁王、朝からいちゃつくなよ〜」
「柳さん、柳さん、コイツより俺と付き合「葵衣に近づくなよ〜」」
人の頭越しで何をしているんだろうか?
「ちょっ、ちょっとせ「お、いたいた! おい、アンタ、アンタだよ!」は?」
なんでこんなに会話を遮られるんだ、と思いながら、声をする方を見れば切原がいた。
周りの女子が「赤也くん、おはよー」「おはよう、切原くん」と声を掛けているが「おう!」としか答えない。
というか、なんの用……だなんて予想出来るな。
「アンタ、柳先輩の妹って本当かよ?」
「…………そうだけど」
もう認めるしかないな、と頷けば、教室内外から「やっぱりそうなんだ!」と声が聞こえる。
「マジかよ!」
「…………ついでに言っとけば、私、切原くんと同じ小学校だから」
「えっ?!マジ?!」
「うん、マジ」
頷けば、切原の周りの人たちが「切原、知らなかったのかよ!」「マジかよ、赤也!」と騒ぎ立てる。
やがて、恐る恐るとクラスメイトのひとりが手を挙げた。
「あ、あのぅ……ところで、仁王くんと、付き合ってるっていうのは……」
「「「………………」」」
あ、と教室内が一瞬静まり返る。
清雅は未だに私にくっついたままどからだ。
「付き合って「るよな〜、葵衣」ちょっ、清雅っ!」
ぐりぐりと頭越しに頬擦りされて、私はギャッ!と悲鳴を上げる。
まして、私が清雅を『せいが』と呼んでいるせいか、周りの女子がまたきゃあ!と悲鳴を上げた。
「やだ〜、ラブラブなら早く言ってよ、葵衣〜」
「仁王くんの事、『せいが』って呼んでるのー?」
「いや〜、ほら、柳先輩さ、葵衣の事を大事にしててさ、バレると大変だから呼び方変えてたんだよ」
「え〜、そうなの〜?」
「柳先輩ってシスコンなのかよ」
「赤也〜、それ聞かれたら大変だぞ」
なんだか、勝手に話が進み広がっていく。なんだってこんな事に……。
がっくり、と力尽きていると、天の助けか、上手い具合にチャイムが鳴ると同時に教室に先生が入ってきた。
ようやく解放されたが、ヒソヒソ声と、ニヤニヤ笑う顔があちこちから向けられる。
ああ、だから知られたくなかったし、清雅は誤解を広げていくし、何を考えているのよ、と思いながら、窓の外を眺めるしかなかった。
To be Continued
act.19
2015/01/17
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