苦手、なのよ。
衝撃の再会から暫く経つと、あの日以来、清雅とはちょくちょくメールやらトークやらで連絡を取るようになった。
彼にしてみれば、学校で話しても良くないか?と言われたが、遠慮させてもらった。
理由? そんなのは彼が『仁王 雅治』の弟で、かつ男子テニス部準レギュラーだからだ。
容姿も、妖艶な雰囲気を持つ兄とは別だが、彼は爽やかな雰囲気を持っている。どことなく、大阪だかのキャラクターに似ている気がする。どこかね。
つまり兄弟というだけあって、容姿が滅茶苦茶良いのだ。
前の世界ではあまり気にしてもいなかったが。
だからこそ、近寄りたくはない。
「葵衣だって柳先輩の妹だろうが」
「…………言っとくけど、私があの人と兄妹って知ってるの先生くらいだからね」
「はぁ?」
「切原だって、小学校同じだったけど私の事知らないし、ましてや学校であの人とあまり話したりしないもの」
「……? 嫌いなのか、柳先輩の事」
「…………嫌い、ではないよ。ただ、不思議なんだよね、兄妹として、っていうのが。まぁ、苦手? あんなだしね」
データだなんだと調べ尽くそうしているのを見るとなんだか怖い。
「あぁ……あれは確かに、なんつーか、怖いよな」
苦笑いしながら、頬を掻く彼にこちらも質問した。
「そっちこそどうなの?」
「ん? あぁ、雅治も得体が知れないトコあっけど、こっちも負けずと騙した合いとかするからな、慣れた」
「ふーん、そっか」
「ああ」
廊下の角で話していたら、端の方で清雅を呼ぶ声が聞こえた。
「呼んでるよ、切原くん」
「またかよ。どうせ、英語の宿題だろ。じゃあ、また連絡する」
「うん、じゃあ、またね」
切原がこちらに駆け寄ってくるのを横目で一瞥してから、職員室へと足を向ける。
先生に頼まれていたノートを届ける為だ。因みに先程はノートを提出するのを忘れていた清雅に催促し、出された時の会話。
清雅は手伝うと言っていたが、目立つからやだよ。と断った。
俺の優しさを棒に振るのはお前くらいだ、とか言われたが気にしない。
職員室のドアを開けようとしたが、しまった。両手が塞がっている。
誰か、そこらにいる人に声をかけようとしたらガラリとドアが開いた。
びっくりして振り返ると、そこには兄の姿が。つか、首が痛い。
「……あ、りがとうございます」
「気にするな」
ふっ、と笑われたがいつもの事なので気にしない。
失礼します、と室内に入ると、彼も用事があったのだろう、入室した。
数学の担当教諭の所へ移動し、ノートを机の上に置いた。
「お、ご苦労さん」
「先生、か弱い生徒にこんなに持たせないでよね」
「はは、まだ若いんだから大丈夫だろうが!」
ノートをトントン叩く先生に、若いからとか関係ないですよ、重いのは重いです。と話すと笑われた。
ナイショな、と飴をいくつかもらったから、まぁいいか。と思う私は案外単純なんだろう。
失礼しました。と職員室から出ると、柱に寄りかかる兄の姿。
どうかしたのだろうか?
「どうかした?」
「母さんに言っておいてくれ、夕飯はいらないから、と」
「ん、了解」
「あぁ、頼んだぞ」
ポンと大きな手が頭に乗る。
撫でる手に苦笑を洩らせば、少し残念そうに手が離れた。
「じゃあ」
「あぁ」
くるりと踵を返すと、彼はスタスタと歩いていった。
あまり構って貰えないのが淋しいらしく、彼はよく頭を撫でる。
前に勢いよくやめて!と言ったら、姉が「構って貰いたくてしようがないのよ、蓮二は」とケラケラ笑っていた。
その時から、稀にだが、撫でさせている。が学校ではやめてもらうことにしよう。そう思い、教室へと戻ることにした。
act.3
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