余裕なんかない

テニスの王子様

梨麻の様子がおかしい気がする。

「梨麻?」

「え、何?」

「何って、授業終わったんだけど…」

チャイムが鳴ってもぼーっとしていた梨麻に話し掛けると、ハッとしたようにこっちを見た。

「いっ、いつの間に……」

「なんか様子が変なんだけど、なんかあった?」

心配で聞くけど、梨麻はなんとも言えない顔をして、笑っていた。

「んー、大丈夫だよ。あ、私今日はパン買ってこないと…」

俺の弁当箱に気付いたのか、梨麻はバッグから財布を取り出していた。
「ちょっと行ってくるから」と言って行こうとする梨麻の腕を掴んだ。

「リョーマくん…?」

「俺も行く。どうせなら屋上とか行こうよ」

最近は先輩たちがやってくるからゆっくり2人では食べれない。
たまには違う場所で、と思いながら梨麻と一緒に教室を出た。
購買には人だかりで、この中に押し入るのはキツいんじゃないかと思うが、梨麻は気にせず人だかりへと突っ込んで行った。
こういう時、言ってくれれば俺が行くのに…と思いつつ、自分の事は自分でする梨麻には好感が持てる。
人混み怖い〜と言って彼氏が買いに行かせる隣にいた女子を見てつくづく思った。その女子は視線に気付いたのか、よく分からないけど手を振ってきた。
知らない人だし、後ろに人がいるんだろうかと思い、顔を逸らしておいた。

「お、越前じゃねぇか!」

「……桃先輩、なんでここに…」

聞き慣れた声が聞こえ、振り向いた先には桃先輩がパンを大量に持っていた。
いつもはこの時間なら1年の教室に来てるのに…と時計を確認すると、自分の愚かしさに頭が痛くなるような気がした。
そうだ、桃先輩はいつもあと5分は遅かった。その理由は購買に寄ってくるからなのに。
その時、梨麻が人混みからパンを持ちながら出てきた。

「リョーマくん、お待た、せ…」

「梨麻、買えた?」

「あ、うん………」

桃先輩を見つけたのか、梨麻は急に黙ってしまった。そして少しキョロキョロしてから、口を開いた。

「えー、と、リョーマくん」

「梨麻? 早くどこか「あのさ、私用事思い出したから、行かないと」は?」

梨麻はパンを持ったまま、そのままそこから走って行ってしまった。

「梨麻!」

「……なんだ、勝手なヤツだな。ここまで越前連れて来ておいて……よし。越前、どうせだから俺と一緒に飯食おうぜ」

グイッと桃先輩に引っ張られてしまい、もう一度梨麻の方を見れば既にいなくなっていた。

「ちょ、何するんですか! 桃先輩!」

「なんだよ、いきなり」

「俺は梨麻と飯食おうと思ってたんですよ!」

「だーって、あいつ用事あるとか言ってたじゃねぇか」

「だからって…俺はそんなの納得が「越前? 桃?」」

名前を呼ばれ、振り向けばそこには大石先輩が立っていた。

「大石先輩、チーッス」

「……ども」

「ああ、珍しいな。二人がこんなところにいるなんて……というか越前がいるなんて、だな」

「大石先輩はどうしたんスか?」

「はは、英二や手塚たちと食べていたんだけど、ジャンケンに負けてお茶を買いに来たんだ」

「へぇ。英二先輩が提案したんスか? そんなこと言うのは」

確かに菊丸先輩なら言いそうだなと思っていると、大石先輩の口から海里先輩と天海先輩の名前が出た。

「そうだ、越前たちも昼まだだったら一緒にどうだ」

「いやぁ〜、俺は後輩同士、越前と「行くッス」越前!?」

「じゃあ、先に屋上行っててくれ」

桃先輩がなんか言ってたけど、梨麻に関しては海里先輩と天海先輩に訊くのが一番だ。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ぶつぶつ言う桃先輩と屋上に上がると、一番最初に気づいたのは菊丸先輩で、いきなり抱きついて来た。

「にゃんでオチビがここにいんのー? 俺に会いに来てくれたのかにゃ?」

「…違うっスよ…」

「そうだよ、英二。越前は僕に会いに来てくれたんだよね」

「不二先輩…」

菊丸先輩は不二先輩が離してくれたけど、相変わらず訳の分からないことを言っている先輩たちを無視して、俺は海里先輩と天海先輩を見た。

「あ、リョーマくん。昨日ぶり」

「あれ? 俺のエンジェル梨麻は? 一緒じゃないの」

「梨麻は? リョーマくん」

キョロキョロする二人に近寄り、ストンと真ん中に座った。それに関して他の先輩たちが何か言ってたけど、今は無視だ。

「なんか、梨麻の様子がヘンなんスよ……ぼーっとしてるし…さっきもいきなり用事思い出したから、って」

なんかしてしまったんだろうか。そんな風に考えてると、ポンポンと軽く頭を叩かれた。
天海先輩が微苦笑しながらこちらを見ている。

「梨麻はちょっと不器用だから、色々考えてるのかも。リョーマくん、あまり気にしないであげて」

「…………ういっす」

そう言われても、気になってしまう。梨麻に関してはあまり余裕がない。
悩んでるなら相談してくれてもいいのにと俯き加減になると、ムギュッと抱きしめられた。

「や〜ん、ちょっと考え事するリョーマくんも可愛い〜〜!」

「コラ〜! おチビに抱きつくなんて許せないぞ、天海〜」

「ふふん、羨ましかろう〜」

「クスッ、天海、越前から離れてあげたら。ほら、海里も何かいいなよ」

「ずるいぞ、天海! 俺もリョーマくんを抱きしめたい」

「そういう事じゃねーな、ねーよ!」

ギャーギャー騒ぐ先輩たちを余所に、俺は梨麻と一緒に帰ろうと考えたのだった。

(……て、いうか煩い…)

身体を揺さ振られながら俺はそんなことを思った。


To be Continued



あとがき

なんかおかしな方向に話がいってます。おかしい、本当におかしい。
リョーマside再びです。ヒロインが何かを悩んでいるのですが、まだ何かはっきりしない状態ですみません。
リョーマも逃げてしまったヒロインに、やや凹み気味です。


2011/11/13


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