曖昧感情
「なんで、逃げちゃったんだろ…」
自分でも分からない行動に梨麻は持っていたパンを持ちながら、花壇まで来ていた。
近くにあるベンチに腰掛け、バリッとパンの袋を開けた。
あむっとパンを噛んで、もぐもぐと食べていると「……にゃー」と小さな鳴き声が聞こえた。
「……猫…?」
辺りを見回して、ベンチの下を覗くと猫がいた事に気づいた。
「なぁ〜」と鳴く猫にお腹が空いているのかと聞いてみると、また「なぁ〜」と鳴いた。
パンを少しちぎり、地面に置くとはぐはぐと食べる猫を撫でた。
「可愛いね、お前。どこから来たの?」
猫はまだ小さくて、家にいる杏樹よりは大きいみたいだが子猫と言ってもいいくらいの大きさだ。
食べ終わったのか「なぁ〜」と鳴き、もっと欲しいのかこちらを見上げている。
「野良って訳でもなさそう…」
またパンをちぎって地面に置くと、はぐはぐ食べ始める猫。警戒心があまりないのはやはり飼われているんだろう。
でもなんだってベンチの下に?
もしかして──
「お前、迷子なの?」
分かる訳でもないのに問うてしまう自分に、梨麻は苦笑いをした。
それは、自分だろうに。
自分の気持ちがよく分からない、そしてリョーマくんの気持ちも分からないのだ。
「なんで、……」
考えてもさっぱり分からない。
どうしてなんだろう、だって私は……。
「痛っ!」
見れば猫が手に爪を立てていた。
「なぁ〜、なぁ〜」と鳴く猫は梨麻の持っていたパンを寄越せと引っ掻いてくる。
「あ、ごめん。もっと欲しかったんだね」
また一鳴きした猫は差し出されたパンをはぐはぐ食べていた。
梨麻もあまり残っていないパンを食べていると、違う茂みの方から「にゃ〜」と鳴き声が聞こえた。
それに反応したのか目の前にいる猫が「なぁ〜」と鳴くと、茂みから親猫らしき大きな猫が現れた。
梨麻を見て警戒しているのか寄ってはこない。代わりに目の前の猫が「なぁ〜、なぁ〜」と寄っていく。
「迎えが来たのかな? 良かったね、もうはぐれちゃダメだよ」
二匹の猫はやはり親子だったのか、親猫は付いてきなさいという感じに先に歩き、さっきの猫は後を付いていったのだ。
「行っちゃった……」
寂しさを感じながら、梨麻はゴミをベンチ近くにある屑籠に入れて、手を洗いにいった。
ピリッと痛む手に、さっき引っ掻かれたのを見て保健室へと向かったのだった。
手当てというか消毒をして、バンソウコを貰うだけだったが、保健医に職員室に書類を届けてくれと頼まれたので了承した。
(リョーマくんに用事ある、って言ってたからちょうどいいか…)
廊下を歩いていると屋上から降りて来たのか、リョーマくんたちにバッタリあった。
「梨麻、何して…」
「え、あ、先生に頼まれ「梨麻〜っ!」お、お兄ちゃん!?」
「今朝は酷いよ〜、置いて行くなんて〜」
「ええ? 私が悪いの!?」
「そうよ、梨麻。なんで起こしてくれなかったの? 久々に全力疾走する羽目になったのよ」
兄と姉に理不尽な事を言われていると、手から書類を奪われた。
「リョーマくん?」
「これ、持っていくんでしょ。行くよ」
腕を取られ、歩き出すリョーマにびっくりしているとお兄ちゃんたちはニヤニヤしていた。が、テニス部の方々は違った。
「え〜、おチビ行っちゃうの〜? せっかくファンタ奢ってやろうと思ったのにー」
ファンタ好きなリョーマくんは足を止めた。先輩は脈あり!と思ったのか、にんまり笑っている。
「菊丸先輩、それは放課後よろしくっス。じゃあ」
「え、ちょ、おチビ〜」
後ろからくそ〜と憤る菊丸先輩の声が聞こえたが、私はリョーマくんに掴まれた腕をただ見つめていた。
(……なんで、リョーマくんは、私を、好きなんだろ…)
そんな問いを自分に向けていた。
To be Continued
あとがき
もはや傍観じゃない。
さて疑問ばかりのヒロイン。リョーマを信じてない訳ではないですが、自分に自信がないので、こんな想いを抱きまくりです。
解決するのはリョーマだけなので、頑張って下さい(笑)
しかし傍観でもなんでもない。ただのリョーマ連載だ!
すみませんでした。
2011/11/15
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