鼓動は思うより正直で

テニスの王子様

「梨麻、今日一緒に帰るよ」

帰ろうとしたらリョーマくんからそう言われて、戸惑ってしまう。
でもリョーマくんはそれを気にしないのか、腕を掴んで歩きだした。

「リョ、リョーマくん!?」

「今日の部活、ミーティングだから少し待ってて」

「だ、だったら、図書室で待ってるよ」

「…………分かった、後で行くから」

そう行って手を放したリョーマくんは、バッグを肩に掛け直して、昇降口へと歩いていってしまった。
梨麻は掴まれていた腕に手を重ねながら、ただリョーマを見送った。ふぅ、とため息を吐いて図書室へと踵を返した。

「………どうしたんだろ…」

なんとなく不安になってしまった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


図書室に入ってから数十分たった頃に、扉がガラッと開いた。
チラリと見るがそこにはリョーマの姿はなく、国語教師が図書委員に本を返していた。
梨麻はため息を吐き、読んでいた本に眼を落とした。

「…………」

「……梨麻、」

「え、あ、リョーマくん」

夢中になっていたのか、気付いたら目の前にリョーマくんがいた。
前の席に座り、頬杖をついて見つめてくるリョーマくんにどくんと鼓動が早くなる。

「何、見てんの?」

「え、あ……天体の…」

「天体? ふーん、梨麻って宇宙とか好きなの?」

「そ、そういう訳じゃないけど……なんか不思議だなって、思えて」

「不思議?」

「なんていうか、信じられないんだ……うまく言えないんだけどね。こんなに広い宇宙があって、色んな沢山の星が存在して、その中に自分がいるっていうのが……」

「……よく分かんない」

「うん、自分でもよく分かんないからしょうがないよ」

眉を潜めたリョーマに、苦笑しながら梨麻も頷いた。

「……そろそろ行こっか」

パタンと本を閉じて、席を立った。リョーマも梨麻に倣い、立ち上がる。
梨麻が本を片付けてくるのを入り口付近で待ち、図書室から出ていった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


2人並んで学校から出ると、リョーマくんが口を開いた。

「梨麻、」

「ん?」

「話、あるんだけど……ちょっといい?」

「うん…」

じゃあ、こっちと言われ、梨麻はリョーマに手を繋がれて、後を付いていく。
余談だか後ろから何人か付いて来てるのには気付いていた、痛い視線で。
河原まで歩くと、リョーマは振り向いた。

「あ、のさ」

「う、ん」

「なんか、悩み事あったら言って」

少し俯きながら話し始めるリョーマに梨麻は眼を見開いた。

「リョーマくん、私は別に…」

「今日の梨麻、なんか悩んでるみたいだったから、気になって……俺の勘違いならいいんだけど」

繋いでいた手をさっきより強く握られた。
それを見ていると、どくんどくんと鼓動が早くなる。顔もなんだか熱くなっているような気がする。

「……、あの、ね…」

「梨麻?」

顔を上げたリョーマくんがジッと見てきて、反対の手で顔を隠す。隠せきれないけど。

「リョーマ、くんは……なんで、私が……す、好きなの?」

「──なんでって、好きだから」

「だから、なんで───っ」


答えが欲しくて、もう一度聞こうとしたらギュッと抱きしめられた。
一気に身体が熱くなって、ドクンドクンと心臓の音が早くなる。

「理由なんてないよ。梨麻が好き、それだけ」

「それだけって……」

「じゃあ、梨麻は俺のことどう思ってんの?」

「どうって……私、は……」

好きだよ、といつもみたいに言おうとしたら、言葉が出ない。なんでだろう、恥ずかしくて、出せない。
ドキドキドキドキと早まる鼓動に、自分のではないドクドクドクドクと早い鼓動を感じた。
これって、もしかして……もしかしなくても抱きしめられてるんだから、私のじゃないなら、リョーマくんの……。
そう思ったら、また顔が熱くなる。でも、きっと、答えは──。

「……梨麻、?」

「あ、私っ……リョーマくんのことが……好き、です…」

恥ずかしくて、俯いたまま言ったら強く、さっきよりももっと強く抱きしめられた。

「……やった、」

ぼそっと呟いたリョーマくんに何?と顔をあげると、チュッと音がしたのと柔らかい感触があった。
思わず頬を押さえるとリョーマくんが舌をチョロっと出して笑っている。

「やっと聞けた。梨麻の気持ち、嬉しいよ」

ニヤリといつものように笑う顔に、私は真っ赤になった。
リョーマくんはまだ私を掴んだまま、今度は顔を近付けてきた。

「ちょっ、リョーマくん!?」

「黙って………「「越前っ!/おチビーっ!」」……は?」

割って入ってきた大声に、リョーマくんは顔を上げた。
振り向けば、そこには桃城先輩、菊丸先輩、不二先輩に乾先輩、そして手塚先輩にお兄ちゃん、お姉ちゃんの姿が。
因みにお兄ちゃんとお姉ちゃんは彼らを押さえている。

「ちょっ、なんなんですか!? アンタらっ!」

「越前、公共の場で何をしようとしてる」

「おチビとキスするなんて許せないぞーっ!」

「許せねぇな、許せねぇよ」

「クスッ、越前。どうせならボクにしなよ」

私たちのファーストキスは先輩たちによって阻止されたのだった。
恥ずかしかったけど、ようやく想いが重なった気がして嬉しかった。
でもきっとこれから先輩たちの邪魔が入るのかと思うと、梨麻はため息を吐きたくなった。



To be Continued



あとがき

今回はヒロインがようやく気持ちをはっきりしました。
きちんとした両思いになりました、このカップル。
さてまだ話は続きます。とりあえず続きます。
よろしくお願いします。


2011/11/17


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