昼食をおすそわけ

テニスの王子様

今日は思いがけないことが多すぎる。
無理やりお姉ちゃんたちに連れてこられ、リョーマくんに5日ぶりに会う。そして、昔お隣に住んでいた蓮ちゃんこと、柳蓮二くんに再会したからだ。
蓮二くんはお兄ちゃんよりも背が高く、大きな、でも優しい手つきでポンポンと頭を撫でてくれた。

「大きくなったな、梨麻。……いや、前より小さいか?」

「……蓮ちゃ…じゃなくて蓮二くんが大きいからだよ!」

「フッ、そうか。元気でなによりだ」

「うん、蓮二くんもね!」

「…………俺、ランニング行ってきます」

横から掛けられた言葉にリョーマくんを見ると、一瞬目が合ったが、帽子の鍔をぐっと下げて、リョーマくんは走って行ってしまった。

「……あ、」

声を掛けようにも、さっさと行ってしまい「頑張ってね」の一言も言えずにいたのだが、お兄ちゃんたちが突然、吹き出した(といってもお兄ちゃんだけが盛大に笑った)。
振り返れば、お兄ちゃんも蓮二くんも乾先輩もなんだか笑っている。
訳がわからず、首を傾げていると蓮二くんが「なるほど、貞治の言った通りだな。面白い」と乾先輩同様、ノートにカリカリと書いていた。

「梨麻は分からなくても大丈夫だ」

「越前のいいデータが獲れた」

「あーぁ、梨麻も罪作りだね〜」

お兄ちゃんはぐしゃぐしゃと頭を撫でる。もっと優しくして欲しいものだ。

「じゃあ、俺たちも練習があるから行くぞ」

「ああ、まぁ、ちょこちょこ写真撮らせてもらうけどあんまり気にしないでくれ」

「ああ、分かってるよ。貞治、良かったら後でフォローしてやってな」

「ああ、分かった」

手を振りながら、手塚先輩と大石先輩、それに手塚先輩並に老けているのか黒い帽子を被っている人たちのところへ歩いていってしまった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ようやく練習が始まったようで、お兄ちゃん、お姉ちゃんはテニス部の写真をあちこちで撮っているようだ。
私? 私はお兄ちゃん、お姉ちゃんの荷物を整理するために合宿所の一室にいた。
というか合宿所?と疑問しか抱けない、最早ホテルにしか見えないんだけど。
聞いてみたら氷帝の監督のホテルらしい……監督のホテルって何?としか思えない。
普通じゃないよ、これ!と三人部屋を見渡す。
三人でもこの広さってありえない。しかも……。

「……パンケーキ、みたいだ…」

ポフッとベッドにダイビング。あまりのふかふかさにゴロンと天井を向く。
真っ白い天井にシャンデリアが見える。じーっと眺めながら思わず呟いた。

「……リョーマくん、どうしたの、かな…」

さっきのリョーマの様子が梨麻は気になって仕方なかった。

「迷惑、だったかなぁ〜……」

自分は久々に会えて嬉しかったけど、リョーマくんはテニスの練習で合宿(ここ)に来ているのだ。
練習熱心なだけに、自分の存在が邪魔になったら嫌だな〜と梨麻は身を縮めた。

「──ん、───ちゃん、梨麻ちゃん!」

「わひゃっ!?」

名前を呼ばれて眼を覚ますと、目の前にお姉ちゃんのドアップがあった。

「お、お姉ちゃん……?」

「もう梨麻ちゃんったら、こんなところでずっと寝てたなんて、ちゃんとリョーマくんの応援しなきゃダメでしょ」

「あれ、もう終わったの?」

眼を擦りながら、起き上がる梨麻に、天海は呆れたように見つめた。

「お昼だから呼びに来たの。みんなもう食べちゃってるから、梨麻の分ないかもよ」

「え〜〜……って、私たちの分もあるの?」

急に来た私達の分もあるんだろうか?と疑問を抱いていると、お姉ちゃんはフフッと笑いながらこちらを向いた。

「大丈夫! 竜崎センセと榊センセに頼んでおいたから。榊センセなんて、私達にデザート付けてくれるって。だから早く行こう」

伸ばされた手を取ってラウンジへと向かった。
付いた先は何やら騒がしい。
見てみれば、人集りが出来ていて「越前」「越前」と名前が飛び交っている。
うん、だいたいというか、何が起きているか分かった。
リョーマくんに皆さん何かを与えているか、隣の席を取り合っているかだ。つか両方。

「あーらら、リョーマくんは相変わらずモテるわねぇ」

「…………すごいね…」

「……それだけなの? 全く、そんなとこは相変わらずなのね。お姉ちゃんに任せなさい!──リョーマくぅぅぅん、梨麻を連れて来たわよ〜」

すぅっと息を吸ったお姉ちゃんは大声を出した。
その瞬間、リョーマくんに集っていた方々はこちらを向いた。……怖いよ、お姉ちゃん…。
こちらに気づいたリョーマくんは席を立ち上がってこちらに歩いて来た。

「りょ、リョーマくん……?」

「梨麻の分、こっちだって」

「え、あの…」

リョーマくんは私を引っ張るとお兄ちゃんが座っているテーブルへと向かった。そこにはまだ手が付けられていないご飯があるし、お兄ちゃんにはないデザートもあった。

「俺もこっちで食べていいっスか、海里先輩」

「んー、リョーマくんがいいならいいけど……あっちはいいわけ?」

お兄ちゃんが指差した方向を見ると、皆さんトレイを片手に移動しようとしてた。

「あっち煩くて食べられないんスよ、なんだかあの席がいいみたいで。俺はこっちで食べます」

リョーマくんは自分のトレイを持つと騒いでいた先輩たちに「ここ座っていいっスよ」と言ってこちらに来た。
お兄ちゃん、お姉ちゃんはクククッと笑っているけど、こちらを睨んでくる青学の先輩、それに他校の先輩方が怖いです。
せっかく美味しいと思われるランチが、針のムシロのせいで、味が分からなかったです。

合宿所でもリョーマくんは相変わらずモテモテだった。
あ、蓮二くんと話したかったけど乾先輩と笑いながらノートをとっていた。



To be Continued



あとがき

おかしい。リョーマが拗ねてたはずなのにいつの間にか直ってる。
まぁ、不貞腐れてたら、先輩たちが次から次へと現れ、イラッとしていたらヒロインがやってきて、イラッとしているよりはヒロインといたかっただけなんです。

感想頂けたら嬉しいです。


2011/11/25


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王子様はモテモテです top