放課後デート
『今日は部活が休み』と言う事で、リョーマくんと放課後デートな訳です。
先輩たちのお誘いをリョーマくんは見事スルーし、私を選んで下さいました。
まぁ放課後デートといっても所詮は中学生、行くところが限られているのが現状。
結局、ゲーセンにでも行ってみる?と提案したら、意外にもリョーマくんは頷いてくれた。
「意外」
「何が?」
「リョーマくんがゲーセン行くなんて思わなかったよ」
「別に、梨麻が行きたいなら俺は行くよ」
少しそっぽ向くリョーマくんに私はふふっと笑うしかなくなった。そんな風に言われたら、嬉しいから。
「じゃあ、リョーマくん。プリクラ撮ろうよ」
「別にいいよ」
「じゃあ、行こ」
リョーマくんの手を握って、駅前のゲームセンターへと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
騒がしい店内のプリクラコーナーで色々撮った後に、ぐるりと店内を歩いていた。主にクレーンゲームばかりを眺めていたら、某ゲームに出てくる猫のぬいぐるみを見つけた。
思わず駆け寄った私にリョーマくんは後ろからついてくる。
「可愛い……っ!」
「欲しいの?」
「うん! あ、でも、私、これ苦手なんだよね……今度お兄ちゃんと一緒に来て取ってもらおうかな……」
自慢じゃないが、私はこういうクレーンゲームで何かを取ったことが一度もない。
これでもかっていう位簡単に取れる状態になっている物すら取れないのだ。
む〜〜と唸っているとチャリンとお金を入れる音と共に、クレーンゲームの音が変わった。
「リョーマくん?」
「白いのと黒いのどっちでもいいの?」
「え、あ、白いの! って取れるの?」
「……さぁ…」
それでもどこか自信満々でいるリョーマくんに期待をした────が、残念な事に取れない。
「リョーマくん、もういいよ」
「でも欲しいんでしょ」
「……これ、アーム弱いみたいだし、取れないようになってるのかも。だからいいよ…」
にゃろう…とクレーンゲームを睨むリョーマくんに苦笑と感謝をしていると、後ろからどやどやとなんだか騒がしい感じがした。
先輩たちかな、と思いながら振り向こうとした時、声が聞こえた。
「アーン、越前じゃねぇか」
「ほら、やっぱり越前だっただろ!」
「ちょ、落ち着きや、岳人」
「珍しいな、こんなところにいるなんて」
「こんにちは、越前くん」
リョーマくんの嫌そうな顔を見て、後ろを振り向くと、テニス部の先輩たちと比べられないくらいの美形が揃っていました。
(この場にそぐわない方々がいました。合いそうな人もいるけど)
「氷帝の……アンタらこそ何してんスか?」
「ここは俺様の会社がやっているアミューズメントなんだよ」
え、経営者?とびっくりしてると、リョーマくんに腕を引かれ、後ろに回されました。
ポカンとしてると、なんか変な眼鏡を掛けてる人がこちらをジッと見てきたし、他の人からも一瞥されました。
「ふ──ん、じゃあさ、コレ欲しいんだけどやたらアームが弱いんだよね。なんとかならない」
「あぁん? こんなのが欲しいのかよ」
「つーか、これ人気のヤツじゃん! 俺も欲しい、跡部〜」
「そんなもん自分で取りやがれ!」
「だからアームが弱いんだよ、やってみなよ」
挑発されたのか、偉そうにしていた人が何故か指パッチンすると、デカイ人が現れて、コインを投入した。
そして挑戦するもスルッ、スカッと引っ掛かりもしない。
青筋を立てている人を見ていると、他の人たちも隣のクレーンをやり始めた。
訳が分からず(多分予想通りだが)コソッとリョーマくんに訊ねた。
「……リョーマくん、あの人たち、誰?」
「……あぁ、氷帝のテニス部レギュラー」
その言葉でもう聞かなくてもいいくらい予想が出来た。
(…………すごいな、リョーマくんて…)
そんな感想しか出ない。
しまいにはやはりアームが弱過ぎたのか、跡部と呼ばれた人は店長を呼び、謝らせながらリョーマくんにぬいぐるみを渡していた。
リョーマくんは腕いっぱいの猫のぬいぐるみを持ち、ため息を吐いた後私にくれたのだが、白いのと黒いのを貰って後はまたクレーンの中に戻して貰った。
リョーマくんが私にぬいぐるみをくれた時の皆さんの顔が怖かったのは言うまでもなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「野原 梨麻、です……」
ジーッと見られるのは果てしなく嫌だ。まして美形集団に睨まれているのは、リョーマくんが「俺の彼女っス」と言ったせいだ。
ゲーセンの後、無理やり連れて来させられたファミレスの大テーブルに座らせられ、自己紹介をしました。
「……彼女、だと?」
「……なんやて…」
「嘘だろ! こんな普通の…」
「普通だな」
「普通、ですよね」
次々に出てくる『普通』という言葉に悪いことではないのに、なんだかいい気分ではない。
ため息を吐くと、リョーマくんが呟いた。
「行くよ、梨麻」
「リョーマくん!?」
腕を引っ張るリョーマくんに慌てると、彼らもまた席を立った。
がリョーマくんはちらりと一瞥すると
「人の彼女のこと『普通』『普通』って失礼っスよ。『普通』の何が悪いって言うんスか、行くよ、梨麻」
「「「え、越前っ!」」」
リョーマくんは驚く彼らを振り返る事無く、彼は私を引っ張ってその場を後にした。
帰り道、リョーマくんが『なんか気分悪くさせて、ごめん』と謝ってきたが、決して彼は悪くない。
私は貰ったぬいぐるみを両手で持ち、
「私は大丈夫だよ。寧ろ、ぬいぐるみ貰えて嬉しかった……ありがとう、リョーマくん」
「……別に俺が取ったんじゃないし、」
「でもリョーマくんがいなかったら手に入らなかったもん。ありがとう」
ぬいぐるみを片手に抱くと、もう片方の手は、リョーマくんの左手と繋いだ。
リョーマくんは少しそっぽ向きながら、「杏樹に会いたいんだけど」と言うから、顔を綻ばせて「家に寄ってって!」と彼を引っ張って帰った。
青学の先輩が珍しく来ないと思っていたら、リョーマくんが釘をさしていたと後からお姉ちゃんたちに聞いた。
それでも邪魔が入るから、リョーマくんはモテモテなのだ。
To be Continued
あとがき
昨今の中学生デートがよく分かりません。こんなんじゃねぇよ、だったらすみません。
さて今回は青学の皆さんには休んで頂き、氷帝の皆さんに出て頂きました。
出たのは跡部、樺地、忍足、向日、宍戸、鳳たちです。ジローはいたとしても樺地に抱っこされて寝ていたかも。でもリョーマがいるなら起きるはずだから、多分いない(笑)
跡部がクレーンゲームで何も取れなかったら笑えます。自信満々なだけに。
リョーマは普通であるヒロインが好きなんです。キャーキャー騒がないしね。
近いウチにリョーマside書きます、多分。
2011/11/04
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