序章

テニスの王子様

マネージャーになって、今年で三年目。
元々はテニス部だったお兄ちゃんのせいだが。当時の部長さんに頭を下げられたからでもある。
お兄ちゃんは元々サボりがちであったが、実力はかなりのモノであった。
「常勝」を掲げる立海大としては、兄には参加してもらいたいらしい。
だが、その「バカ」兄は私が同じ部にいないとやる気が出ないねん。などと抜かした。
結果、私はマネージャーとして日々裏方として動いている。
だが、ぶっちゃければ辞めてしまいたい。が情というモノもあり辞めづらい。

「まどか、まだマネージャーやっとんの? お兄ちゃんおらんのやから、辞めてええんやで?」

そんないい加減に辞められますか!と私は続けてきた。
あまり親しいとは言えないかもしれないけど、部長、副部長、参謀、所謂「立海三強」とは互いに信頼していると思っている。多分。
入院中の部長は元より、三人からは「お疲れ様」「いつもすまないな」「ありがとう」などと言われていた。そう言ってくれていた。
だが、それもなくなってしまった。

新マネージャー、夢野 美知ちゃん。
三年生に進級してから、千葉県から転校してきた。
こんな時期に?と疑問を抱いたが、家庭の事情なのだから、検索する気はない。
部員でレギュラーである丸井くんと仁王くんのクラスに転入なのだが、すごい可愛い子が来た!と離れたクラスである、ウチの組でも盛り上がっていた。

前兆は、多分、あの時なんだろう。
転校生が来たと盛り上がっていた日の放課後、私はいつものようにマネの仕事をしていた。
ドリンクの準備をしていると、練習中の柳くんが水道場に来たのだ。

「毛利」

「柳くん? あ、え? もう休憩?!」

慌てて、腕時計を見てみるとまだ時間がある。あれ?と思っていると、柳くんが口を開いた。

「いや、違う。……少し、訊きたいのだが、いいだろうか?」

「へ? あ、うん…、あ、やりながらでもいい?」

「構わない。では、聞くが……マネージャー業は一人では大変か?」

「え?…うーん、そうだね。一人だとキツい時もあるよ?」

意外な質問に手が止まった。が、素直に答えた。
だって、ドリンク用意するのも、タオル準備するのも、その他雑用もなかなか一人ではキツい。
コート整備やボール拾いは主に一年生の仕事ではあるけれど。

「そうか…分かった。すまなかったな、手を止めさせてしまった」

「大丈夫、これくらいなら」

肩を竦めると、フッといつものように涼やかに笑ってコートへ戻っていった。
どうかしたんだろうか? そんなことを思いながら、ドリンクの用意を続けた。
タオルは既にカゴに入れて、ベンチに置いてある。
頭のなかで、次にすることを考えながら、作業をしていた。



序章


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