君に恋をした日
その人の事は知っていた。でも、ただ知っていただけだった。
有名だったし、友達にも何人かファンがいたから。
でも自分とは関わらないと思っていたし、まして好きになるなんて思わなかった。
「あ、喉渇いたから自販機寄ってい?」
「いいよ」
友達に断りを入れて、購買に近い自販機に立ち寄った。
いつも買うのは決まっている。ファンタだ。
お金を入れて、押そうとした時ガタンッと先に落ちて来た。
「あれ? 押してないのに出てきた」
「え、超能力? 咲良がいつも買うから?」
「そんな訳ないでしょ……ってなんでコーヒー? ファンタじゃないじゃん」
「あ、ごめん。私だ」
友達の言葉に屈んでいた身体を起こせば友達が自販機に寄りかかったせいでコーヒーのボタンを押していたらしい。
だから、押す前に出てきたのだが……
「ちょっと! 私はコーヒーじゃなくてファンタが飲みたいのにぃ〜」
「いいじゃん、たまにはコーヒーくらい飲みなよ」
「良くない! 私はファンタじゃなきゃ嫌なの!」
ぎゃあぎゃあ騒いでいると、背後から声が掛けられた。
「ごめんね、通してくれる?」
「え? あ、不二くん! ごめんね」
「ちょっ!?」
友達にグイッと引っ張られて、文句を言おうとすれば、友達は顔を少し赤らめてニコニコと笑っていた。
キモっなんて思ったが、言ったら殴られるかもと口に出さないでいると、持っていたコーヒーを誰かに取られた。
「何す……」
振り向くとそこにはクスッと微笑する不二くんと差し出されたファンタがあった。
「え?」
「ファンタがいいんだよね? ボクはコーヒーでいいから」
そう言ってファンタを手渡してくると、それじゃと言って踵を返して歩いて行ってしまった。
隣で友達が羨ましいだのズルいだの言っていたが、元はと言えば彼女のせいなのに…と思うも私はボーッと彼の後ろ姿を見つめていた。
それが、彼に恋をした1日目だった。
To be Continued
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