第1話

テニスの王子様

瞳に映るのは、見覚えの無い風景


「おっはよー、優花」

「おはよう、友ちゃん。これ返すね」

学校に着き、机に教科書などを入れているとお友達の友ちゃんが来た。
席が隣同士もあり、仲良くしてもらっている。
『テニスの王子様』は友ちゃんが面白いからと貸してくれたものだ。

「もう読んだの? じゃあまた続き持ってくるね」

「うん、ありがとう」

「ごめんね。早く貸してあげたいんだけど妹も読んでるからさ〜」

申し訳なさそうにする友ちゃんに優花は微笑しながら「気にしないで」と伝えた。
そしていつもと変わらない日常が始まる。
友ちゃんとは3年になってから友人になったが、色々な事を知っていたり、そのくせ漫画やアニメが好きな友達だ。
オススメ!と言って貸してくれた『テニスの王子様』は優花が読む事はない少年雑誌であり、彼女の一番好きな漫画だ。
たまに『トリップしてみたい』と言っていたが、優花はそれに苦笑しながら聞いていた。

「そういえば、優花のおじいちゃんたち旅行なんだっけ?」

「うん、昨日からだよ」

「じゃあさ、今日泊まりに行ってもいい? 優花、アニプリ見たことないでしょ!」

「アニプリ?……あぁ、テニプリのアニメの方?」

「そうそう、明日休みだし、一緒に見ようよ」

「うん、いいよ。楽しみ!」

二つ返事をすると、友ちゃんも喜んでいた。家で見てるとお母さんがうるさいんだって。
休み時間は友ちゃんと夜の事が楽しみで、色々話した。

「じゃあ、用意したら優花ん家に行くから」

「うん、分かった。私、買い物して帰るから、また後でね」

「オッケー!」

親指をグッと上げて、友ちゃんは走っていってしまった。
私も急がなきゃ、と優花は商店街まで歩いたのだった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ガサガサと買い物袋を持ちながら、優花は家路へと急いでいた。

「いっけない、早くしないと友ちゃんが来てるかも」

商店街がやや混雑していたせいでなかなか人混みから脱出出来ずにいたのだ。

(なんか事故でもあったのかな?)

疑問を抱きながら、いつもの道を歩いていた。否、歩いていたはずだった。

「あれ?」

こんな道あったかな?疑問に思いながら、辺りを見渡した。

「え?」

気付けば知らない街並みに優花は首を傾げた。

「迷子、?」

なんとなく口に出した言葉に優花は笑いたくなった。中3にもなって迷子なんて馬鹿な、と思った矢先、ちょんちょんと服を引っ張られた。
振り向けば、ややおかっぱの小学生くらいだろうか。

「お姉ちゃん、迷子なの?」

「え、えと…」

なんとなく恥ずかしくなりながら、優花はその子に先ずは場所を聞いた。

「そ、そうみたい。ここどこか分かる?」

「神奈川だよ」

「………………はい?」

「ここは神奈川県なんだよ、爺ちゃんに教えて貰ったんだ」

神奈川?なんで?
だって私が住んでる場所は神奈川県なんかじゃなくて……。
優花は急いで携帯を取り出した。
友ちゃんにリダイアルするも耳に流れ込む音は機械的な女の人の声。

『この電話番号は現在使われておりません』

次に家にも掛けるが同じ。友ちゃんの家電にも、他の友人にも掛けたが同じアナウンスだった。

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「……ここ、どこ…?」

耳から携帯を下ろし、優花は呆然と呟いた。

「お姉ちゃん?」

声を掛けられ顔を向けたら、さっきの男の子が立っていた。
少し眉を下げて、心配そうに。

「え?」

「道が分からないの?」

「え、と……その」

「どうかしたのかな、左助くん」

「ひいじいちゃん! なんかこの人が困ってたから声かけた」

「ん、どうしたんじゃ? 顔色が悪いぞ」

その子の保護者というか曾祖父さんが怪訝そうにこちらを見てきたが、少し驚いている。

「あ、あのっ……私、何がなんだか……えと、ここは神奈川なんですか?」

「あ、ああ。ここは神奈川県じゃが……お嬢さんっ!?」

嘘をついてる訳がない。嘘をついても意味がない。
優花はガクンッと膝から崩れ落ちた。

「……こりゃ、一体。……何か、あったのか? 良かったら話を聞こう、家に来るがいい」

「大丈夫です、すみません! 家に帰りま──」

どうやって?
だって、こんな場所、私は知らない。
目の前には知らない風景があった。



To be Continued


2010/12/08 執筆
2012/01/01 公開


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