第2話

テニスの王子様

ここはどこ!?


訳の分からないまま、私はおじいさんと男の子に連れられて彼らの家に招かれた。
その家が凄い日本家屋で私は驚いたのは言うまでもない。
こんな立派な門構えの家なんて、近所にはなかった。長く続く塀にも驚いたくらいなのに。

「さぁ、とにかく入りなさい。左助くん、志保さんにお茶を淹れてくれるように頼んどくれ」

「はーい。おばあちゃーん」

左助くんと呼ばれた男の子は長い廊下を元気に走って行ってしまう。
それを見たおじいさんはやれやれいった風だが、楽しそうな顔をしていた。その表情におじいちゃんを思い出す。
あぁ、ここはどこなんだろう。
不安になる思いを抱え、私はおじいさんに案内され長い廊下を付いて歩いた。
居間に連れてこられ、座りなさいと言われるがまま腰を下ろした。
向かいに座ったおじいさんは、先ずは私の名前を聞き、どうして顔を青くしていたのか聞いてきた。
具合が悪いのか、と聞かれたが私はただ首を横に振った。
やがて、バタバタと足音がして襖がスパンッと開いた。

「爺ちゃん、ばあちゃん呼んで来たよ! あれ、お姉ちゃん、どうしたの?」

「…え、」

「なにか泣きそうな顔、してるけど、爺ちゃんに苛められた!?」

「ち、違「失礼します。お義父様、お茶をお持ちいたしました……」」

男の子に顔を覗き込まれ、見当違いの事を言われ直ぐに否定しようとして、また襖が開き、綺麗な和服の女の人が入ってきた。
女の人は私の姿に少し驚いていた。なんでだろうと考えていると、おじいさんが口を開いた。

「志保さん、ちょうどいい。入ってくれ」

「は、はい……」

女の人はちょっと困惑しながら、お茶を並べ、腰を下ろした。不審に思っていたのだろうが、その時の彼女にはそこまで気にする余裕はなかった。
優花はただ、ただ、分からずにいたのだ。
いつの間にか移動した見知らぬ場所、繋がらない電話、それが不安で堪らなかった。
不安で、自分に何が起こったのか怖くて、手が震えていると、ふっと手に暖かいぬくもりが灯る。
見れば、男の子が私の手を握ってくれている。

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「え、あ……っ」

ポロポロと零れる熱い水滴に優花は口唇を手で覆う。

「…あ、の……話っ、聞いて貰えます、か…」

怖くて、怖くて、助けて欲しくて、話を聞いて貰いたかった。
彼らは優しいのだろう、ゆっくりでいいから。と言ってくれた。
おじいさんと女の人は、私がぽつりぽつり話す言葉を聞きながら、時折顔を見合わせている。
男の子は分からないといった風に首を傾げて聞いていたが、彼が繋いでくれている手が暖かくて、自分がここにいるのが分かった。

「───そんなことが…」

驚く女の人の言葉に、自分の存在が少し否定された気がした。
自分の存在というか、私の記憶が。
俯いてしまうと、ハッとしたのか「違うのよ」と言ったので顔を恐る恐る上げた。

「信じないという訳ではないのだ。ただ不思議なことなのでな……それに」

二人は顔を見合わせた。

「そんな真摯な眸をした人が嘘をついているとは思えない」

「左助くんがそんなに懐いていますしね」

「だってお姉ちゃんは嘘をいう人じゃないよ! それに爺ちゃんたちやお父さんたちがいつも言ってるじゃないか、困っている人には親切にしなさいって! お姉ちゃんが困っているんだから助けてやってよ」

ギュッと手を握る男の子に驚きながらも、胸の奥が熱くなる。
ありがとう、信じてくれて。

「左助くん。わしを見くびって貰っては困る。こう見えて人を見る目はあるぞ」

「爺ちゃん…」

「お嬢さんや、ゆっくり我が家で過ごして帰り道を探そうじゃないか」

「……え、あの……」

びっくりするしかなくて呆然としていると、柔らかい手がもう片方の手を握った。

「……びっくりしたわね。きっと不安だったでしょう。私たちにはどうすることは出来ない出来事だけど、あなたを守ることぐらいは出来るわ。それまでは家にいていいわ。ね、お義父様」

「ああ、勿論じゃ!」

「我が家に女の子が増えるなんて、嬉しい限りですね」

ウフフと笑う女の人は嬉しいそうに微笑んだ。
自己紹介をされ、おじいさんは真田 弦右衛門さん。女の人は弦右衛門さんの息子のお嫁さんで志保さんという。
そして男の子は弦右衛門さんのお孫さんではなく、ひ孫で左助くんというらしい。
驚いたのは志保さんが左助くんのお祖母さんという事だった。




To be Continued


2012/01/01


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