第3話

テニスの王子様

知っている物語


あの後、左助くんのご両親と志保さんの旦那さん(左助くんのお祖父さん)が帰宅した。
私の存在にびっくりしながらも、弦右衛門さんの機転というか、志保さんのアドバイスにより私は知人の孫娘ということになった。
ちょっぴりヘビーだけど、火事に合い、天涯孤独になったという話だ。身寄りがないのだが、弦右衛門さんが世話になった方の孫だから世話をしたいという荒技である。
本当の事を言ってもいいと思いながらも、信じてもらえるのかは分からない。
それは追々でもいいじゃないと志保さんに言われてしまえば従うしかないのだ。
ちなみに左助くんのご両親、つまりは志保さんの息子さんは総一郎さんで、お嫁さんが香織さんといってこれまた美男美女。
香織さんも志保さん同様、女の子がいると華やぎますね、お義母さま!と言い合っている。
それには志保さんの旦那様、総史さんも総一郎さんも苦笑している。
話によるとまだ志保さんには息子さんがいるらしい。
部活をしているせいか帰りが遅い時があるとか、どんな人なんだろうと思う。
きっと志保さんの息子さんだから、優しいに違いないと総一郎さんを見て思う。

「優花ちゃん」

「は、はい!?」

話かけられドキッとして、振り向くと香織さんと左助くんがいた。
香織さんは苦笑いをしながら、一度左助くんを見た。

「あ、あの…?」

「優花ちゃんって、中学生なのよね?」

「は、はい。一応、中3です…」

なんだろうと思いながら、答える。確かに中学生には見えないかもしれない。
でも一応身長は平均に近いはずだけど……。

「う〜ん、やっぱり無理じゃないかしら。左助」

「え〜、俺、お姉ちゃんとがいい」

「でも、やっぱり」

一体何の話かが全く見えない。
どうしたんだろう。

「あ、あの、どうかしたんですか?」

話しかけると香織さんは困ったように頬に手を当てた。

「それがね、「俺、お姉ちゃんと一緒にお風呂入りたい!」……っていうんだけど、やっぱり嫌よね」

「……え、と…」

いきなりのことで驚きながらも、左助くんを見つめると、ダメ?といった風にこちらを見つめている。
左助くんは六歳といっていたし、誰かと一緒に入るなんてお姉ちゃんと以来だから、なんだか嬉しくなった。

「大丈夫です。左助くん、一緒に入ろうか?」

「本当!? やったぁ!」

喜んでくれる左助くんに笑うと、香織さんはちょっとびっくりしている。

「本当にいいの、優花ちゃん?」

「はい。お世話になりますし、このくらい平気です」

「そう。……じゃあ、お願いするわ。あ、着替えは私の卸してないのがあるからそれを使ってね」

「は、はい。こちらこそありがとうございます」

頭を下げてお礼を言うと、ぐいぐいと制服を引っ張られた。

「お姉ちゃん、行こう!」

「え、ま、待って…」

パタパタと引っ張られ、洗面所へと向かった。
その時、居間では総一郎さんが香織さんにつねられているなんて思わないことでした。

「カッカッカッ、まるで姉弟のようじゃな」

「左助のヤツ、上手い具合に若い女の子と風呂入るだなんて、けしからんな」

「あなたがいうことじゃないでしょ」

「…………いいなぁ、左助……っ痛! 痛いよ、香織!」

「馬鹿なこと言わないで下さい! 左助に変なこと聞かないで下さいよ」

「わ、分かってるよ!」

「「「(我が子/孫ながら、弦一郎とは似ても似つかわないな)」」」

そこでもう1人の息子はまだ帰ってこないのかと考えたのだった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ちゃぽんと檜の薫りがするお風呂に左助くんと入った。
大きなお風呂だから二人でも全然余裕でびっくりする。
身体を洗ってあげて、肩まで浸かり、優花は改めて左助にお礼をいった。

「何が?」

「だってあの時左助くんが声かけてくれなかったら、私、今頃どうなってたか分からないもん」

「だって爺ちゃんたちやお父さんたちがいつもいっているんだ、困った人がいたら助けてあげなさいって。オジサン……弦一郎もうるさいくらい言うしね」

「ゲンイチロー?」

「お父さんの弟で叔父さんなんだ。顔もなんかオジサンみたいなんだよ」

笑う左助くんはお湯をチャプチャプする。飛沫がとぶが優花は考え事をしていた。
ゲンイチローという名で思い浮かんだのは『テニスの王子様』に出てくる真田 弦一郎のこと。

(……あれ、真田って、左助くんも真田だったよね…)

しかも場所は神奈川。立海がある場所だ。
だが優花はふるふると頭を振る。

「……まさか、ね」

「どうかしたー?」

「ううん。そろそろ上がろうか」

程よく暖まったし、お風呂から上がることにした。
タオルで身体を拭き、左助くんが怪獣のパジャマを1人で着てるのを眺めて優花は笑った。
仕草がなんだか可愛らしい、そう思いながら、香織さんからお下がり?の下着を着けた。ちょっと大きいけど仕方ない。
その時、カラッと扉が開いた。

「左助くん、風呂は上がっ……」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………──っ、きゃあああぁぁぁ!」

「すっ、すまない!」

バンッ!と勢いよく扉は閉まった。
だが、どういうことだろう。
優花はへなへなと床へとしゃがみ込む。
隣ではお姉ちゃん、大丈夫?と左助くんが聞いていたが優花の耳には届かなかった。
一瞬だったが、彼は……真田 弦一郎だ。間違えたりはしない。
だって憧れていたから。
でも、なんで、マンガの中の彼がここに……?
パーツが填まる。
見知らぬ場所、知らぬ間に移動した神奈川、マンガの世界にも神奈川はある。そして真田 弦一郎。
そういえば、さっき見たニュースでもテニスがどうのこうのとプロ野球より話題が長かった。
特化したテニスの世界……もしかして、此処は『テニスの王子様』の世界……?
トリップ、してしまったのだろうか、この世界に?



To be Continued


2012/01/07


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