季節外れのエイプリルフール

テニスの王子様

シャンシャンシャンと鈴が何処かで鳴り、街中が赤や緑のクリスマスカラーに染められているこの時期。
別にプレゼントが欲しいと願っていた訳ではない。……少しは期待していたけどさ。
プレゼントなら2ヶ月くらい前に貰った気分だった、そう彼氏が出来た時に。
やった、これでクリスマスはシングルベルではなく、ジングルベルだとウキウキで過ごせる!なんて考えていたのがいけなかったのか、それとも3ヶ月神話なのか(1ヶ月早いけど)それはやってきた。

「……は?」

「だから、名前ちゃんみたいにエスカレーター式の附属校じゃないから、大変なんだ」

目の前には恋人である彼氏が困ったような顔をして手を合わせていた。
つまり、これは──

「……別れたい、ってこと?」

「勉強に集中しなくちゃなんねぇから…さ」

なんで、よりにもよって今日なんだ。
そんなことを考えていると、彼は自分の飲んだコーヒー代を置いて、じゃあと出ていく。
頭がついていかず、テーブルに突っ伏した。

なにこれ……。

クリスマス当日に恋人に別れを告げられるなんて、ありえない。
カバンの中に入ってる男性用のマフラーと手袋、どうしてくれるのよ。
ぐっ、とコーヒー代を握り、まだ間に合うと喫茶店を出た。
彼の為に、選びに選んだプレゼントくらい渡したい。そう思って走り始めた。

ああ、家に帰ったなら、方向はこっちだよね。と向きを変えると、ドンッと人にぶつかってしまった。

「苗字?」

名前を呼ばれ、ぶつかった相手を見上げるとそれは同じクラスの柳くん。
柳くんといえば、テニス部の三強の一人だし、頭脳明晰、冷静沈着、和風美人と呼ばれる人だ。

「柳くん……あっ! そうだ、柳くん」

焦っていたせいか、知るはずもないのに柳くんに彼を見なかったか訊ねてみた。まぁ、服装などを慌てて付け足したけどね。
分かるはずがない、と思ったが、さすがデータマンと呼ばれているのかなんなのかはよく分からないが、見たと行っていたのでどちらに向かったかを訊ねた。

「本当に? ありがとう!」

礼を言って行こうとすれば、腕を取られた。

「なに?」

「俺も手伝おう」

「はい?」

「もし間違っていたら、悪いからな」

フッと微笑され、少しドキッとした。だって綺麗なんだもん。
くそう、男に負けるなんてなんか悔しい!

とりあえず、柳くんに手伝ってもらいながら彼を探す。人混みがあるから難しいかな、と思えば長身の柳くん、見つけたらしい。

「あれじゃないか?」

「あ、本当だ」

見れば、雑貨屋の前にいるのを発見。
背が高いからか、直ぐに見付かったらしい……すごいな、身長を5cmでいいから分けて欲しい。

「ありがとう、柳くん。おー……ぃ……」

柳くんにお礼を言って声を掛けようとして、止まった。
だって彼にふわふわ巻き髪の女の子が抱きついている。彼も笑っている。その様子は兄妹とかではなくて、恋人にしか見えない。
あれ、もしかして、これって……新しい恋人が出来たから、別れてくれってことだったんじゃ……。
なに、それ……。
呆然としてその光景を見ていた。

「苗字…」

不意に柳くんに話し掛けられ、ハッとする。
あー、なんか情けない。
あまり親しくない柳に呆れられるのも情けなかった。
ふられたんだな、とか考えるよね。そう思うと同時に悲しくて恥ずかしくなった。
振られて悲しい、勘違いして恥ずかしい
なに簡単に騙されてたんだろう、私。
プレゼントの入ったカバンのをギュッと握り、傍らにいる柳くんを見上げた。

「──ごめん、人違いみたい。それと用事思い出したから、もういいや。ありがとね、柳くん」

「……」

「じゃ、また新学期で。よいお年を」

そそくさと逃げるように、柳くんの返事も聞かずに私は走りだした。
ダメだ、ダメ。まだダメ、こんな街中で泣くなんて、止めとけ。
だがそれでも頬に熱いモノを感じる。ホワイトクリスマスが期待される灰色の空の下は寒い。
こんなクリスマスなんて、あってたまるか!
嘘であって欲しい、そう願いながらも何処かで分かっていたような気がする。
走って、走って、人通りの少ない川まで来ていたのに気付いたのはグンッと腕を取られたからだ。

「っ、なっ? や、柳くん……」

見れば、さっき別れた柳がいた。
その柳のいつも表情が乏しいといっていい顔が、少し歪んだ。

「どした、の…?」

スッと細く長い指先が顔に近づき、頬をさらった。
涙を拭われていたようで、真っ赤になる。そんなこと慣れてない!

「……振られたのか?」

「っな、……うるさいわよっ! そんなのアンタにはかんけっ……!?」

ストレート過ぎる質問にカッと来て、怒鳴ろうとしたら柳に抱きしめられていた。

「……っちょ、何するのよ! 離しなさいよ!」

「嫌だ……」

「何でよ、離しなさいよっ!」

「好いた女が泣いているのを放っておけるか」

耳元に流れこんできた言葉に、身体が止まった。
なんて言った、いま、こいつは。

「は?」

「……人の一世一代の告白をそのような反応で返されるとはな」

「なに言って……」

柳が私を好き?
そんなまさか、ないない。
なんなのよ、今日は。
彼氏からは一方的に別れを告げられるわ、柳に告られるわ……エイプリルフールみたいだ。
今は、まだまだ寒い12月なんだから、そんな嘘はつかなくても

「悪いが、嘘ではない。俺はお前が好きだ」

思いがけない柳の告白に、私は眼を真ん丸くするしかなかった。
いきなり過ぎる展開に、嘘としかいいようがないじゃない、こんなの。


END


あとがき

短編というかSSのリハビリを……してみました。
連載ばかりしか書いてないのでこういうのは久々すぎるのですが、どうでしょうか?
アンケートに短編など希望する方が少しいて、書いてみましたが……訳が分からないですね(苦笑)

テーマも訳が分からない。すいません、本当に訳が分からない。
一気に書いたからか話が分かりませんね。


2010/12/26


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