永遠を誓う唇

名探偵コナン

母にしてやられた。
結婚を承諾してくれた彼女の事をいち早く両親に伝えれば、喜んでくれたし、父も母も以前から愛莉さんを可愛がっていたのもある。
ホテルをとってあるという志保さんに対し、両親はせっかくだから泊まっていって欲しいと懇願した。
母はイギリスの話を聞きたいらしく、愛莉さんと楽しそうにしている。父は仲間に入りたそうにしていたが、母が独占し、しまいには一緒に寝ることにしたらしい。

「探さん、探!」

志保さんと愛莉さんがお風呂に入っている間に母に呼ばれた。

「どうしたんですか、お母さん」

「あなた、今夜はどこで寝ますの?」

「どこって、自分の部屋に……」

「バカですか? 今夜は愛莉ちゃんは私と寝ます。あなたは志保さんと寝なさい」

「な、何を言って……」

「結婚を前提としているんです。そのくらい大丈夫です」

「…………し、しかし…」

「探。私は愛莉さんを孫として受け入れる気満々です。あんな可愛い子が私の孫になるなんて嬉しすぎます。そして、志保さんに似た孫はもっとみたい。ですから、頑張りなさい」

「…………お、お母さんっ!!」

信じられない言葉にクラクラしていると、パタパタと廊下を走る音が聞こえてきた。

「待ちなさい、愛莉!」

「だって、おばあちゃんと寝るんだもーん」

「だからって走ったりしちゃダメでしょう」

近づいてくる二人に僕は焦ってしまうが、母は嬉しそうに愛莉さんを出迎えるように廊下へと出た。

「あ、おばあちゃん」

「さぁ、愛莉ちゃん。おばあちゃまと寝ましょうね〜。あ、その前に婆やにホットミルクを貰いましょう。婆や、婆やぁ〜」

「母さん!」

「頑張るのよ、探!」

愛莉さんの手を繋いで、キッチンへと向かう母に手を伸ばすもフフフと笑いながら行ってしまった。

「………お義母様、随分とご機嫌みたいね」

愛莉さんを追いかけてきたのだろう、いつの間にか後ろに志保さんがいたようだ。
振り返ると、 少し髪が濡れた状態で頬が色付いている志保さんがいた。

「し、志保さん。髪が濡れてます」

「……これくらいなら大丈夫よ」

「ダメです。風邪をひきますよ」

「は、白馬くん…」

志保さんの手を掴むと、自室へと連れていった。
ソファーに座って下さいといえば、彼女は少し笑みを浮かべて椅子へと腰をおろし、自分も隣に座った。
ドライヤーを少し離して当て、手梳しで赤みがかった髪をすいていく。
さらさらと流れる髪は出会った頃とは違い、胸元まで伸びている。

「…熱くないですか?」

「ふふ、気持ちいいわ」

後ろにいる僕を見上げるように顔を上げる志保さんはとても綺麗としかいいようがない。
化粧を落としても、素顔でこんなに美しい人はそうはいないだろう。
真っ白い首筋に、ドキリとする鎖骨にどうしても目に入る谷間。
自分は理性的だと自負していたはずなのに、ダメだ、と思った時にはもう手が出ていた。
彼女の白い首筋に指を這わせ、顎を持ち上げて唇を威張った。

「…んっ、」

鼻から抜けるような甘やかな声が耳に入り、貪るように口づけを深くしていく。
身体をゆっくりと自分へと向き合わせて、ドライヤーてま暖められた髪に手を差し入れて彼女を味わう。くぐもった声でようやく唇を離して抱き寄せた。
だらんと放り出されている真っ白で滑らかな手を取ると、まだ少し息が乱れている彼女の眸を見つめながら口づけをした。

「………志保さん、」

「……白馬、くん…」

「……愛してます、」

だから、あなたが欲しい──。
真っ直ぐと見つめて口にすれば、頬が真っ赤に染まるのを見て、もう一度顔を近づけた。
はぁ、と吐息が洩れ、彼女の腕が背中に回るとそのままソファーに押し倒した。
くちゅ、ちゅと洩れる水音にくぐもった声が早急に彼女を欲しがる。

「……って、待って、その、ここじゃ…」

恥ずかしそうに両手で胸元を押してくる志保さんから一度離れると、彼女の膝裏と背中を支え、続き部屋の寝室へと移動した。
ベッドに押し倒すように彼女を寝かせると、頬に手を添えてまた唇を奪う。
柔らかな感触が気持ち良くて、止められない。
次第に、頬へと移り、首筋、鎖骨へと唇を這わせれば、彼女は吐息を洩らしていく。

「っ、は、白馬、くん……」

「………なんですか…」

白い膨らみへと、その頂きへと唇を這わせながら彼女が訴えてくるのに応えた。

「あ、あの……」

「……今更、止めろと言われても、無理ですが…」

「そ、そうじゃなくて……あの、」

どうしたのかと、彼女の顔を見れば真っ赤に染まっている。とても、いつもクールな彼女とは思えないぐらい可愛らしくて、白馬はまじまじと彼女を見つめた。
あまり見つめられることに抵抗があったのか、志保は両手で顔を隠しながら、ボソボソと何かを漏らした。

「……………く………て…」

「え?」

「その、……だから、私、一度しか、経験がないの……だから……」

優しくして…。と眸を逸らしながら話す志保に、白馬はいいようのない感動で胸がいっぱいになった。
理性を抑えられる訳がない。しかし、彼女の願いは叶えたい。
せめぎ合うそれらを出さないように、白馬は必死になりながら、顔を隠す志保の両手を掴んだ。

「……あ、あまり、顔、見ないで……」

「………」

気まずそうに眸を逸らしたままの彼女の額に口づけをして、白馬は「愛してます」と言葉を告げると再び、彼女の紅く妖艶な唇を貪ったのだった。













優しく出来たかは、白馬には分からなかった。多分出来ていなかったかもしれないが、涙を流しながら甘やかな声をあげ、自分にも何度も唇をくれた志保を思うと白馬は叫びたいくらい幸せであった。
しかし、あまり見えない所にと彼女に懇願されたにも関わらず、首筋に多く赤い跡を見て苦笑いしてしまう。
随分と無理をさせてしまった気がしてしようがない。しかし、嬉しかったのだ。
隣で眠る彼女の肩にはあの事件よりも前に撃たれたという銃創が残っていた。薄くなっているようだが、撃たれた時の彼女を思うと、なんとも言えない気持ちになる。
そっと唇を這わすと、「ん、」とくぐもった声がしたが、起きる気配はないようだ。
やはり、無理をさせたようだ。

───好きな人と肌を触れ合わせるのがこんなに幸せな事だとは思わなかった。

彼女は泣きそうになりながらも、身体を繋げた時にそう言った。
切ないような眸に涙が浮かんでいたのを思い出す。
自分が男である以上、気にしない訳はない。
誰が、彼女をと思うと腸が煮え繰りかえそうになるが、幸せだと自分に言ってくれたのだ。
それだけでも満足しそうになるのは、男が単純だからなのだろう。
色々考えると可笑しくなってきた。
隣で眠る、妻となる彼女に口づけをしてから白馬は彼女を守るように抱きしめると眸を瞑った。

(あなたには渡しませんよ……………工藤くん)

彼女は僕のものだ、と微笑んだ。




END

2017/06/21


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