雲となり雨となる

名探偵コナン

「志保」

甘さを帯びた声が彼女の耳に届くと同時に、背後から抱きしめられいる。
結婚式を終え、パーティーがお開きになったのはほんの少し前だ。娘の愛莉は今や誰にも憚れずに祖父母となった工藤夫妻が一緒に過ごしたいと言って連れていってしまった。
本日の花嫁──志保は、伴侶となった工藤新一とホテルの一室にいる。
既に子供がいる身であるが、プロポーズ了承からキス止まりで、新一にとっては実質今回が初夜で、僅かながら互いに緊張をしていた。
どうしたら、と思ったもののパーティーが終わり直接来た為に志保のドレス姿は艶かしいのは祝い酒も入っているからか、新一は我慢していた理性を手放した。
「志保」と名前を呼び、露になっている真っ白い項に唇を寄せた。
ん、と声が洩れたのが聞こえた瞬間、スイッチが入ったのは言うまでもない。
背中にあるファスナーを下げて、固いインナーのホックを外し、ドレスの中に手を滑らせる。唇は真っ白い背中を触れていき、赤い華を散らしていく。

「……あまり、跡を残さないでちょうだい」

「へーへー」

軽口を叩きながらも、首筋から背中にかけて唇を滑らせる。振り向いた瞬間には彼女の唇を貪った。
クイーンサイズのベッドに縺れるように倒れこみ、彼女の身体からドレスを剥ぎ取れば、真っ白いウェディングドレスと変わらない美しい肌が目の前に広がる。ガーターベルトのリングが青なのはサムシング・ブルーだろう。
緊張からか、口の中が渇いているのを唾を飲み込んで潤してみたが効果はなかった。
細いのにそれなりにある豊かな胸を口と手で愛撫すれば、肢体はびくつくが、赤みを増していく。
頂きの先端を舌でねぶりながら、時折、舌で吸ったり、転がしたりした。

「……ん、ふぅ…」

「…声、我慢すんなって…」

「……ゃ、…ん…」

やべぇ、なんて可愛い声を出すのかと思いながら新一は身体に舌を這わせていく。新一も着ていたシャツを脱いだ。

「……くどう、くん…」

志保の指が新一の胸元をなぞるような仕草に新一の身体もびくりと震えたのは志保の手が触れるか触れないかの微妙なせいだろう。
だが、彼女は身を起こして新一の胸元へと唇を寄せる。それを皮切りに新一は志保のドレスを一気に剥いだのだった。
身体に残っているのは白いショーツとガーターベルトだけだ。その厭らしさにくらくらするなというのは無理である。

「……しほ、」

「ん、ふぅ」

唇を隙間なく合わせながら、ちゅくちゅくを舌を絡ませる。カクテルを飲んでいたからか、甘い味が口に広がる。合わせていた手を離し、柔らかな乳房へと移動する。少し固くなった先端を指で摘まみながら、唇を寄せて舌を這わせた。
舌で舐め、押したり、弾いたり、吸い上げたりして彼女を堪能していく。頭上から洩れる喘ぎ声にますます舌先と指で彼女を昂らせて。
もぞもぞと動く膝を脚で割り、身体を挟んだ。
白いショーツを指でなぞれば、布の上からでもくちゅと音がしたと同時に、志保から声があがる。
すっ、と手を差し入れると指先にとろりとした液が指に触れた。

「……あっ……ん…」

彼女の首筋へ舌を這わせながら、胸を弄っていた指は彼女のショーツを引きおろし、秘部へと指を滑らせた。
上下に指を動かし、上にある膨らんだ蕾を指先で引っかけた。

「あっ……そ、だ……」

刺激が強かったのか、びくりと身体を震わせるも達した訳ではないようで、新一は指先を志保の中へと出し入れしながら、蜜で濡れた指の腹でぐりぐりと押したり擦れば、身体を捩りながら、志保は快感を逃がそうとしていた。

「ふぁ、ん、あっ……」

「……志保…」

一回、達して、と新一は志保の耳元で囁くと同時にぐりゅっ!と蕾を弄れば、甘い声をあげて彼女は達したのだった。
はぁ、はぁ、と肩で息をする志保の頬に唇を寄せれば、涙目で「……がっつき、すぎ、…」と呟いた。

「……オメーが可愛すぎんだよ…」

「……バカ…」

照れ隠しなのか、そっぽ向く志保が可愛いくて、その唇をまた塞いだ。くちゅくちゅと互いに舌を絡ませ、新一は志保の太腿に手を滑らせる。
蜜が溢れている窪みへと指を差し込む、身体を屈め今度はそこへ舌を這わせた。

「あっ、あぁん…」

反り返す身体を抱きしめながら、蕾に舌を這わせた。電気を消さないままだったせいか、綺麗な桃色が目に入りながら、指と舌を使って彼女を再び昂らせていく。

「……ちょっ、でん、き……」

消して、と嘆願する彼女にもっと眺めていたいのだがと思いながら新一は足の付け根から顔を離すと、ベッドボードのスイッチを押した。
その際に履いていた下着を脱ぎ捨てた。
再び、志保の身体に重なり合いながら、口紅が薄くなった唇へと口を寄せた。
上も下もくちゅくちゅと粘りけのある水音が耳に届く。志保はお腹に熱く固いモノが押し付けられているのを感じながら、声をあげていた。
不意に初めて彼と身体を重ねた時の事が頭に過る。
途端に胸が苦しくなり、思わず新一の胸元を押していた。

「……しほ?」

「………ぁ、」

不思議そうな顔で見つめてくる新一に志保は戸惑ってしまう。

「……どうかしたか?」

すっと大きな手で頬を撫でられる。志保は新一の手に自分の手を重ねながら、眸を閉じた。
あれはもう前の事で、いま、彼は自分を抱いてくれている。理解はしているが、どこか不安になる。
彼と身体を合わせるのはあの時以来だった。結婚式前にそんな雰囲気にならなかった訳ではないが、躊躇してしまったのだ。それに気づいたのか、彼は我慢してくれていたのは知っている。

「……志保?」
─────らん…らん…

「……名前、」

「名前?」

「名前を呼んで……」

「……ならオメーもだろ……」

「…………し、…いち…」

彼女がずっと呼び捨てにしていた彼の名前を出すのは、これが初めてだった。拙い呼び方をしたのに、彼はものすごく嬉しそうに笑うから恥ずかしくなる。でも、悪くはない。
そっと彼の顔に手を添えた。

「………すき、よ、」

「俺もだ、志保」

頬に涙が流れたのが分かる。それを新一が唇で受けとめ、舐めあげていく。
ゆっくりと身体を倒し、また口づけを交わしながら身体に熱が籠るのが分かる。
志保は新一の首へと腕を回し、お願いと強請ったのだった。
身体を押し広げるように熱く昂るモノが志保のなかへと入っていく。

「……はぁ…」

「……大丈夫か、志保…」

初めてではない、だが、合意の上では初めてなのだ。例え、愛莉を産んでいようが、志保は未体験に近い感覚であり、快楽など味わったことはない。それは新一も同じだった。

「……ぎゅっ、として…」

甘えてくる志保に新一は彼女を抱きしめた。
覚えていないというのはツラいものだ。愛莉がいる以上、自分たちが身体を繋げたのは初めてではない。だが酔って覚えていないとは我ながらなんともいえない。
先ほどの志保の様子から"初めて"の時のことを思い出したのだろう。優しく出来ていたのか、それとも無理やりだったのか、それを知ることはないかもしれない。
新一は目の前で身体を繋げている志保を見やり、キスを落としていく。

「……しほ、好きだよ…」

「……私もよ、探偵さん」

「……そこは名前で呼んでくれよ」

「……動いて…」

言葉と共に志保から口づけられ、新一はゆっくりと身体を動かしていく。優しく、と思いながらも初めて得る快楽に溺れそうになる。いや、きっと溺れている。
高級ベッドではあるが、キシキシと小さな音を立てていく。

「……はぁ、あっ、あっ…」

「しほ、しほ、しほ、……」

あまりの気持ち良さに名前を呼んでしまう。それが良いのか、きゅうっと締め付けられてしまう。
いつの間にか腕を腰に巻くようにして、身体を揺らしていた。

「……あ、あぁ…も、だ……め……」

「…:く、は、しほ、しほ、…」

「……くど……も、い、くぅ………」

「……あぁ、いこ、う…」

激しく打ち付ければ、志保の足が離さないとばかりにぎゅっと力が籠る。
それが嬉しくて新一は何度も奥へと自身を打ち付けた。
やがて、甲高い嬌声が部屋に響き、新一は果てながら志保の上へと重なった。熱い口づけを交わしながら、互いに溶け合ってしまいたいと思いながら、抱きしめあったのだった。






END
2019/08/01


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