If it is interesting OK?
黒羽快斗は大抵の面白い事は楽しいと思い、からかう事がある。それは妻 青子に対してだったり、すっかり家族ぐるみになった白馬に対してが主である。
しかし、視界に入ったそれは多分、どうして、面白がってはいけない光景であった。
(……………なんだって、あんな事に……)
二家族で買い物に来たのは青子が志保ちゃんと、陽が莉乃ちゃんと買い物したいと言い出したからで、なら、せっかくだからみんなで一緒にご飯もしようという話になったのはいつもの事で。
ただ青子の買い物が長いのだ。志保ちゃんではなく、青子の買い物が!
子供たちの服を買うとかで青子と陽、志保ちゃんと莉乃ちゃんと志貴は一緒に回っているし、愛莉ちゃんはもうレディースの服を着るから白馬が付き合う事にしたから、俺もそっちに便乗した。
志保ちゃんそっくりな愛莉ちゃんには可愛い服を着て欲しいから、色々提案すれば三着中一着くらいは選んだのをみてくれるが、やはり父親には敵わないらしく、白馬が選んだのを購入していた。
「もう十分だよ」
高校生となった彼女はスラリとした美少女で学校でも大変モテているようだ。本人は「気のせいよ」と言っているが、そんなことはないだろう。
とにかく買った服は先に車へ積み、後は青子たちを待つ為にショッピングモール内にあるカフェで一休みすることをした。
高校での話を聞きつつ、青子たちが来る前にトイレに立ったのは数分前。
戻った席には思いがけない人が座っていた。
(────はぁ??)
そこには愛莉ちゃんと白馬、それはいい。しかし、何故そこに工藤とその奥さんがいるのかである。
呆然とするのはいうまでもなく、あまりにもない光景に頭が痛くなる気がしてくる。
愛莉ちゃんの本当の父親については、出会った時からの秘密であった。しかし、考えてみれば簡単なことで志保ちゃんが頑なに黙っているのはそれが明るみに出れば不幸になる人間がいるからで。
志保ちゃんはどうしてもそれを守りたかったのかもしれない、そして、彼女にとっては愛莉ちゃんという存在がいれば良かったのだろう。
誰も知らぬ内に母親になった彼女は、娘の存在を隠していた。否、隠していた訳ではない。
始めに愛莉ちゃんの存在を知った真純ちゃんや白馬は受け入れられていたし、あの博士やFBIの彼も紹介されたという。
他の人たちも受け入れたのだ、そして工藤も。
しかし、1年前 志保ちゃんたちがアメリカから日本へ戻ってきた時に、一度しか会ったことのない工藤に愛莉ちゃんが興味なのか、琴線に引っかかる何かを感じたのか工藤に会いたいのだと呟いた。
どうやら帰国してから阿笠邸で邂逅を果たしたらしいが、もう一度会いたい、知りたいのだという。
その頃には愛莉の"本当の父親"が誰かなんて公然の秘密となっていたのは、工藤たち以外関係者には分かっていたが、白馬探が父親として揺るがない場所にいたので、"本当の父親"は誰も口にはしなかった。
彼女たちと会って話したという工藤は泣きそうな顔をしながらも、彼女が子供を産んでくれただけで良かった…と俺はもう触れることは赦されないけどアイツとの間にはあの子がいるのが幸せなんだと語っていたくらいで、もっと、それこそ十五年前に気づけば彼の人生は変わっていたのかもしれない。
別に工藤が不幸だなんて思ってもいないし、彼も思ってはいない。初恋を貫いた婚姻は夢物語のようだが、幸せなんだと彼は語っていたのだから。自分も他人の事は言えないが。
さて、閑話休題。
黒羽は驚いた様で席に戻った。
「なんだって 工藤がいるんだよ?」
「たまたまだよ」
「こんにちは、黒羽くん」
「こんにちは、蘭さん。二人はデート?」
コーヒーを飲みながらそっぽ向く工藤に対し、奥さんである蘭はにこりと笑いながら挨拶をした。
デートという言葉に「買い物なだけだよ」と答える蘭に「荷物持ちにされてるだけだ」と工藤がぼやいていた。
「そういうオメーはなにしてんだよ」
「俺? 俺は可愛い愛莉ちゃんに服を選んでたんだよ、ねー?」
愛莉ちゃんに同意を求めながら首を傾げれば、彼女はふふ、と笑って「そうなんです」と笑顔を向けてくれた。
「もちろん、パパが選んでくれたのを買いましたけど」
「愛莉ちゃーん、俺が選んだのも気に入ってくれたじゃーん」
「でも、あまりにもミニスカートばっかりだったから」
「愛莉ちゃん、綺麗な足してるんだからいいじゃ………いて!」
思いがけない痛みに足元を見れば、両足がぐりぐりと踏み潰されている。
「なに、言っているんですか、黒羽くん?」
「ミニスカートって変態か、黒羽」
二人揃ってぐりぐりと足を踏みながら言ってくる。
なんつーか、立派な父親たちだよ、オメーらは。
つか、この状況で足を踏んでくる工藤がすげえ。お前、奥さん横にいんだろ?
「愛莉ちゃんってどこの高校に通っているの?」
「東都大付属です」
「頭、良いんだね!」
「そんなこと ないです」
ふふ、とにこやかに笑う愛莉ちゃんだが、俺たちは知っている。彼女は既にアメリカの大学をスキップして卒業してる上に、色々な資格を持っていることを。
蘭さんは感心したように彼女に色々と話しかけているが、愛莉ちゃんは答えるだけで、にこやかに笑っているだけなのは、やはり"本当の"父親の奥さんを見るのが嫌なんだろうか。
「快斗ー!」
「パパぁ!」
カフェの出入口から聞こえる声に、快斗はあー、来ちゃった…となんとなくギギギと首を向けた。
そこには青子と、白馬んトコの莉乃ちゃんが手を振っていたし、陽はともかく志貴くんは誰?という顔をしている。
そして、一番最後に顔を見せた志保ちゃんを思わずガン見すれば彼女は工藤たちがいることに驚いていたようで、工藤をチラリとみればどこか切なそうな顔をしながらも、直ぐにそれを隠したようだ。
「あれ? 青子ママに似てる人がいる」
莉乃ちゃんが不思議そうな顔をしながら、青子と蘭さんを見比べているし、志貴くんも「快斗おじさんが二人います」と言っていた。
快斗おじさんは二人はいないよー?
「蘭ちゃんと工藤くんだ!久しぶりだねー」
「青子ちゃん、久しぶり。元気だった?」
青子は蘭さんとは面識があるから挨拶をしているが、志保ちゃんはあまり態度には出「久しぶりね、工藤くん」出した!出さないと思ってたら出した!
「お、おぅ!久しぶりだな、宮野」
「……もう宮野ではないけど、探くんと間違えそうだし構わないわ」
「あ、あぁ…」
「探くん、車のキーを持ってる? 荷物を置いてきたいのよ」
「それなら僕が行きますよ、志保さん」
両手を見れば志保ちゃんは沢山の荷物を持っていたし、青子もやたらと持っている。
青子を見れば蘭さんと話をしている。きっと陽についてだろう。
「青子、オメーなんだってそんなに買ってんだよ」
「えー、だって然り気無く莉乃ちゃんとペアになるように志保さんと選んだら結構あったんだよ。ね、志保さん」
「……莉乃が陽くんとお揃いがいいなんて言うから大変だったのよ」
志保さんが苦笑いしながら話すと、白馬は少しだけムッとしたが、志貴くんが宥めていた。
「……とにかく、一度荷物を置きにいきましょう。黒羽くんも行きますか?」
ここでイヤだとは言う訳にはいかず、青子から紙袋を受けとると、駐車場へ向かった。
工藤たちが席を立とうとしているのを青子が止めたのを見て頭が痛くなる気がしたのは言うまでもない。
END…?