プロローグ

名探偵コナン

数年前、世界的な犯罪組織の壊滅事件が世を騒がした。
しかしそれは月日と共に人々から忘れ去られるようなもので、中学生である吉田歩美には関係のないことであった。
時を同じくして、初恋の相手である江戸川コナン──の居候先である毛利探偵事務所の一人娘、毛利蘭の恋人である工藤新一が事故死したというニュースの方が歩美たちには忘れられないニュースである。
工藤新一の親戚で、彼を『新一にーちゃん』と呼ぶ江戸川コナンも同時期に両親が海外で亡くなるという痛ましい出来事がおき、彼は親戚である工藤優作、有希子の養子となった。
小学生の少年探偵団にとってよく事件に巻き込まれる事もあり、人の死については幼いながらにも身近であった。しかし、身近といってもやはり他人な訳でそれほど重くは受け止めてはいない。もしかしたら、怖さなどもあったのだろう、それに気づかずに無意識にそれを遮断してきたのかもしれない。
だからこそ身近なコナンの両親が亡くなったと聞かされても『コナンくん、可哀想』と悲しくなって泣いたりしたけれど、会ったことのない人の死はどこか他人事でテレビ画面の向こう側のようなものだった。


少年探偵団の江戸川コナンと灰原哀は別格だった。
知識の膨大さに、視野の広さ、何事にも動じない冷静沈着さ。元太くんが年齢を誤魔化しているんじゃねーかと揶揄りたくなるのは当然で、そこについては二人とも苦笑いをしていたくらいだ。
しかし、そんな彼らにも苦手な分野がある。恋愛面だ。

江戸川コナンはモテる。超絶モテるのだ。
容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群と三拍子揃った天が二物も三物も与えたよう人間であり、性格も社交的である。欠点といえば絶対音感を持っているにも関わらず音痴だということだ。それでもその欠点が霞む程の人物だ。
校内外にファンクラブがあるという、どこのマンガの世界だと、知らない人はいうかもしれないが彼には特技がある。それは推理力が半端ないという。
昔いた平成のシャーロックホームズと呼ばれた高校生探偵を凌ぐ程、それは小学生の頃から警察と立ち回り、事件を解決していたというし、あの怪盗KIDをギリギリまで追いつめていたキッドキラーが江戸川コナンなのだ。

それと同じく、灰原哀も高嶺の花としてモテていた。容姿端麗、成績優秀、運動神経はそれほど悪くはないはずだ。
イギリス人とのハーフだという彼女は東洋系の顔をしていても日本人から見れば大層な美貌の持ち主で中学生とは思えない色香を持っている。
成績も常にトップである。どこか冷たい印象を与えがちな彼女ではあるが、動物を慈しむ優しい人物である。大体の人には分からないだろう。
彼女は生徒たちからはクールビューティーと呼ばれる程であった。

そんな二人の家は隣同士である。
工藤夫妻の養子になったコナンくんは小学校高学年の時に工藤有希子さんと工藤邸で暮らしていた。
中学生に上がると工藤有希子さんはアメリカと日本を行き来するようになり、有希子さんがいない時は隣の阿笠博士邸にいたようだ。
ほとんど一緒にいるのに、二人は付き合っていない。多分、互いに好きなんじゃないかと思うんだけど、二人は「ありえない」としか言わない。
お似合いなんだけどなぁ、と幼なじみである吉田歩美は思っていた。



To be Continued?

2017/07/04


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