春の出来事

名探偵コナン

桜の花が咲き乱れる季節、私は弟と同じ小学校へ通う羽目になった。
あれほど、同じ学校は嫌だといったのに、ママと新一が反対したのだ。パパは違う小学校を探してくれて、わざわざ願書とかも取り寄せてくれたのに。
あんの、新一のせいで!!

「ほらぁ、紗希ちゃん? そろそろ機嫌直して?」

「嫌!」

「嫌じゃねーだろ、文句言うなよ!紗希!」

「うるさい!この音痴!!」

「っ!お、音痴は関係ねーだろ!!」

「ふん!絶対音感持ってて音痴なんて宝の持ち腐れよ」

「だー!うっせぇな!!どっちにしろ、オメーは帝丹小学校に通うんだよ!!」

「勝手に合格取り消しにした人が何言ってんのよ!ふざけないでよね!!」

「……ぐ、」

朝から騒いでいると、「うぉっほん!」と態とらしい咳をしたパパがこちらを見ている。
怒っているのは主に新一に対してだ。

「と、父さん……」

「新一、あまり紗希を怒らせるんじゃない」

「だ、だってよぉ…」

この1ヶ月の間に発覚した紗希の合格を握り潰したのは何を隠そう新一だった。
たまたま合格通知の書類を受け取ったのが新一だったのも運のつきである。
合格発表は個人情報やライバルの家庭による妨害がある為に、発表ではなく各家庭に合否の通知書類が届くようになっていた。
工藤優作、有希子夫妻も紗希子の面接や試験に同行し、紗希子本人の性格や利発さ、もちろん成績も優秀であった為に手応えは抜群で、むしろ学校側から是非に!と言わんばかりであった。
にも関わらず、合否の結果はなかなか来ず、手続きが終了してから通知が来ていたのが発覚した。
急いで学校に連絡したものの、手続き期間が過ぎてしまえば、それは本校には通わないという意思であり、特例は認められなかった。
流石にこの所業には、別々の学校に通うことに反対していた有希子も叱りつけたのは勿論、優作からもこっぴどく叱れたのだった。
紗希子は新一をずっと避け、口すらも利かない始末でこの入学式の日を迎えた。
久々に口を利いたかと思えば、未だに怒り狂っているのが分かる。
新一としては双子の姉である紗希子が一緒の学校に通うのは極々当たり前の事であり、違う学校に通うだなんてそんなのはありえないことだった。
可愛らしくいえば、紗希子と同じ学校に通いたい、離れたくないという大変微笑ましい話だが、そう甘くはない。
急遽、誂えたランドセルはブラウンで、蘭から見せてもらったランドセルとは全く違っている。
新一のは黒色であり、嬉々としてランドセルを見せにきた蘭のは赤いランドセルだった。
そんな彼女が紗希子のランドセルを見て「茶色なんて変なのー」なんて言ったものだから、紗希の怒りは益々上がる一方だった。
因みに紗希のランドセルがブラウンなのは飽きが来ないし、本来なら通う学校も指定ランドセルはブラウンだったからだ。

「………紗希。こうなったら仕方ないよ」

「…………」

流石にどうしようもないからか優作がそう伝えると、紗希は悔しそうに唇を噛みしめていた。
よほど、同じ学校には通いたくないのだな、と涙ぐむ娘の頭を撫でてやる。
はぁ、とため息を吐くと隣で見つめていた新一は肩を震わせていた。

「………新一、今後 勝手なことはしていけないよ」

「………わ、わーったよ!」

「うん?」

「わ、分かりました! 紗希、ごめん……」

「………許さないから!バカ!」

「………うぅ…」

涙ぐむ娘はそのまま、優作の胸元に顔を押しつけて、悔し涙を流している。
それを見て、ようやく事の重大さに気づいたのか新一も泣きそうになっている。
せっかくの入学式の朝だというのに、門出としてはあまり良くない始まりの日である。



END


2017/09/02


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硝子越しのキミへ花束を / top