出逢ったのは天使

名探偵コナン

──その日、天使にあった──

「おはよう!新一!」

「…………………」

「? 新一? ちょっと、どうしちゃったの?!」

「………………ん、あぁ、蘭……どうしたんだ?」

「どうしたんだはこっちの台詞よ!一体、どうしたのよ?」

「いや……別に…」

「……なら、学校に行こう!遅刻しちゃうよ?」

「あ、あぁ…」

ぼうっとしている新一に幼なじみの蘭は首を傾げて、彼が支度をするのを待ち、学校へと向かった。
登校中もどこか上の空の新一に蘭は気になりながらも、いつものように二人揃って教室に入る。
いつもと同じように、クラスメイトたちから「今日も朝から夫婦揃っての登校かよ」「ひゅーひゅーお熱いね、お二人さん」と冷やかされる。

「ちょ、わ、私たちはそんなんじゃないわよっ!!」

「またまた〜。な、工藤!」

「………んぁ? あー、そんなんじゃねぇよ」

「……工藤?」

いつものように同じ台詞を口にした新一だったが、そこに照れ隠しのぶっきらぼうさはなかった。
その様子に冷やかしていたクラスメイトは調子が狂い、蘭といえば「……新一…?」と不安が胸に広がった。
今も、自分の席に座り、ボーッとしている新一を見つめているが、彼はこちらをみようとはしない。

「蘭? どうしちゃったの、新一くん」

「……分かんない。朝からあんな感じなんだよ」

親友の園子が話し掛けても上の空の新一に、二人は顔を見合わせたのだった。
授業中も行間休みもボーッとしている新一に、お昼休みにでも話を聞こうと園子が提案した。蘭もそれに頷き、4時限目の終了と共に彼を引っ張って屋上へと向かった。

「なんだよ、二人とも…」

「なんだよじゃないわよ!どうしたのと聞きたいのはこっちよ!」

「なにがだよ」

「かー!アンタ、自覚ないわけ? 朝からずーーっっとボーッとしてるけど、何かあったの?」

「そうだよ、どうかしたの? 新一」

二人に詰め寄られ、あー、うー、と唸る新一に二人はじーっと見つめる。
観念したのか、新一は口を開いた。

「………昨日さ、博士ん家に行ったらよ、知らねぇヤツがいたんだよ」

「知らねぇヤツ?」

「まぁ、なんか博士の知り合いの子供らしいんだけど……」

新一は思い出したように話していくが、それがどんな人なのかは分からない。ヤツというからには男なんだろうか。
しかし、そこでだんだんと新一の顔が赤くなっていく。どうしたのかと蘭と園子は顔を見合わせた。

「ど、どうかしたの、新一?」

「その、知らないヤツになんかされたの?」

「………いや、あの……」

「「??」」

えーと、あー…、うー、とハッキリしない新一に園子が痺れを切らした。

「ちょっと! 言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ!!」

「…………天使にあった……」

「「…………………は?」」

園子に言われたからか、俯かせていた顔をあげた新一はどこか誇らしげに言ってきたが、意味が分からない。

「………な、何を言ってるの?」

「だーかーらー、昨日、博士ん家に天使がいたんだよ!!」

「………なにかで頭でも打ったの? 新一くん」

「えっ、と……どうしたのよ、新一…」

「だから!昨日さ、博士ん家にめちゃくちゃ可愛い女の子がいたんだよ!!もうさ、すっげぇ、肌が真っ白できめ細かくて、すべすべなのに柔らかいし、超絶可愛い女の子がいたんだ!ああいう子が天使って言うんだな!!」

ぐっと拳を握り、熱弁する工藤新一に幼なじみの二人は驚きを隠せない。
こいつ、何言ってんの?!と突っ込みたい。
園子はそんな事を思いながら、傍らの蘭を見てみるとなんとも言いようがない顔をしている。

「ちょっと!新一くん!!蘭がいながら何を言ってるのよ!!」

「はぁ? 別に蘭は関係ねぇだろ? そんなことよりもさ、その子の可愛さときたら──」

午前中の魂が抜けたようなボーッとしていた新一はどこに消えたのか、出会った女の子の事を話す新一に園子はどこの馬の骨がここまで新一を骨抜きにしたのかと、頭を抱えていた。
両片思いだったはずなのに、素直になれずにいた二人にまさかこんな展開が来ようとは誰が思うだろうか。

「………へ、へぇ……新一ったら、そ、その子に惚れちゃったって訳……?」

違うよね、そんな訳ないよね?と訴えてみるも新一は「そそそそそそそんな訳っ!!」とあからさまな動揺を見せてくる。
どこをどうみても明らかに意識しているようだ。
じとーっと見つめれば、音痴の癖に口笛を吹いている。

「あ、じゃあ、俺、みんなとサッカーする約束してっから」

パンを食べてしまうとそそくさと屋上から出て行く新一を見送りながらも、蘭はショックを隠しきれずにいた。

「………天使って……可愛いって……」

「ら、蘭!大丈夫よ、ほ、ほらまだ好きだって決まった訳じゃないんだから!」

「……で、でも…」

涙目になっている親友をどう慰めるべきかと、園子は頭を悩ませたが、後日もっと頭を悩ませるとは思ってもいなかった。



END


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