ゆびわの誓い
棗は結構器用だ。
性格はかなり不器用だけどね?
《 ゆびわの誓い 》
「棗…悩みすぎ。」
流架はため息を吐きながら、言った。
二人はクリスマスカラーで溢れているセントラルタウン内のアクセサリー店に居た。
ファンシーな店内に日向棗。
目立ってしょうがない。
棗はそんな事気にしていないのか、気付いていないのか、じっと指輪のコーナーを見ている。
「流架、どれがいいと思う。」
ぼけっと流架がしていると棗が問い掛けてきた。
流架の目の前には、数点のアクセサリー。
ピンクの石がついている物やらを見る。
確かに棗が悩む通りに、「これ」と言うものが無い。
「ん〜?なんか…佐倉って感じのが無いな…。」
そう言うと、棗も嘆息しながら頷いた。
「ありがとうございました〜。」
店員の声に見送られつつ、棗と流架は店の外に出た。
手には何も持っていない。
「どうすんの?棗。クリスマスは目前だけど。」
「今年は指輪やりたいんだよな…。」
「棗も結婚出来る歳になったしね。」
聞かせるつもりの無かった言葉に流架が返事をすると、棗は嫌そうな顔をした。
「あ、棗。ちょっと手芸屋寄っていい?」
「何でだよ?」
「釦が取れたんだけど、糸が無かった。」
「パーマにでも付けて貰えば良いだろう。」
「スミレは苦手なんだよ、こういうの。」
そう言いあいながら、二人はユサワヤに入って行った。
「…ん?」
流架が会計を済ませるのを待っている時に棗はある物を見つけた。
「ふ〜ん…。」
棗はそれを手に取った。
煌びやかに寮内がクリスマス仕様に飾られている。
そんな楽しげな雰囲気の中、棗は緊張していた。
「蜜柑。食事の後、俺の部屋来いよ。」
「?うん。」
蜜柑は相変わらずな様子で少し棗の緊張を溶かした。
コンコン。
「棗〜?」
蜜柑はニコニコと笑いながら棗の部屋に入ってきた。
「何だ、お前。」
「シャンパン飲んだんよ〜♪」
「…何杯。」
「ナル先生が一杯だけくれた〜♪」
ナル…と棗がナルへの怒りで燃えているが、蜜柑は相変わらずニコニコ笑っている。
「棗〜♪」
笑いながら蜜柑は棗にいきなり抱きついた。
ちゅっと頬へのキス付きで。
これには棗も驚いた。
蜜柑はあんまりそう言うことを自らしてくるタイプじゃないので。
「んふふ…。」と笑いながら蜜柑は棗の胸の中で眠りに落ちていった。
棗は腕の中の蜜柑が眠りに落ちてしまったのに気づくと、ちょっと気落ちした。
これを渡す時、どんな顔をするかとか散々悩んでいたのだから。
ふと、蜜柑が読んでいた漫画のシチュエーションを棗は思い出した。
眠る蜜柑の指にそっと指輪をつける。
手芸屋で買った銀細工セットで棗が作った、少々不恰好になってしまった指輪。
でも、棗がイメージした物に近く出来たので結構棗は満足していた。
朝起きて、これを蜜柑が見つけたときの反応を想像し、頬を微かに緩ませつつ蜜柑を自分のベッドに寝かせ、自分もベッドに潜り込んだ。
END
あとがき
千夜一夜のクリスマス…なのですが、普通の棗蜜柑ですね…。
あれれ?
でも、クリスマスまでに間に合ってよかったです。
一応、これはフリー小説なのでご自由にお持ち帰り下さいませ。
というわけで頂いてきちゃいましたvV
うふふ、素敵なお話ですよねぇ〜vV
アタシもこの位書けたらと日々思っております。
'04/12/23 頂きましたvV