チョコレート・キス
ヴァレンタインは女の子の戦場!
チョコレートにキャンディの爆弾と機関銃。
想いを込めて、彼にぶっ放せ!
チョコレート・キス
「わぁ!チョコレートがいっぱいやなぁ!」
甘い物が大好きな蜜柑は歓声を上げた。
「バレンタインだからね。」
甘い物がそれ程好きではない蛍は興奮する蜜柑の隣で冷静だ。
「バレンタインか〜蛍!今年もあげるからな!」
蜜柑は蛍の腕に自らの腕を絡ませるが、蛍は「いらない」と蜜柑の腕を振り解き、自らが行きたい店へと足を向けた。
「酷い蛍〜。」
蜜柑は自分を置いていく蛍を追いかけようとするが、目の端にある店が飛び込んでくる。
それを見て、蜜柑は財布と相談する。
値段は大丈夫そうだ。
「すいません。コレくださーい。」
蜜柑はチュシャ猫のような笑みを浮かべると、店員に声をかけた。
ヴァレンタインの教室は甘い匂いと女の子の緊張の声が交じり合う。
そんな中、蜜柑はそんな声とは関係の無さそうに、蛍にじゃれていた。
「蛍!蛍!上手に出来たやろ!」
蜜柑はにこにこと笑いながら、チョコレートを差し出す。
「あら、本当。美味しそうね。」
蛍はヒョイとチョコレートを摘み、口へと放りこんだ。
咀嚼する蛍の顔を蜜柑はじぃと見詰める。
それをいぶかしみ、蛍は「なによ?」と尋ねる。
「う〜ん。失敗作だったのかなぁって。」
「何が?」
蛍は元々は悪戯好きな蜜柑の過去の諸行を思い出し、眉根を寄せた。
そんな時だった。
「棗くん!流架くん!私の想い受け取って〜!」
正田が二人の後ろの席にいる棗と流架へチョコレートを持ってきたのだ。
「いらねぇ。」
そっけない棗の反応だが、伊達にファンクラブの会長をしているだけあって棗の不機嫌さには慣れている正田は困ったように、だがチョコレートを差し出す。
「ね?貰ってくれるだけでもいいから。」
「うっせぇなぁ。」
棗はそんな正田に取り合わない。
「うっさいは無いやろー!チョコ位貰ってやりぃな。」
蜜柑が後ろを振り返り、言うと棗は眉間の皺を深め、「うっせえよ。」とだけ言い、正田へと手を差し出した。
「あら、佐倉さんもチョコレート?今井さんにあげるなんて子供ねえ。」
正田は蜜柑の持っているチョコレートの包みを見て、少し笑う。
蜜柑に手伝ってもらった事への照れ隠しだ。
「あぁ。まぁそやねぇ。」
翼先輩にあげるかなーと蜜柑は続ける。
ちょっとした悪戯のつもりで買ったチョコレートなのだが、効能ははずれだったらしい。
蜜柑はチェッと少し舌打ちをした。
「何をしたわけ?」
蛍は蜜柑が自分を実験台にした事実―――蛍も良くするが、その事実は棚上げである―――に眉を顰めながらも尋ねた。
「ま、まぁええやないか。あ、棗食わん?」
蜜柑は後ろの席に座っている棗にチョコレートの箱を差し出す。
「いらねえ。」
そんな蜜柑に棗は不信げな視線を向け、すぐに手元の漫画に視線を戻した。
だが蜜柑は挫けずに「そう言わんと!」と食い下がる。
「うっせえなぁ。」
なぁなぁと騒ぐ蜜柑に棗が何か罵声でも言おうと口を開いた時。
―――ポイ。
蜜柑は棗の開いた口にチョコレートを放り入れた。
「おま、何すんだよ…!」
棗はいきなり口に入れられたチョコレートを腹だたしげに噛み砕く。
だが蜜柑は笑うだけで取り合わない。
そんな蜜柑に棗は目を眇めたが、すぐに普段のポーカーフェイスに戻った。
「水玉。」
笑う蜜柑を呼ぶと同時に、胸倉を掴み彼女にキスをした。
教室中に正田の悲鳴が響き渡る。
そんな中、蜜柑の唇を開放すると棗はニヤリと笑った。
その笑みに不意に心臓が飛び跳ねた。
―――悪戯の筈だった、『素直になるチョコレート』。
効いたのか。効いてないのか。
それは解らないけど、この不整脈はナニ?
あとがき
超懐かしい学園アリスです。
難産でした。蜜柑の素直な性格がかけたか不安です。
私がもう穢れきっているので(笑)
頂いた日:'06/2/14
大好きで尊敬している咲奈様のサイトから頂いてきましたvV
もう、悶えました…(プルプル…)