初でぇと☆VS★蛍
「……きゃ───ッ!蜜柑ちゃんの三回連続負け!!」
「…それじゃあ蜜柑ちゃん……」
アンナ・野乃子・音無さんまでもが蜜柑の肩に手を置き、満面の笑みで言った。
「「「…いってらっしゃい♪」」」
──コンコン…
「…はい」
中から蛍の返事が聞こえる。
「…ウチや、蜜柑や。…蛍…入ってもええ?…」
「…いいわよ」
…カチャン
「…何よ、そんなブス面して」
「…ブッ!!?」
「何かあったの?」
「…え…。何で、わかるん…?」
蜜柑の質問に、蛍は蜜柑のほっぺを軽くつまんだ。
「…単純なこの顔。…笑顔じゃないもの」
「……あ…」
「何が、あったのよ」
蜜柑は頬をピンクに染め、もじもじした。
(…もしや、この反応は───…)
「………」
蛍は口を閉じたまま、蜜柑の次の言葉を待った。大体の予想はついていたのだが…。
「──ウチ、ウチな…棗と──…」
棗の名前が出てくるとわかってはいたものの、やはり蛍の心は嫉妬心が膨らんでゆく。
「…棗と…?」
少し不機嫌な声で先を促す。
「棗と──…、デートすることになったん……」
「………」
蜜柑のその発言は、一瞬にして蛍の顔を硬直させ、蛍の喉から声を奪ってしまった。
…デート?
誰が?
蜜柑が
誰と…?
───棗と
「…蛍…?」
急に固まってしまった蛍を不思議そうに眺め、蛍の顔の前で手のひらをヒラヒラと振る。
──ガシッ
「…ヒェッ!」
蛍にいきなり手首を掴まれた蜜柑は、妙な声を上げた。
「…いつ?…」
やっとのことで喉の奥から声を絞りだし、蜜柑に問う。
「…え…何が?」
「──撃つわよ…」
蛍はいつのまにか手にバカン砲を装着し、しっかりと構えていた。
「…ぎゃっ!!…あッ!そ、そうや!デートやな、デート…(ババぬきの罰ゲームなんやけど…)」
アハハと渇いた笑いをもらす。
「…いつ?…どこで?……何時何分!?」
蛍が咳込んだように言う。
いつも冷静・無頓着な蛍が、これほどまでに取り乱すとは、誰も予想していなかっただろう。
「日曜日の9時にセントラルタウンで待ち合わせ、ってゆーことになっとるんやけど…」
「───ふうん、そう…」
蛍の瞳の奥がキラリと光ったことに蜜柑が気付かなかったのは、言うまでもない。
蜜柑がデートの報告をしてから日曜日までの間、今井蛍の部屋からは、毎晩、金属音やら機会音やら凄まじい程の騒音が響いてきたという…。
初等部でトリプルの、某Y.T君の証言───……。
日曜日。太陽が元気に光を放ち、最高のデート日和。
待ち合わせ場所へと向かう蜜柑。その顔は微かに赤みがあり、緊張で強張っていた。
「…あっ!!棗…、もう来とったん。…ごめん、待った…?」
「…別に。」
なんともデートらしい言葉のやり取り。しかし、二人のそんな様子を気に食わぬ様子で盗み聞きしている人が約一名。黒髪のショートカット、初等部の制服の襟に星のバッチが三つの少女────………勿論、蛍なのだが────。
「…それにしても、何であの二人、デートなのに制服着てるのかしら…?」
人のことは言えまい、蛍。
「…じゃあ、折角だし…どっか行かへん?」
「……フン」
蜜柑と棗は、セントラルタウンの中心街ヘと歩き始めた。
「…移動確認」
蛍は、スパ○ダーマンに似たようなロボットに跨がった。
「…空飛ぶスパイロボット、《スパイだー!!マン》で追跡開始」
蛍は空中へと飛んだ。
蜜柑の一方的な希望により、二人が最初に訪れたのはホワロンのお店。
「ありがとうございました〜。」
買ったばかりのホワロンを嬉しそうに抱え、クフフと笑う。
「わぁ〜い!!ホワロン、久しぶりやなぁ♪前に来た時は、売り切れやったもんなぁ…」
「………」
棗は明らかに馬鹿にするような目線を蜜柑に向けている。
「さすが、蜜柑ね…」
店の上空に漂いながら様子を見ていた蛍は、一気に脱力する。
(…ムードもへったくれもないわね…。骨折り損だったかしら)
そんな風に思いながらも、やはり不安なのか、嬉しそうに歩く蜜柑と呆れ顔の棗の跡を引き続き尾行した。
歩き始めてからしばらくたったとき、蜜柑がある怪しげな建物を指差して、騒ぎ出した。
「……あ!棗、見て見て!!《占いの館》やてッ!!」
「…占い…?」
「そや!ここ、つい最近オープンしたばかりなんよ。…棗、行ってみいひん!?」
「…めんどくせぇ」
「ええやろー!…な、行こ♪♪」
棗の腕に自分の腕を巻きつかせ、半ば強制的に中へと引っ張りこんでしまった。
「…占い館へ、潜入開始ね」
蛍は一言、呟いた。
中へ入ってみると、そこは大きなロビーのような場所だった。室内は薄暗く、壁一面にベールがあるだけで、人の姿はどこにもない。
不気味な雰囲気が漂う場所だった。
「本格的やなぁ。楽しみや!…棗は、占いとか信じてるん?」
「……バカか、お前は」
ため息混じりに言い放たれ、しばし呆然とする蜜柑。しかしすぐに復活し、棗に食ってかかる。
「そんな言い方ないやろッ!!」
そう言って棗を睨み上げたとき……
「……ようこそ…」
突然ベールが開き、神秘的な雰囲気の女の人と、椅子とテーブルが姿を現した。
「…ぎゃっ!!」
いきなりの事に、蜜柑は驚いて飛び上がった。
「──あ…すみません……驚かせてしまって…」
「何や、店員さんかい…」
まだ蜜柑の心臓はバクバクと音を立てている。
「…お客様ですね…こちらに座ってください…」
二人は言われた通りに椅子に腰掛けた。
店員も、二人の向かい側に腰掛け、テーブルのうえの水晶に手をかざす。
「…えーと…お二人は、カップルですね?…そして私に二人の運命を…占ってほしいのですね?」
「…えッ!?そんな、ウチらはカップルなんかやな───…」
「黙って!!占いは集中が基本よ!!!」
さきほどの、神秘的な雰囲気はどこへやら、店員さんは激しく呪文を唱え始めた。
(始まったわね…)
こっそりと、物影から様子を伺う蛍。
(前に聞いたことがあるのよね──…。音無さんの様に、激しく踊って占うアリスもあれば、あのひとのように激しく叫びながら占うアリスもある、って…どっちもどっちね)
今は
そんなことはどうでもいい。
占いの結果が良い結果だったりしたら──…
投げると、煙と同時に物凄くウルサイ叫び声を発する《おたけび爆弾》を投げて、会話を妨害してやるわ───……
どんな手を使ってでも
蜜柑だけは
誰にも渡さないんだから─────………
「……出ました!!」
占ってもらったものがものだったために、蜜柑は結果を聞くのに少しばかりの抵抗があった。
蜜柑は棗の瞳に、ほんの一瞬、真剣な眼差しを見た。
物影に潜む蛍は耳を澄まし、一言も聞き漏らすまいとしていた。
「…すばらしいです!!あなたたち二人は、運命の赤い糸で結ばれ──────……」
瞬間、
蛍が大量の《おたけび爆弾》を一気にばらまいた。
──ボンッ
──ボンッ
──ボンッ
立て続けにいくつもの《おたけび爆弾》が爆発する。
「ぎゃあっ!!なっ、何や!?…けほっ…!」
「伏せろ蜜柑っ!!」
耳をつんざくような叫び声と煙とで、身動きがとれない。
叫び声が治まり、煙が薄らいだ頃には、占い館の中に蛍の姿はなかった。
「…けほ…っ、…何なん───…」
むせ返るような煙の量。
「…おい──…」
「…棗!…平気なん?」
「…別に」
ふと下を見てみると、店員さんが目を回して倒れていた。
「…ありゃ…気絶してもうたんか」
苦笑いをする蜜柑に、棗が面倒臭そうに言った。
「…ほっとけ。さっさと出るぞ」
蜜柑は、スタスタと歩いていってしまう棗の背中を見て、少しだけ頬を膨らませる。
「まったく…。店員さん、ごめんな。占い料、テーブルに置いとくからな」
棗の後ろ姿を追い掛け、蜜柑は占い館をあとにした。
セントラルタウンの街の中を、特に話すこともせずに、黙々と歩く二人。
蜜柑は何となく、話しずらかった。けれど、ただ黙って歩き続けるのにも耐えきれなくなる。
「…なぁ、…棗…?」
とりあえず、棗に話し掛けてみる。
「………」
棗からの返事はない。
「なぁ棗、さっき──…」
「…さっき」
蜜柑の言葉を遮るように、棗が口を開いた。
「…さっき、占いなんて信じないって言ったけど」
棗は立ち止まり、ほんの少しだけ蜜柑の方に振返った。そして視線を蜜柑から放して、言った。
「さっきの占いなら…信じてやってもいい」
「…なっ…なつ────」
──ボンッ
──ボンッ
「──わわっ!!…けほっ!」
「──おい、あれ…」
棗は、騒音に顔を歪めながら、爆弾がとんできた方向を指差す。
「──ほ、蛍ッ!?」
「…あら蜜柑。ぐーぜんね」
「偶然ってお前…。今の爆弾…」
「何のこと?」
しれっとしながら蛍は言う。
そして棗を一瞥するし、言った。
「…もう気は済んだでしょ?蜜柑、返してもらうから」
「…は?…(罰ゲームだって連れて来られたのはオレなんだけど…)」
「…蜜柑は絶対、譲れないのよね」
そう言って蛍は蜜柑の方に向き直る。
「…蜜柑、帰るわよ」
「──え!?待ってや〜、蛍〜!!」
一人残された棗。
最後にこう呟いたという。
「…オレだって…譲れねぇよ────……」
*END*
*おまけ*
「蛍──!待って〜…」
「歩くの遅いわよ、蜜柑」
「今日は疲れとるのに──…最悪な罰ゲームやったわ…」
蛍が足を止める。
「……罰ゲーム?」
「そうや〜…。ばばぬきの三回連続負け罰ゲーム…」
「…蜜柑」
「何や?」
「───それを早く言いなさい、バカタレ」
その後蜜柑はバカン砲の乱射攻撃を浴び、しばらくの間動けなくなってしまいましたとさ♪♪
*end*
*あとがき*
無駄に長すぎるうえに、意味不明な小説に……(泣)
キリ番2000番を踏んで下さった、マキ様からのキリリクです☆★
マキ様、下手な小説ですが、よろしかったらどうぞ…。
2000番おめでとうございます☆★☆