Water・Children!!

Treasure

「わぁぁっ!!広いな〜〜!!」

大きなうきわを片手に蜜柑は叫んだ。




蜜柑は今、蛍・流架・棗の4人でプールに遊びに来ているのである。


…プールといっても、夏季のみ開くアリス学園専用プールなのだけれど。


「はよ入ろ〜!!!」



──バカンッ



ダッシュの体制にはいった蜜柑に、バカン砲を放つ蛍。


「…やめなさいよ、良い子がまねしちゃうじゃない。良い子のみんなは、プール前の準備体操を忘れずに。」


(((…誰に向かっていってるんだよ…)))

心中で軽くツッコミを入れる三人。

蛍はさっさと体操を始める。


「しょうがない…体操やろう」




──準備体操中…──



「体操もやったし、あとはもうプールに入るだけやっ!」


蜜柑はプールに飛び込んだ。

「きゃ〜〜〜!!冷たい〜っ!!」

一人大はしゃぎの蜜柑。蜜柑に続いて三人もプールに入る。

「なぁなぁ、水泳競争やらん!?みんなで勝負しよ!」

蜜柑が提案すると、蛍の目が光った。

「…蜜柑。勝負ってのはつねに、賭けがあるものなのよ」

蛍の目がギラギラと怪しげな光を帯びている。

「…蛍…。あんたなぁ…」

蜜柑は呆れ顔である。

「…やるの?やらないの?どっちなの、蜜柑…」

「──やらせていただきます…」

カネゴンが舞い降りた蛍様はもはや、誰にも止められはしないのである。

「…決まりね」

「…ほな、この四人の中でビリになった人は、他の三人の命令を一つずつきく!!それでどうや!?」

「…上等よ。早く始めましょ」

蛍はスタート地点であるプールサイドへと寄る。


「…これ…オレ達は強制参加なのかな…?」

「…みたいだな」









「準備はええかぁ〜?」

蜜柑はみんなを確認する。


「…蛍…浮輪はアカンやろな…」

「だって私泳げないもの。いいじゃない、ケチケチすんじゃないわよ」

(…ケチケチって…)

「もうええ…とりあえず、レース開始や!!」



四人は25m先にあるゴールを見つめる。


「…位置について…」

「…よ──い」

一斉に構えた。

「…ドンッ!!」

スタートの掛け声と共に、三人は壁を蹴った。

…三人は。


ただ一人、蛍だけは壁を蹴らずとも一気に加速していったのだ。


蛍の浮輪にはエンジンが付いていて、物凄い勢いで進んでいき、あっという間にゴールしてしまった。


「…ふう。あら、みんなはまだなの?情けないわね」

蛍は嘆息する。








「…ま、負けてもうた──…」

ビリになった蜜柑の顔は真っ青。
この(流架を除く)二人の命令が、まともであるはずはない。

「…もうええ、命令でも何でも言うてみぃ!!」

蜜柑はヤケッパチになってしまい、言ってはいけないことを口走ってしまった。

「ふぅん…何でもって言ったわね、蜜柑…?」

勝ち誇ったような不気味な笑みを浮かべ、蛍は言った。

「ホワロン10箱────と言いたいとこだけど、アンタ貧乏だし。仕方ないわね。5箱にまけてあげるわ」

「充分多いやんか…」

「10個で良い?今日は気前がいいのね、蜜柑」

蛍の笑顔は、晴れ渡った空のようにどこまでも爽やかで。

「…買わせていただきます、蛍様」

ほとんど涙声で蜜柑が言った。


「…ルカぴょんは、ウチに何を命令したいん?何でも言うて」

(ルカぴょんは優しいから、大変なことをやらせたりせんやろし…)

「…オレは──…えーっと…」

蜜柑は気付かなかったが、他の二人はルカの表情の微妙な変化を読み取った。


(…嵐の予感…)

妙に楽しそうな蛍である。


「命令というか、頼み事なんだけど…聞いてくれる?」

「…?ええよ?」

「オ…オレと…」


(──付き合って!!…かしら?)

想像を膨らませてニヤける蛍。


「今度二人で、どこかに遊びに行けないかな…?」

ルカがほとんど消え入りそうなほど小さい声で言った。

「何や、そんなことかいな〜!!ええに決まっとるやないかッ!!」

蜜柑はそう言うなり、ルカの背中をバシッと叩いた。

(痛ッッ!!)

ルカは顔を歪める。
が、蜜柑の快い返事に、はにかんだような笑顔を浮かべた。
蜜柑は棗の方に向き直り、言った。

「…さあ。あとはあんただけやな、棗!命令は何や?」

今さっきの蜜柑とルカのやり取りがどうも気に食わなかったらしく、棗は不機嫌であった。
しかし、思いついたようにこう言った。


「…どうせなら、お前が嫌がる事が良いしな──……決めた。オレと“キス”しろよ」


「…あぁ〜…棗とキス、って…えぇええぇぇぇぇえぇ!!!?」

蜜柑は物凄い奇声を発した。

「…オレの命令に文句でもあんのか」

「…え…と…」

「罰ゲームなんだから嫌がる事してやんねぇと、つまんねぇよな」

意地悪な顔をして言う棗。
そんな棗に向かって、蜜柑は真っ赤な顔をしてこう言った。

「…〜〜っ…。…だから…それはウチにとって、嫌じゃ…ないんよ──…」

思わぬ言葉に棗はもちろん、蛍もルカもびっくり仰天だった。


「──…は?」

棗は言葉がでない。


「…さ、佐倉…。つまりそれって──…」

「…好きなんでしょ?棗が」

蛍ばキッパリと言った。


「好き…?…なんやろか…?」

よくわからん…と言って首をかしげる蜜柑。いまいち自分の状況が飲み込めていないようである。


「…なら話は早いな」

棗はそう言い、蜜柑の肩を引き寄せたかと思うと──…

棗の唇が蜜柑のほっぺにくっついた。


「……ッッ!!!!」

蜜柑は真っ赤になって後退りした。

「…今日からオレのもんだな…そーだろ?蜜柑」

「…知らん…」

いきなり名前を言われ、恥ずかしい気持ちに嬉しさもまじる。


「…まったく。こんなところでイチャつかれちゃ、たまんないわ」

心底呆れた様子で蛍は言った。そしてルカの方を向く。


「…蜜柑とのデートの事だけど。この様子じゃあ、諦めた方がよさそうね」

「…みたいだね」

少し残念そうな、しかし前からわかっていたというような反応を示すルカであった。


「…なんなら私が付き合うわよ?」

「…そうしよっかな」

「勿論、タダとは言わないわよね?」

苦笑いするルカ。










2005,夏

二組のカップル誕生の予感────………







*END*




*あとがき*

何だこのビミョーな終わり方は!!!

マキ様、かなり遅くなってすみません !!!
最後なんて、蛍流架ですかい…あいかわらず文才0のダメ文で……お許しを(泣)
一ヶ月ですかね!?非常に遅くなってしまってすみませんでした。

キリ番おめでとうごさいましたー!!!


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